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 コロナ禍による経済活動への下押しは当面続く。これまでにとった対策の効果を検証し、次に備えたい。

 日本銀行が先日公表した「経済・物価情勢の展望」は、現状が「きわめて厳しい状態」だと指摘した。今年度の実質成長率はマイナス5%程度に落ち込むと予想している。年後半から緩やかに改善する見通しだが、それも感染の大きな「第2波」が来ないことが前提だ。

 5月末から6月にかけ、国内では感染がいったん落ち着き、消費も一定の回復を見せた。速報性のある「景気ウォッチャー調査」でも6月の家計動向は、ほぼ今年1月の水準に戻した。

 ただ、7月に入り、感染が判明する人が再び増えてきた。経済活動の再開に冷や水を浴びせかねず、飲食店や観光業では継続が厳しくなる事業者が相次ぐ可能性もある。輸出需要も世界各国の感染動向に左右されざるをえない。総じて、よくても一進一退的な状況といえる。

 経済を復調に向かわせるためには、感染拡大を抑えて第2波を防ぐ、少なくとも影響を最小化することが不可欠だ。経済活動の再開を急ぎ過ぎて感染が拡大すれば、消費や投資が萎縮し、結局、経済の足も引っ張ってしまう。検査や医療を強化しつつ、経済と防疫の両輪を足並みそろえて進めるべきだ。

 加えて、防疫対策同様、経済政策も効果の検証が必要だ。

 政府の巨額の財政支出に加え、日銀は(1)企業の資金繰り支援(2)円とドルの無制限供給(3)ETF(上場投資信託)の積極的な買い入れ、といった異例の政策をとってきた。

 (2)や(3)は市場の落ち着きに伴い、実行ペースも緩やかになってきた。しかし当面、警戒モードを解ける状況ではなく、基本的な枠組みは保つべきだろう。

 同時に、政府・日銀とも、これまでの施策の効果と副作用を具体的に点検する必要がある。前例のない事態だけに、学界や専門家の力も借りて、急ぎ教訓を引き出さねばならない。

 追加的な政策の是非を判断するうえで目安になるのは、何よりも雇用と所得の底割れを防ぐことだ。非正規労働者など社会の一部に負担が集中しないよう、目配りも欠かせない。

 一方で、ショックから時間が経つにつれ、対面からデジタルへといった産業構造の変化を先取りする動きがでている。危機からの脱出が展望できる段階に進んでいけば、そうした移行や調整に伴う負担を少なくし、変化の芽を伸ばしていくような政策も重要になってくる。

 いずれの方向にも機敏に対応できるか。政策当局の構えが問われる。

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