第十五話:世界最強の暗殺者、レベル5と対峙する【六】
「――残念だったな」
ルインは空いた左拳を握り締め、ほどほどの左ストレートを繰り出す。
それは<
(は、速過ぎ。<
死の恐怖を前にしたステラは、思わず目をつぶってしまう。
それからコンマ数秒後――確実に来るはずの強烈な衝撃は、いつまで経っても訪れなかった。
「……あ、れ?」
ゆっくりと目を開ければ――目と鼻の先で、ルインの左腕はピタリと止まっていた。
「……ど、どうして……殴らないの?」
「『どうして』、と言われてもな……。さすがに涙目の女の子は殴れないだろう」
「……っ!? こ、これは涙じゃない! 目から出た体液よ!」
「そうか。一般的には涙と言われるものだな」
「~~ッ」
ステラは大きくバックステップを踏み、大慌てで目元を拭う。
「決闘で情けを掛けられるなんて……こんな屈辱、生まれて初めてだわ! 手加減は無用、本気でやりなさい!」
「いや、本気でやれと言われてもな……」
ルインの本気とはすなわち――暗殺者の本気。
それは決闘という『お遊び』ではなく、殺し合いという『本番』でのみ発揮されるものだ。
犬歯を剥き出しにして「ぐるるる……!」と威嚇するステラに対し、ルインはポリポリと頬を掻く。
(また一段と不興を買ってしまったな……。さて、どうしたものか……)
チラリと時計を見れば、時刻はもうお昼の十二時を回っていた。
そろそろ決着を付けなければ、昼食を抜く羽目になってしまうだろう。
下手をすれば、午後の身体測定に差し支えが出るかもしれない。
「はぁ……
ルインはため息をこぼしながら、とある『確認』を取った。
「……何がよ?」
「俺が本気を出せば、
ちょっとした脅し文句と共に軽い殺気を放つ。
それはルインからすれば、おいたをした子どもを、大人が嗜める程度の感覚。
いわば、ちょっとした
しかし、
「ぇ、あ、ぁ……っ」
世界最強の暗殺者の殺気は、十代の学生には重過ぎた。
(何、これ……怖い……。体の震えが、止まらない……っ)
人間の持つ根源的な恐怖を刺激されたステラは、まるで蛇に睨まれた蛙のようにまばたき一つできなくなった。
怖かった。
恐ろしかった。
今すぐ
それほどまでの殺気――有無を言わさぬ絶対的な『圧』が、この場を完全に支配していた。
確かにステラは、レベル5の優れた魔法士だが……。
所詮はただの学生、十五歳の子どもだ。
当然ながら人を殺した経験などなく、そのような場に立たされたこともない。
(やっぱり、ルインは『普通』じゃない……ッ。何か、とてつもなく大きな力を隠している……。さっきだってそう。なんらかの方法で<
ルインという未知の存在。
彼の操る未知の魔法。
彼の放つ未知の圧力。
『未知という恐怖』が、ステラの思考を縛り、正常な判断力を
彼女の眼にはルイン=オルフォードという人間が、魔法の深淵に座する化物のように映っていた。
「――どうする、やるのか?」
ルインはゆっくりと右手を前に伸ばし、ステラへ照準を定める。
「……ッ」
たったそれだけで心臓は跳ね上がり、まるで銃口を額に突き付けられているかのような圧迫感がステラを襲った。
「……」
「……っ」
両者は無言のまま、しばらく視線を交わし、
「ま、参り……ました……。私の……負けです……っ」
ステラは歯を食いしばりながら、静かに敗北を認めたのだった。
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