閉塞性動脈硬化症、重症下肢虚血(足潰瘍、壊疽)について
最近の高血圧、糖尿病、高脂血症(脂質異常症)といった生活習慣病の増加にともない、心筋梗塞や脳卒中に加えて、足の血管の病気である閉塞性動脈硬化症やその重症型である重症下肢虚血の頻度は確実に増加してきています。
当院ではこういった患者さんを総合的に診察し治療するシステムを確立し、循環器内科、内分泌代謝内科、腎臓内科、胸部心臓血管外科、形成外科、皮膚科、整形外科等の各科の枠を超えて患者さんの治療を行っています。
上記のような症状をお持ちの患者様は循環器内科を受診してください。すでに潰瘍や壊疽(黒くなっている)がある方は形成外科あるいは皮膚科を受診してください。当院の初診受付で御相談にのりますのでお申し出ください。
昭和大学藤が丘病院 CLI(重症下肢虚血)センター
(1)はじめに
(2)どういう病気か
心臓を栄養する冠動脈が細くなれば、狭心症といって労作時や安静時に胸が痛くなり、完全に詰まってしまえば心筋梗塞になり30%の方が命をおとす重篤な状態となります。また、脳の血管が詰まってしまうと脳梗塞となり重症では半身不随となったり生命に危機がおよびます。
それと同様なことが足の血管にもおきるのが閉塞性動脈硬化症で、下肢(上肢は少ない)を栄養する動脈が高血圧、高脂血症、糖尿病、高脂血症(脂質異常症)といった生活習慣病や加齢現象によっておこってくる動脈硬化により細くなったりつまってしまうことによって、足の先が栄養不足になり発生します。喫煙をしている患者さんはその頻度が数倍になることが明らかになっています。栄養不足が軽い場合は、間歇性跛行といって歩いているうちにふくらはぎが重くなる程度ですが、ひどくなると重症虚血肢といって安静時にも痛みが持続し、進行すると足に潰瘍ができたり壊疽といって足が黒くなってしまうといった症状が出現します。最悪の場合には下肢の切断といった治療が必要となり、Quality of Lifeが著しくおちてしまいます。足に潰瘍や壊疽ができるような患者さんの5年生存できる率は50%程度といわれ、早期癌よりも生存率が悪い重篤な病気です(図1)。
(3)検査
歩行時に足が痛くなったり安静時にも痛みが持続している方、あるいは潰瘍、壊疽がある患者さんが来院された場合は、足の甲の血管の拍動を触れてみます。拍動が弱ければこの病気が疑われますが、ABI(足関節上腕血圧比)(図2)といって足の血圧を測る機械により簡単にこの病気は診断できます。この検査は動脈硬化の程度も測定することができます。血管の拍動が正常でABIも正常値の患者さんは脊椎間狭窄症など整形外科的疾患が疑われますので、脊椎のMRI等が必要となります。足の切断が切迫している重症虚血肢の患者さんでは、 SPP(皮膚還流圧)を測定しその重症度を判定します。次のステップとしてどこの血管が細くなったり詰まったりしているかを判定することが必要ですが CT(図3)、MRI、血管造影検査、超音波が威力を発揮します。
(4)治療
(5)予防
- 高血圧コントロール
- 糖尿病コントロール
- 高脂血症(脂質異常症)コントロール
- 禁煙
この病気の予防には、高血圧、糖尿病、高脂血症(脂質異常症)のコントロールが極めて重要です。また、喫煙がこの病気を悪化させることは明らかであり、禁煙は基本的なことがらであり、禁煙ができなければ積極的な治療は行わないという病院もあるぐらいです。