小池知事が「公開すべき」と指示 感染予測文書の廃棄、東京都がずさんな公文書管理認める

2020年7月18日 06時00分
記者会見する東京都の小池百合子知事=17日午後、都庁で

記者会見する東京都の小池百合子知事=17日午後、都庁で

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 東京都の新型コロナウイルス感染症対策を巡り、3月に厚生労働省クラスター(感染者集団)対策班の専門家から示された感染者数増加の予測文書2通を都が廃棄していた問題で、小池百合子知事は17日の定例記者会見で、「しっかりと情報は公開すべきだとの方向で、(担当部署に)指示している」と述べ、廃棄したデータを専門家から取り寄せると明らかにした。一転してずさんな公文書管理を認めた格好だ。ただし、文書を廃棄した是非については言及を避けた。(中沢誠、小倉貞俊)
 問題は本紙の報道で判明。都によると、廃棄した2通のうち、3月17日に押谷仁・東北大教授から示された文書は「現状の対策のままでは2週間後に都内で感染者が約1万7000人に増える」との内容だった。その後、内容を精査した同19日文書は「約3000人」になると記載。同21日の最終的な予測は「320人」とされ、小池知事は同23日の会見で、「320人」の数字のみを公表していた。
 17日文書はその日のうちに廃棄し、19日文書は本紙が情報公開請求した直後の6月に廃棄したという。
 小池知事は廃棄した文書について「最初の(予測した感染者数の)数字と最終的な数字の乖離が大きく、私も『えーっ』と思った。そのペーパーがあったことはよく覚えている」と振り返った。その上で「データのベース(計算方法)が変わってくると、数字も変わってくる。途中経過をどこまで出すのかは、現場の判断もあったのかと思う」と説明した。
 一方、廃棄の是非には触れず、「改めて(公開を)指示しているので、確認いただきたい」とするにとどまった。
 この日の小池百合子知事の表明を受け、都文書課の担当者は「取り寄せた文書は、行政文書として管理する」と答えた。所管の都福祉保健局は、本紙のこれまでの取材に「算出根拠が不十分な作業途中のもので、行政文書に当たらない」としていた。
 廃棄した2通のうち1通について、都の担当部長は本紙の情報公開請求後に「メールの容量がいっぱいだったので削除した」と説明している。廃棄文書が行政文書だとすれば、担当部長の行為は都の公文書管理条例に抵触する可能性がある。都文書課は「条例に罰則はないが、職務を適正に行っていなかったと判断されれば処分の対象になりうる」としている。
 都では豊洲市場への移転を巡り、検証に必要な文書が残っていなかった反省から、小池知事が3年前に公文書管理条例をつくった経緯がある。都知事選の初当選時、小池知事は情報公開を「東京大改革の1丁目の1番地」と公約に掲げていた。

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