[DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.06 カラー調整の基本(その5:輝度vs彩度カーブ)
2019-02-22 掲載
DaVinci Resolveのカーブの話も3回目となり、今回は「輝度vs彩度カーブ」の話。一般的にカラーグレーディングと言えばコントラストや色調をコントロールして映像のイメージを作り上げて行く処理だと思われている。しかし、今回話題にする「彩度」も視覚効果の面から言えば非常に重要な役割を担っている。
輝度vs彩度カーブは効果としては地味ながら、画像の品質を上げるため、さらには放送規格に適合させるためにも重要な隠し味的なツールと言えるだろう。
※放送規格の基準を超えたホワイトやブラックだけでなく、過度な彩度(鮮やか過ぎる色)も放送規格に適合させるためには圧縮されてディテールを損なうことがある01:監督の意向に沿ってプライマリー処理
今回の監督の意向は「夕暮れの石畳の街、もっと黄金色に輝く夕暮れを強調した画にしたい」というもの(図01_01)。 一つ目のノードにコントラストの拡張と色調の調整を以下の手順でプライマリーホイールを用いて処理する。
※画像をクリックすると拡大します
(1)全体の輝度を下げるためにオフセットを少々下げる。次に波形モニターを確認しながらリフトも少し下げ、ゲインはほんの少しだけ上げてコントラストを拡張する。
※各ホイールの数値と波形モニターは図01_02を参照(2)色調を黄金色にするために、プライマリーホイールの下段2ページの色温度とティント(マゼンタ〜グリーンの色合い)を調整。ここでは色温度「450.0」、ティント「4.00」を設定(図01_03)。
(3)黄金色を強調するために下段1ページに戻って彩度を「60.00」に上げる(図01_04)。
図01_04
これで全体調整のプライマリーは完了(図01_05)。ノードの「01」番号をクリックして「選択したノードの有効化/無効化」command+D(Mac)/Ctrl+D(Win)することで処理前と処理後を比較する。
02:シャドウとハイライトのRGB値を検証
プライマリー処理後の現状でも監督の意向には十分に応えていると思うのだが、いまいち映像全体が濁っているようでスッキリしない印象だ。彩度を上げているので映像全体は鮮やかになっているのだが、シャドウからハイライトまで無差別に色が追加されてしまったことが原因だろう。
実際にシャドウとハイライトのRGBピッカー(スポイト形状)の数値を比べると、R値は飛び抜けて大きく、B値が小さいことがわかる(図02_01)。
03:シャドウとハイライトを輝度vs彩度カーブを使ってニュートラル(無彩色)に
(1)セカンダリー処理のためにシリアルノード02を追加する。
(2)カーブパネルの輝度vs彩度カーブが開いた状態でピッカーを使い、下手(しもて)壁面のシャドウ部分を抽出する(図02_01のピッカー位置を参照)。
(3)グラフ上に2〜3個の白ポイントが現れたら、映像を観察しながら左側2つのポイントを下方(彩度を下げる方向)に押し下げる。同様に石畳の夕日の反射部分からハイライトを抽出し、右側2つのポイントを押し下げる(図03_01)。それぞれのポイントはグラフ最下段まで下げ切ってしまうと無彩色になってしまうため、映像を観察しながら適度な状態を探ると良い。
04:仕上がりのRGB値を確認
処理前のシャドウとハイライトのRGB値と比較して見ると、処理後は数値の差が小さくなっていることがわかる(図03_02)。
ノード02を有効化/無効化して比べて見てほしい(図03_03)。
下手の建物壁面や人物背中は黒が引き締まり、石畳の夕日の反射は白の抜けが良くなったことがわかるだろう。全体に濁りが取れスッキリとした印象になった(図03_04)。
今回をもって「カラー調整の基本」はひとまず終了とする。調整の基本として紹介したいツールはまだいくつも有るのだが、全てを紹介していると次の段階になかなか進めない。次回からはセカンダリー処理時に利用頻度が高いツールを順次紹介して行こうと思う。
WRITER PROFILE
小島真也
Blackmagic Design認定トレーナー、写真家、撮影監督。赤坂スタジオを経て、篠山紀信氏に師事。1990年に独立後は雑誌、広告界にて人物、ドキュメンタリーを中心に写真家活動。動画へのきっかけはFinal Cut Studio 5.1を導入し映像編集を始めたこと。商業映画や自主映画では撮影監督として撮影・照明・カラーグレーディングを担当し、TVドラマでは撮影部として参加。
[ Writer :
小島真也
]
[ DATE : 2019-02-22 ]
[ TAG : DaVinci Resolveで初めてのカラーグレーディング]
関連のコラム一覧
|
[DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.20 Logをグレーディングしてみた [最終回]txt:小島真也 構成:編集部 突然だが、コラム「DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング」は今回の第20回を持って最終回にしたい。テキストベースでのグレー... 続きを読む |
|
[DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.19 グレーディングを別のクリップに適用するtxt:小島真也 構成:編集部 カラーを別のクリップに適用させる6つの方法 ご存知の通り、ドラマだけでなく映像コンテンツのシーンは、ロングからアップまでさまざまなカット... 続きを読む |
|
[DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.18 正確なホワイトバランスを取るtxt:小島真也 構成:編集部 白を白く写すホワイトバランスを理解しよう 先日、本コラムを振り返ってみたところ、しっかりと項目を立てて「ホワイトバランス」を取り上げてい... 続きを読む |
|
[DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.17 バージョン/グレーディングを比較検討するtxt:小島真也 構成:編集部 選択クリップだけにグレーディングが保存されるローカルバージョンを使う ひとつの映像制作がスタートすると、その初期段階に監督やプロデューサ... 続きを読む |
|
[DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.16 カスタムカーブ/もう一度コントラスト調整を考えてみるtxt:小島真也 構成:編集部 マスターホイールのリフトとゲインを使ってコントラストを拡張する ご存知の通り、グレーディングの最初の処理であるプライマリーでは、映像画面... 続きを読む |
- [DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.15 正確なコピーを作成する「クローンツール」 (2019-12-13)
- [DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.14 RGBミキサー/モノクロ化 (2019-11-19)
- [DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.13 トラッカー/クリップモードとフレームモード (2019-10-01)
- [DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.12 カラー調整の基本(その6:カラーマッチ) (2019-09-06)
- [DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.11 時短ツール(3)/ミッドディテールとウィンドウ (2019-08-06)
- [DaVinci Resolveで始めるカラーグレーディング]Vol.10 時短ツール(2)/ミッドディテールとカラーブースト (2019-07-09)
WRITER PROFILE
小島真也
Blackmagic Design認定トレーナー、写真家、撮影監督。赤坂スタジオを経て、篠山紀信氏に師事。1990年に独立後は雑誌、広告界にて人物、ドキュメンタリーを中心に写真家活動。動画へのきっかけはFinal Cut Studio 5.1を導入し映像編集を始めたこと。商業映画や自主映画では撮影監督として撮影・照明・カラーグレーディングを担当し、TVドラマでは撮影部として参加。
小島真也 のコラム一覧
Writer
|
編集部 PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。 |
|
小寺信良 業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポート。 |
|
raitank アートディレクター。あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。国内と海外の情報流通の温度差にモーレツな疑問を感じ、最新の情報を自ら日本語で発信するblogを運営中。 |
|
ふるいちやすし 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。 |
|
岡英史 バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン |
|
江夏由洋 兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。 |
|
鍋潤太郎 ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。 |
|
林和哉 株式会社フロンティア 映像事業室 室長 プロデューサー・ディレクター。入口から出口まで全てのポジションを守備範囲にしている。最新技術が好物で、各種セミナー活動も豊富。 |
|
江口靖二 江口靖二事務所主宰。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。 |
|
猿田守一 企業向け動画、番組制作、CM、動画配信、各種ステージ記録など撮影から編集まで行い、地域に根ざした映像制作活動を行っている。 |
|
オースミ ユーカ 映像ディレクター。企画、脚本から演出までジャンルを問わず活動。 |
|
土持幸三 1970年生。鹿児島県出身。俳優を経て渡米。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。 |
|
鈴木佑介 日本大学芸術学部 映画学科"演技"コース卒の映像作家。 専門分野は「人を描く」事 。 広告の仕事と個人ブランドでのウェディングがメイン。 セミナー講師・映像コンサルタントとしても活動中。 |
|
松本敦 映像クリエイター。企業VPからスポーツイベント撮影まで幅広く手がける。アクションカムやドローンなどの特殊ガジェット好き。 |
|
宏哉 タイムコード・ラボ代表。Next-Zero.com管理人。バラエティーから報道や空撮まで幅広い番組撮影をこなすTVカメラマンであり、ダンスイベントからe-ラーニング収録まで請け負う街のビデオ屋さん。イージス艦CICから幼稚園のおゆうぎ会まで、フィールドは問わない。 |
|
手塚一佳 CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。修士(芸術) 博士課程芸術専攻 |
|
荒木泰晴 東京綜合写真専門学校報道写真科卒業後、日本シネセル株式会社撮影部に入社。1983年につくば国際科学技術博覧会のためにプロデューサー就任。以来、大型特殊映像の制作に従事。現在、バンリ映像代表、16mmフィルムトライアルルーム代表。フィルム映画撮影機材を動態保存し、アマチュアに16mmフィルム撮影を無償で教えている。 |
|
ノダタケオ ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。 |
|
山本遊子 山本遊子(やまもとゆうこ) フリーランスの映像ディレクター。1999年からテレビ、WEBなど様々なメディアで映像を作り続けている。 うぐいすプロ |
|
渡辺健一 映画録音技師/テクニカルライター(ペンネーム:桜風涼)著書「YouTuber/ビデオグラファーのための『完全録音マニュアル』」 |