「エアリプ」をご存じだろうか。Twitterで「@アカウント名」をつけてツイートすることはリプライといい、その人に対する返信を意味する。たとえば筆者(Twitterアカウント名:akiakatsuki)にリプライを送るためには、「@akiakatsuki 今週の連載、うちの子のことを書いたのかと思いました」となる。
ところが、特定の相手に返信する意図がありながら、「@アカウント名」をつけずにツイートするのが「エアリプライ」だ。「今週のスマートフォンネイティブの見ている世界、思い当たることがある。さらに突っ込んだ話を書いてほしい」などと、@をつけずに筆者に宛てたように書くことが「エアリプ」となるというわけだ。
10代の子たちの間では、エアリプライが多く飛び交っている。その心理と背景、どのような問題があるかについて考えていこう。
「エアリプでも誰に伝えたのかは分かる」と高校1年女子A美は言う。「お互いの関係性も分かっているから、周囲のみんなも誰の話をしているか分かっているはず」。仲良しグループのメンバー同士で、エアリプだけで会話が成り立つこともあるという。
そもそもTwitterでは、大人世代は興味関心を通じて見知らぬ相手ともつながることが多い。ところが、10代においては知り合い同士がつながり、LINEのように使われることが多くなっている。つまり、大人世代と10代ではTwitterの使い方がまったく異なるのだ。
エアリプをしたのに気付いてもらえず、返事が来ないことを怒る例も多い。「気付いてもらいたいとか返信がほしいならリプライをすればいいのに」と思うが、10代はそうではないようで、「なんでこんなに分かりやすくエアリプ飛ばしてるのに無視できるのかと腹が立った」とA美は語っていた。
もちろん、実際は違うのに自分へのエアリプだと思い込み、トラブルになる例もある。mixiやFacebookでもあったことだが、相手を特定せずに悪口や不満などの愚痴を投稿する人を見かけたことは多いだろう。個人が特定されないような書き方をしているため、自分だと思い込み「ごめんなさい!」「気分を害していたらすみません……」などと謝罪コメントをつける人が多数いるのだ。
大人世代でもそのようなことが起きるのだから、10代で起きないわけがない。自意識過剰で可処分時間が多い10代の子達は、相手のツイートを自分へのエアリプだと思い込み、関係性がこじれたり、いじめに発展した例もあるという。エアリプの弊害とは言えないだろうか。
エアリプはどのような時に、どのような意図で使われるのだろうか。10代においては、相手への好意を伝える時にも使われているようだ。たとえば以下のように、相手をある程度特定できるような状態でツイートするというわけだ。
B那:「今日も会えた!シュートが決まってた。彼は毎日部活があるから、この時間に帰ると会えることが多くて嬉しい」
それとなく仄めかすことで、相手にも周囲にも好意を伝えるやり方が多いようだ。高校2年生女子A香に聞くと、「直接告白するのはちょっと勇気が要るけど、仄めかすことで相手に伝えるならできる。もしダメならスルーだし、自分もその気があったら食いついてくるはず」という。
直接告白すれば、結果は受け入れられるか断られるかの二択になる。ところが、エアリプで告白すれば、ダメな場合も言い逃れができるため、はっきりした拒絶は避けることができる。傷つくことを最小限に抑えた、逃げ道を用意した告白がエアリプというわけだ。
それにも増して多いのが、悪口や非難などを言う時だ。よく誰に対するエアリプライかはっきり分かる形でツイートしている人を見かけることがある。相互フォロー状態なら分かりやすいが、相互フォロー状態でなくてもエアリプで悪口合戦となっている例も見かける。たとえば以下のように、「@アカウント名」こそついていないが内容が呼応しているものが多いようだ。
B太:大好きな○○のライブに行ってきた。○○ちゃん可愛すぎる!
C介:○○を好きなやつはバカ。歌詞の内容がないし音楽性もない。見た目で騙されすぎ。
A香いわく、エアリプでの悪口は、「腹が立っているから相手に伝えたいけれど、それだけではなくて、他の人たちに聞いてもらって『分かる、分かる』と言ってほしい時に使う」という。「同意が得られると嬉しいし、腹を立てている相手にも見て自分のしたことを分かってもらいたいから」。
エアリプ悪口は、悪口や非難は言いたいけれど、責任は取りたくない人にぴったりのやり方だ。相手から反論されても、「あなたのことは言っていません」と言い逃れができる。悪口や非難を言うと相手に反論される可能性があるが、エアリプなら安全圏から好き放題言えるというわけだ。
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