意外とディープな手袋の歴史、石器時代から21世紀まで

ステータスシンボルからファッションアイテムへ、コロナで再び流行するか

2020.07.20
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1947年、カラフルな手袋を吟味する女性の写真。ステータスシンボルとして長年にわたり愛されてきたファッション手袋は20世紀後半に衰退したが、コロナ禍の今、安心感を得るためのグッズとして復活するかもしれない。(PHOTOGRAPH BY B. ANTHONY STEWART, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 今年4月、私がインターネットを使っていると、ピンク色の女性用「エランド・グローブ(直訳すると使い走り用手袋)」なるものの広告が出てくるようになった。エランド・グローブ?

 20世紀中頃の女性が、お茶を飲んだり、帽子を買いに出かけたり、秘書として働いたりするときに身につけていた、手首までの長さのレトロな白い手袋のようなものだろうか?

 予想は外れた。「エランド・グローブ」は、1923年から米ニューヨークでスカーフや手袋を製造・販売しているエコー・デザインズ社の今年の新商品だった。同社のCEO兼社長のスティーブン・ロバーツ氏は、「新型コロナウイルスが流行しはじめると、スーパーのゴミ箱がビニール手袋でいっぱいになっているのを頻繁に見かけるようになりました」と言う。「私は、人々の不安にどのように対応するべきかと考えました。軽くて洗える手袋を作れないだろうかと思ったのです」

 ロバーツ氏は早速、アジアの工場に綿ポリ素材の手袋を量産させた。「当社の手袋は医療用ではなく、素手では心許ないという方に安心感を与えるためのものです」として注意を促すが、この3カ月間で何千組も販売したという。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、温暖な季節にもシックな手袋を少しだけ復活させるかもしれない。人類は何千年も前から、暖をとるため、ファッションのため、手を保護するために手袋をはめてきた。手袋は、英国王室の儀式から20世紀初頭の医療に至るまで、あらゆる場面で大きな役割を果たしてきた。

ステータスシンボルとして

 古代の洞窟絵画を見ると、氷河期の石器時代にも、人類は何かを編んで作ったようなシンプルなミトンを使っていたことがわかる。現存する最古の手袋は、1922年にエジプトのツタンカーメン王の墓から発見された。紀元前1343〜前1323年に作られた、手首で結ぶタイプの麻製のおしゃれなものだ。

「馬で引く二輪の戦車に乗るときに使うものだと思われます」と、革と手袋の専門家で、『Gloves and Glove-Making(手袋と手袋づくり)』という著書があるマイケル・レッドウッド氏は言う。「これをはめて手綱を握るのですが、実用品というよりは象徴的なものだったのでしょう。古代の手袋は、王族にとっても、宗教にとっても、法制度にとっても重要な品でしたが、ツタンカーメンはこの3つを兼ねた存在でした」

 当時、貧しい人や労働者は家庭で編んだ手袋を使っていて、上流階級の人々は布製や革製の手袋を使っていた。上流階級の人々にとっても、手袋は実用的なものだった。ホメロスの『オデュッセイア』にも、登場人物たちが棘のある木から手を守るために手袋をするくだりがある。ヨーロッパの騎士は身を守るために(そして威圧感を与えるために)手首より長い金属製の「篭手(こて)」を身につけていた。

 中世ヨーロッパでは手袋がさらに普及したが、五本指の手袋の製作にはミトンより多くの資源と技術が必要になるため、非常に丈夫なもの(戦士が使う鎖帷子製の手袋や鍛冶屋が使う厚手の革製の手袋など)か、上流階級のファッションや儀式用のものしかなかった。

ギャラリー:意外とディープな手袋の歴史、石器時代から21世紀まで 写真11点(写真クリックでギャラリーページへ)
王室の華やかな行事では手袋が重要な役割を果たしている。エリザベス2世の戴冠式のために作られたこの手袋は、白い山羊革に金糸で女王のイニシャル「ER II」が刺繍されている。(PHOTOGRAPH BY THE GLOVE COLLECTION TRUST, BRIDGEMAN IMAGES)
1937年に行われたジョージ6世の戴冠式の様子。何世紀にもわたり、英国君主の戴冠式では、宮中の役人が君主の右手の手袋を外し、薬指に指輪をはめる儀式が行われてきた。(PHOTOGRAPH BY THE PRINT COLLECTOR, ALAMY )

 英国君主の戴冠式では、西暦973年のエドガー王の戴冠式以来、宮中の役人が君主の右手の手袋を外し、薬指に指輪をはめる儀式がある。1559年にエリザベス1世が即位式に臨んだときの手袋は、白のスウェード製で、銀のふさ飾りがついていた。エリザベス2世が1953年6月2日の戴冠式で着用した真っ白な革手袋は、見た目に大きな違いはないが、より凝った作りになっていて、金糸で女王のイニシャル「ER II」の縫い取りが施されていた。(参考記事:「チャールズ皇太子が感染、英国王室と感染症の歴史」

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