映画「エマニエル夫人」(1974年)で一世を風靡したオランダの女優シルビア・クリステルさんが亡くなった。60歳。クリステルさんの代理人が18日に明らかにした。妖艶なボディーで日本中を魅了したクリステルさんは、日本人女性の“性の解放”にひと役買った。
英大衆紙「サン」によると、クリステルさんは11歳のころからヘビースモーカーで、2002年に肺がんの手術を受けた。その後もがんとの闘病を続けていたが、今年6月に脳卒中で倒れ、オランダ・アムステルダムの病院に入院していた。代理人によると、17日夜から18日にかけての睡眠中、息を引き取った。近く、身内だけの葬儀の後、埋葬されるという。
フランス・パリとオランダのアントロープに家があり、脚本家ユーゴ・クラウス氏との間に息子アーサー君をもうけたが、未婚のままユーゴ氏とは破局。ちなみにアーサーは後に映画俳優となった。
クリステルさんは映画監督ロジェ・バディム氏と噂になったりもしたが、その後、英俳優イアン・マクシェーン(70)と交際するように。米ロサンゼルスで同棲していたが、82年に破局し、その後はフランス・サントロペに住んでいた。
代表作の「エマニエル夫人」は、タイ・バンコクでセックスに目覚めていく外交官夫人を美しい映像で描いたソフトポルノ。日本での当時のヒットについて映画評論家の秋本鉄次氏は、「観客の65~70%が女性。男の観客は肩身が狭い思いをしたほど」と述懐する。
「基本的には配給会社のイメージ戦略の完全勝利でしたね。都内の一流の映画館で公開し、無名に近かったクリステルさんを外国の美しい女優として憧れの対象にもっていった。様々な“エクスキューズ”を作ることで、30代、40代の女性が堂々とソフトポルノのセックスシーンを見に行くことを可能にしました。女性同士で見に行くケースも多かったです」
エマニエルを見ることが時代の先端という風潮まで出来上がっていたという。近年は女性向けのセックス特集が情報番組や情報誌などで流行になっているが、エマニエルはそのハシリだったと言えよう。
「当時、配給会社は数千万円程度でエマニエルを買ったんですが、結果的に何億円、何十億円の大ヒットになった。その恩恵で立派になった配給会社の試写室は、ライターや評論家の間で『エマニエル試写室』と呼ばれました」(秋本氏)
またこの映画のヒットの影響により、全国各地のスナックやキャバレーで「エマニエル」の店名が使用されることになった。
洋画不況が叫ばれる昨今だが、“エマニエル特需”は遠い過去の話となってしまった。