人生送りバント男のブログ

最後に、元日ハムとなってしまったこの男についても語りたいと思います。

多田野数人、元日本ハムにして、元メジャーリーガーです。高校時代には八千代松陰のエースとして地区大会防御率0.23という驚異的な成績を残し甲子園へ出場しました。そして立教大学進学後も活躍を続け、ドラフト1位間違いなしと呼ばれるまでの存在になったのです。

しかし2002年のドラフト会議で多田野の名前が呼ばれることはありませんでした。例のスキャンダルのせいで。

ブログを見るような、つまりネットを使うような野球ファンなら多田野について知らない人はいないでしょう。Wikipediaにすらぼかさずにストレートに書かれていることですからここで述べたとしても何の問題もないと思いますが、まあ直接表記するのはやめておきます。男性が男性を好きになるビデオに出てしまった、とだけ言っておきましょう。

大学時代にそのようなビデオに出演してしまった多田野は、ドラフト会議の前にその事実を週刊誌に暴かれてしまい、大々的に報じられました。その影響をモロに受け、結局1位どころか下位で指名されることすらなく、多田野はNPBから門前払いを喰らってしまったのです。

しかしこのNPBの対応は非道な行為であると言わざるを得ません。確かにアマチュアとは言え顔の知れた有力選手がそのようなビデオに出演するのは、軽率だし良くないことです。またスポーツは体に触れることもあるし着替えやシャワーなどで裸を見せ合うこともあるから、同性愛者に対してデリケートになるのもまあわかります。

とは言え、そういうビデオに出ることは決して違法行為ではないのです。多田野がビデオに出たからといって迷惑を被る人は、基本的にはいません。多田野と同じビデオに出演していたせいでやたらと有名になってしまい、一生ネットの晒し者と化してしまった野獣先輩なる男性などもいるようですが、それは多田野の意図したことではありません。多田野のせいでは、ないです。

そもそも野球界は一般社会とは違い、極めてアウトローな世界です。

例えば現在侍ジャパンの監督として国を代表する立場にある小久保裕紀は、みなさんご存知のとおり脱税犯です。有罪判決を受けた、歴とした前科者であり元犯罪者なのです。それなのに、よりにもよって日本代表の監督という重大なポジションにキズモノを持ってくるというのは、普通の社会では考えられない行為ではないでしょうか。

巨人の原辰徳にしてもそうです。不倫をもみ消すためにヤクザへ1億円もの金を渡していたことが問題となったのは記憶に新しいですが、あっという間に風化し、何のおとがめもなく現在も「永遠の若大将でござい」という顔で指揮をとっています。

西武の相内誠もそうですね。ドラフト指名後に無免許スピード違反という重大な違法行為を犯し大きな批判を受けた相内ですが、これに反省することもなく舌の根も乾かぬうちに堂々と未成年飲酒をやらかすという頭の悪さ・駄目っぷりを見せつけてくれました。普通なら「契約を取り消せ」という世論に反して入団させてくれた西武に恩を感じ猛省するのが当たり前ですが、一切反省することなく球団関係者の顔に泥を塗るようなこの所業は、完全に人間の屑であると断言できます。しかし大したペナルティを受けることもなく高卒2年目にして一軍のマウンドに上がるなど、NPBに不祥事を咎めるような動きは殆どありません。

ここに出した例以外にも、犯罪やそれに近い行為を行いながらも野球界で大きな顔をしている人間は大勢います。良くも悪くも、それがプロ野球界、NPBというものなのです。野球が上手いか下手くそか、そして人脈やコネクションを持っているかが重要であり、野球で実績を残すかあるいは権力者に取り入るなどすれば、大抵の行為は許されてしまうのです。一般常識が通用する場所ではありません。

しかしそんな世界さえも、多田野の存在を拒んでしまった。多田野は果たしてそんなに悪いことをしたのでしょうか。

上記のように、ビデオ出演は決して違法行為ではないし、他人に迷惑をかけるわけでもありません。どう考えても脱税や無免許スピード違反の方が遥かに悪質です。同性愛者を差別したNPBには、今後対応を改めて欲しいと切に願います。

しかし多田野の凄いところは、それでも野球を諦めなかったところです。普通日本人がNPBから締め出されてしまったら、野球を断念せざるを得ません。それでも多田野はアメリカに渡ってまで、野球を続ける道を選んだのです。心底、野球が好きなのでしょう。

メジャーで1勝を挙げたというのも、地味ですが結構すごいことですよ。大金を貰いスター待遇で迎え入れられながらもチームの足を引っ張ることしかできない井川のような選手もいる中で、大学から直接渡米し勝利を挙げチームに貢献するなど、なかなか出来ることではないです。

しかし残念なことに、メジャーで勝利を挙げた力を日本で発揮することはできませんでした。日ハムに拾ってもらいNPB入りを果たしたまでは良かったのですが、それからは全くパッとしませんでした。イーファスピッチやノーノー未遂や危険球誤審など、様々な話題をばら撒いてはくれましたが思うような成績を残せなかったのは残念でなりません。

今年戦力外となってしまった多田野ですが、現役続行の意思は固いとのこと。トライアウトは受けませんでした。ということは既にどこかに拾ってもらえる目処が立っているのかもしれません。

しかし多田野ならばNPBだろうとどこであろうと、きっと野球を続けられるでしょう。大学から直接海を渡り、メジャーで勝ち星を上げた男なのですから。

どこかで大活躍を果たして、NPBを見返してもらいたいと思います。