においや味が分からなくなる……英政府、新型ウイルス感染の症状リストに追加
ミシェル・ロバーツ、BBCニュースオンライン保健担当編集長
画像提供, Getty Images
イギリス政府は18日、においや味が分からなくなった場合は、新型コロナウイルスの感染を疑い、自主隔離を開始するよう呼びかけた。自主隔離する際の判断基準となる症状のひとつとして味覚や嗅覚(きゅうかく)の異常を加えた。
イギリス政府はこれまで、発熱や長引く空ぜきのみを、感染の兆候の可能性があると認めていた。今回、政府の科学顧問の助言を得て、指針を改定した。
しかしこれまで、耳鼻咽喉科の医師たちは2カ月近く前から、味覚や嗅覚の異常を感染の兆候として認めるよう呼びかけていた。
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発熱や、以前はなかった長引く空ぜき、味やにおいが分からなくなるなどの症状が、自分や同居人に出た場合は、他人へウイルスをうつさないため、自宅でまず7日間は自主隔離するよう政府は求めている。
せきや味覚・嗅覚の異常は7日を過ぎても続く可能性もある。政府は、高熱が続くか、それ以外にも具合が悪い状態が続く場合は、せきや嗅覚異常などが続いても、自宅隔離を続ける必要はないとしている。
味やにおいが分からなくなるのは、普通の風邪など、他の呼吸器系の感染症でも起きる。そのため、新型コロナウイルスについては引き続き、発熱と空ぜきに特に注意するよう医療関係者は呼びかけている。
キングス・コレッジ・ロンドンの研究チームはアプリを使い、自分が感染したかもしれないと思っているイギリスの150万人以上から症状について情報を集めた。
この研究によるとほかにも、倦怠感や腹痛、下痢などが、新型コロナウイルスの症状に含まれる可能性がある。
世界保健機関(WHO)と一部の政府はすでに、こうした症状が新型ウイルスに関連すると特定している。
研究チームのティム・スペクター教授は、「ウイルス検査の陽性結果と関連付けられる症状は14種類ほどある」と話す。
「しかし、国民保健サービス(NHS)はそれを(新型コロナウイルスによるものとして)認定しない。その結果、この国ではどれも見落とされているし、感染者数を少なく数えている。そればかりか、人を危険にさらして、感染流行を長引かせている」
英耳鼻咽喉科学会のニルマル・クマール医師は、政府の指針変更は「遅いが、変えないよりはましだ」と話す。
「私たちは8週間近く前からこの変更を求め続けていた。遅れたことで、事態はまったく良くなっていない。においや味が分からなくなったと心配して、これは症状なのか、自分はどうしたらいいのか、本当に大勢から問い合わせがあった」
一方で、イギリス政府に諮問するイングランド副主任医務官のジョナサン・ヴァン・タム教授は、政府の定例会見で、政府指針を適切なタイミングで更新するのが大事だと説明。「これからの症例発見につながると判断したタイミング」で情報を刷新していくと話した。
首相官邸は、政府医務官たちは常に専門家たちの助言を得ながら、どの症状が新型ウイルスの兆候なのか再検討を続けていると述べた。
「においや味が分からなくなった人は自主隔離するようにと促すことで、今までよりわずかながら多くの症例を発見できると、そしてこれがウイルス拡大をさらに防ぐことにつながると、医務官たちは自信をもつに至った」と、首相報道官は説明した。
WHOは新型コロナウイルスに感染した場合の症状について、熱やせき、倦怠感といった特に一般的なもののほかに、次の症状が出る可能性があるとしている――。
- 関節・筋肉痛
- のどの痛み
- 下痢
- 結膜炎
- 頭痛
- においや味が分からない
- 皮膚炎、手足の指の変色
イギリス保健省は18日、新型コロナウイルスに感染した人のうち新たに160人が死亡したと発表した。
イギリスの死者総数は欧州最多で、17日午後5時の時点で3万4796人だった。
政府は国内の検査対象を、症状がある5歳以上の全員に拡大。首相官邸によると17日の時点で、イングランドの介護施設の38%で、感染が確認されている。