木村花さん遺族が『テラスハウス』をBPO審議申し立てへ

文=wezzy編集部
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『テラスハウスTOKYO 2019-2020』番組ホームページより

 5月に亡くなった木村花さんが出演していた番組『テラスハウスTOKYO 2019-2020』(Netflix、フジテレビ系)を、花さんの母・響子さんがBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会に申し立てる決断をしたという。

 7月16日発売「週刊文春」(文藝春秋)で、響子さんはフジテレビの対応への不信感を告白。また、『テラスハウス』番組スタッフが匿名で、撮影中にあった木村花さんへのひどい振る舞いを暴露してもいる。

 花さんがネットで中傷されるきっかけとなったのは、第38話で発生した「コスチューム事件」だが、それについて同居人が花さんを諌めるシーンで、非人道的な撮影があったという。花さんが過呼吸状態になり撮影が中断したが、落ち着いたらスタッフは再びカメラをまわし始めたそうだ。花さんはこの日の出来事を友人へのLINEで「死にかけみたいになってさっきまで床に倒れてたのにカメラに追いかけ回されて」と嘆いていたという。

 一切の演出がないという謳い文句のリアリティショーだった『テラスハウス』だが、実際には過剰な演出や制約があり、視聴者に出演者を叩かせて熱狂を生む構造になっていた。花さんには「カメラの前でキレろ」という指示があり、「ビンタしたらいいじゃん」という煽りもあったと、花さんから相談を受けた響子さんや友人が証言している。

 「コスチューム事件」の当事者だった元出演者の小林快さんは、花さんの四十九日を終えた7月10日にブログとインスタグラムを更新。「コスチューム事件」というのは、小林さんが花さんのプロレスコスチュームを誤って洗濯し縮ませてしまった事件で、花さんが激怒したことでネットは炎上した。だがその後、花さんは小林さんに電話で「自分の真相、あの時取った自分の態度について謝ってくれた」のだという。

 亡くなる二週間前、花さんと小林さんは電話で話をした。「でも電話をくれたあの時、正直自分は悩んでた、というよりかは病んでた。周りが見えなくなり、生きている人全員を疑うようなマインドセットになっちゃってた」と、小林さんは振り返った。小林さんが苦悩し、人間不信に陥った背景に、番組への出演は関係していたのだろうか。

 また小林さんは9日発売の「週刊文春」でも『テラハ』撮影時にスタッフの演出指示があったことを明かしており、また、ハプニングを装って花さんの胸を触るよう言われたことがあるとも告発していた。出演者同士のトラブルを、スタッフが仕込もうとしていたわけである。

 だが、フジテレビは「無理な演出を強要したわけではない」と否定。7月3日の定例会見では、番組配信の責任者である大多亮常務が<『テラスハウス』という番組は出演者とスタッフが多くの会話をして作り上げる撮影の中で出演者への提案やお願いはあります。あくまで相談してやっています。ただ、感情表現をねじ曲げるような指示は出していないということです>と弁明した。

 しかし、リアリティーショーやドキュメンタリーを謳う以上、視聴者の目から出演者を守るべく配慮しなければならないことは明らかだ。ドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)での“やらせ”も、人気出演者であったマキさん・ジョンさん夫婦が告発している。『テラハ』は軽井沢編でも散々炎上しており、スタジオコメンテーターのタレントたちも出演者へのバッシングを煽るようなノリだった。炎上ありきの盛り上がりだったのだ。

 新しいコンテンツを次から次へと制作し、消費していくテレビのサイクルに飲み込まれ、現場の感覚が麻痺している部分もあるのではないか。『テラスハウス』に問題のある演出はなかったか、出演者のケアに瑕疵はなかったか、SNSの状況をどのように認識していたか……こういった諸問題について徹底的に検証する時間が必要だ。

 その上で、出演者やスタッフへのメンタルヘルスケアを組み込んだ番組作りが求められるだろう。前出のブログ記事で小林さんは、「自分のスタンドアップでも少し話したけど、日本でのメンタルヘルスのケアは他の国に比べると多くの人が重視をしてないことにびっくりしている。重視をしないというよりかは、問題があるとわかっているけどそれを公に出さないし話さない。助けを求めることがなぜか、普通じゃないことになってきている、恥ずかしいことだと思っている」と、考えを綴っている。

 人を「人」として尊重し、出演者やスタッフを駒のように雑に扱うのではなく尊重しながらだって、魅力的なコンテンツは作れる。むしろ、そのほうがより良い番組ができるのではないか。これは『テラハ』およびフジに限らない、あらゆる番組の制作現場における課題だろう。

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