ほぼ日刊イトイ新聞

2020-07-18

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・タコを食べる国は少ないらしい。
 デビルフィッシュ(悪魔の魚)とさえ呼ばれているから、
 食べる食べないの次元でなく、嫌われているのだろうか。
 日本にいるぼくらは、ついついタコというと、
 マンガで描かれているような、丸い顔の
 人のいいおじさんみたいなキャラクターを想像するが、
 ホンモノはマンガとは似ても似つかぬ姿をしている。
 ぐねぐねしてぬるぬるして気味の悪い生きものである。
 そう感じる文化のほうが自然であったかもしれない。

 だいたい、タコの大きな風船みたいに描かれた部分は、
 頭と呼ばれているけれど、あれは頭じゃない。
 あえて言えば、内臓のつまった腹である。
 ほんとの頭は、足のつけね、口や目のあるあたりにある。
 おっと、そういえば「頭足類」という分類だった。
 口のまわりに足がある生きものなのである。
 いや、人間とちがうからといって不思議がることはない。
 そういうものは、そういうものとして大昔からいるのだ。
 そして、ぬめりがものすごい。
 タコが海のなかですごしているうちは、
 どれほどぬめりがものすごくてもかまわないが、
 人間がいざ食べようとすると、このぬめりには閉口する。
 粗塩を手に盛ってタコをつかんで、もみ洗いする。
 もんでももんでも、ぬめりはとれない。
 もんでもんでもんでもんで円広志じゃないのだけれど、
 吸盤のひとつひとつまでもんで掃除するのだ。
 プロのタコ扱いの人たちは、洗濯機を回すらしい。

 「ほぼ日」を読もうとしたら、ずっとタコの話だ。
 どうなるのだろうか、このタコばなしは? 
 そう思った人にはもうしわけないのだけれど、
 タコの話は、ずっとタコの話のままだとお教えしよう。
 ぼくは、タコの話をしはじめるとなかなかやめない。
 それに、タコを食べるところまでまだ話は進んでいない。
 タコ焼きのことだって、当然のように語りたい。
 そんなにタコが好きなのかと言えば、そうでもない。
 まぁまぁ食べるのは好きだけれど、大好物ではない。
 うなぎやら、まぐろやらのほうがずっと好きだ。
 じゃぁ、なんでそんなにタコを語りたがるのだろうか? 
 そこらへんが「このタコ!」と言われる所以なのだろう。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ある時期のビートルズに、「タコの庭」という曲もあるね。


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