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「テラスハウス」木村花さん母が人権侵害でBPOに申し立て

「週刊文春」7月2日発売号が報じた「テラスハウス」(フジテレビ系/Netflix)のやらせ疑惑。自ら命を絶った木村花さん(享年22)の母・響子さん(43)が、7月15日、BPO(放送倫理・番組向上機構)に対し、放送による人権侵害があったとして審議を申し立てたことが、「週刊文春」の取材で分かった。

木村花さん(Instagramより)

 自殺の原因となったのは3月31日にNetflixで配信された第38話「コスチューム事件」。花さんが同居人の帽子をはたくシーンが流れ、花さんのSNSに誹謗中傷が殺到した。配信当日、精神的に追い詰められた花さんが自殺未遂を起こしたにもかかわらず、フジは5月14日にYouTubeで「コスチューム」事件の続編(未公開映像)を3本立て続けに公開し、5月23日には地上波で本編を放送した。その5日後の5月23日、花さんは自ら命を絶つ。

3月31日に配信された「コスチューム事件」。「テラスハウス」(フジテレビ系/Netflix)より

 響子さんは「週刊文春」の取材に対し、「コスチューム事件」の撮影において、スタッフから花さんに対し「ビンタしたらいいじゃん」などとやらせ指示があったことを証言。それを裏付ける花さんのLINEメッセージも携帯電話に多数残されていた。また、帽子をはたかれた同居人の小林快さんも、生前の花さんから「(帽子をはたいたのは)本心からではなくスタッフに煽られた行為だった」と謝罪を受けていたことを明かし、やらせの常態化も告発した(7月9日発売号)。

 花さんら出演者がスタッフからの理不尽な要求に従い続けた背景には、フジ側と交わした「同意書兼誓約書」の存在がある。28項目ある誓約書の中には「演出指示に従うこと」をはじめ、「途中リタイアしないこと」「写真週刊誌などの雑誌に口外しないこと」「(制作側に)SNSのアカウント情報を開示すること」などという文面が並び、これらの誓約条項に違反し、放送・配信が中止になった場合は、出演者が放送回分の制作費を無条件に賠償すると記載されていた。

花さんが友人やスタッフに送っていたLINE

 パワハラや名誉棄損問題に詳しい大城聡弁護士が指摘する。

「台本はなく、自由に共同生活を送っているかのように放送しているが、巨額の損害賠償の可能性をちらつかせた現代の“奴隷契約”とも言える誓約書兼同意書によって出演者個人の意思が制作側に制限される強い支配構造があったといえる。制作側による演出の態様によっては、憲法13条の自己決定権が奪われていたことになる。また、凶暴な悪役という虚像が本当の人格として視聴者に結びつけられ、SNSの炎上は生まれた。この点から放送によって人格権も侵害されていたともいえる。BPOではやらせがあったかどうかの放送倫理の問題だけでなく、人権侵害があったかどうかも審議されるべきです」

花さんが友人やスタッフに送っていたLINE

 フジは7月3日の社長会見で、「無理強いはしていない」「感情表現をねじ曲げるような指示はしていない」「花さんと話し合った上で撮影や配信を行った」と主張。また、社内調査中だとし、検証結果は遺族感情を踏まえながら公表するとしている。

フジの遠藤龍之介社長 ©共同通信社

 こうしたフジの説明に不信感を抱く響子さんは7月15日付でBPOの放送人権委員会に申し立てを行い、「週刊文春」の取材に次のように答えた。

「花や共演者、スタッフの証言から分かってきたのは、フジテレビさんが花を人間として扱ってはいなかったということ。フジ側はあたかも制作側と花が対等かのように説明していますが、これはイジメやパワハラの論理と同じです。2度と同じ悲劇が起きないようにするためにも、フジは花の死にきちんと向き合って欲しい」

花さんの遺影

 7月16日(木)発売の「週刊文春」では、3人目の告発者となる番組スタッフの「花さんが過呼吸状態の中、撮影が強行されていた」という新証言、さらに“追撮”と呼ばれる撮り直しが常態化する実態、花さんの祖母が語った孫との思い出などを3ページにわたって詳報している。

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