神奈川県に記念艦として残されている軍艦三笠。
その展示解説で、張作霖暗殺コミンテルン陰謀論が有力説としてあつかわれているらしい。
すでに多くの批判があるように、天井に爆弾があったところで「関東軍が爆薬を仕掛けた」ことも事実あつかいしている時点で、日本軍の正当化につながりそうもない。
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さらに指摘するまでもないが、列車の天井方向から爆発した事実は、線路にしかけられた爆弾とは矛盾しない。矛盾を感じた人も*1、疑問が氷解するだろう。
知るかぎりでも*2、歴史解説で有名なふたつの作品に爆殺の瞬間が描写されている。
ひとつは山本薩夫監督の映画三部作『戦争と人間』の「第一部 運命の序曲」。
- 発売日: 2015/08/04
- メディア: Blu-ray
『ウルトラマン』のシリーズ初期怪獣デザインで知られる成田亨が特撮美術を担当し、ミニチュア特撮で爆発の瞬間が描写されていた。
もうひとつは小学館の学習漫画『少年少女日本の歴史』19巻「戦争への道」。
末尾の第4章「大震災へと」の最後の小見出しが「張作霖爆殺事件」で、時代がうつりかわる象徴に位置づけられている*3。
ちょうど小学館が自学サポートのために8月31日まで全巻無料公開しているので、問題の場面を手軽に確認できる*4。
小学館版学習まんが少年少女日本の歴史
爆発の瞬間、列車が陸橋の下をくぐっている。つまり爆破の衝撃が上からきたからといって、列車の天井に爆弾がしかけられたことにはならない。
単純に考えて、爆弾は特別列車よりも外部にしかけやすい。そこで日本軍が選んだのが線路と線路が立体的に交差する場所だったというわけだ。
つまり日本軍が爆弾をしかけたのは、特別列車の上を横切る陸橋の線路である。
ちなみに爆弾の位置が矛盾していると誤解されていった経緯は、すでに南京事件資料サイトで知られる「ゆう@小さな資料集@yu77799」氏がくわしく検証していた。
「爆薬の位置」の謎−加藤康男氏『謎解き「張作霖爆殺事件」』③
矛盾論をとなえた加藤康男氏が著作でトリミングなどをおこなっている他、実行犯の証言を聞きとった森克己氏も誤解したような表現をしていることが指摘されている。