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最強賢者の異世界無双 〜不遇とされた転生賢者はチートと現代知識で世界最強〜 作者:蒼月浩二

第1章:魔法学院入学編

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第7話:最強賢者は盗賊に手を焼く

 カンカンに照る日差しが眩しい。

 王都までの道のりは平坦で、道もきちんと整備されていた。クーネの町の外へはたまに父さんと散歩に出かけるくらいで、ここまで遠くに出たことはなかったのだが、平穏そのものだった。

 魔物が出てくる可能性はあるが、この辺にはそれほど強い敵は出てこないはずだ。

 LLOでそうだったから……というだけの根拠だが、間違いはないだろう。


 たまに見かける魔物は人間を自発的に襲わないスライムくらいで、凶暴そうなものはいない。

 警戒するべきはむしろ魔物ではなく――。


「やいやい、金を出せ!」


 そう、山賊である。

 髭っ面のいかにも悪党な顔をした男がいきなり脅しにかかってきた。


「町から出てくるところから見ていたが一人のようだな? 王都へ行くってことは金を持っているな? 全部置いていけば命までは奪わねえ。さあどうする?」


 山賊の仲間がぞろぞろ出てきて俺を威嚇してくる。数の理があるのだとアピールしているのだろう

 俺を脅しに来た山賊は髭がボーボーで、それ以外は奇麗に剃ってある。

 ちょうどいいので髭とそれ以外で区別するとしよう。


 それにしても……やれやれ、舐められたものだ。見た目が若そうだからと言って侮るのは愚か者のすることだ。たとえ多少数で不利であったとしても、結果には影響しない。


「まったく、お前たちは可哀そうなやつだな」


「なに!?」


 あ、口がすべった。つい正直に口走ってしまったのだ。

 三歳の時にもこれでやらかした。あれから自重していたのだが、油断すると出てくる。

 次から気を付けよう。


「こ、このクソガキがァ!」


 髭の山賊が斧で斬りかかってきた。

 俺は背中から剣を取り出し、斧に軽く当てる。


 スパッ


 山賊の持つ斧の先端が軽々と切断され、ころころと地面を転がる。


「な、なんだと!? てめえ魔法職じゃなかったのか!?」


「ん? 俺はバリバリの魔法職『賢者』だがそれがどうかしたか?」


「嘘をつくな! 賢者がそんなに強いわけないだろ!」


 ……嘘をつくなと言われても困る。俺はごく普通の『賢者』だ。幼いころからの訓練で順調にレベルアップし、レイジスから剣を教わった。それなりに強いことは自覚しているが、嘘などついていない。

 意外かもしれないが、『賢者』は剣との相性がいい。

 LLOでは全職業はファイター系とメイジ系に分かれる。

 ファイター系は近接戦闘や物理による遠隔狙撃を得意とし、メイジ系は魔法による遠距離攻撃と回復を得意とする。

 メイジ系は総じて魔法に依らない攻撃を苦手としていたのだが、『賢者』だけは違った。攻撃力がファイター系と同等ほどもある。


 剣を使うには攻撃力と敏捷性、それと経験による技術を必要とする。

 開発陣は『賢者』の賢と剣を掛けたダジャレのつもりだったとインタビューで答えていたが、これが洒落にならないレベルで強かったのだ。


「よ、よくもアニキを!!!!」


 髭がない山賊が一斉に襲い掛かってくる。

 俺はその全ての攻撃を【最短経路(ショートカット)】で避け続け、剣で武器を破壊していく。

 この繰り返しで多数の山賊を相手に勝利した。


「本当に申し訳ありませんでした!」


 山賊一同が土下座の格好である。

 これを壮観と言えばいいのか迷惑と言えばいいのかわからないが、ともかく山賊は謝罪を口にした。


「ごめんで済めば衛兵はいらない」


 LLOとこの世界での衛兵は実質的に警察のような働きをする。悪人を見つければ衛兵に突き出すか、衛兵を呼ぶというのが正しい行動だ。


「お、おっしゃる通りで!」


「今から町に戻ってお前たちを衛兵に突き出す」


「なっ……! それだけはお許しを!」


「そうか。じゃあ俺を納得させるような『誠意』を見せてみろ」


「せ、誠意と言いますと……?」


「お前たちが俺に提供できるものがあるだろう。ほら」


 俺は髭の山賊が腰に掛けていたバッグを揺らす。

 たくさんの硬貨が入っているようでジャラジャラと音を出した。


「お縄になるか、誠意を見せるか、どっちを選ぶ?」


 髭の山賊は顔面が真っ青になった。

 ぐぬぬと喉を鳴らす。

 こめかみにピキピキと青い筋が浮かんできた。

 お怒りの様子だ。


「抵抗しても無駄だ」


 俺は剣を首の山賊の首に近づける。山賊の額から冷汗が垂れる。


「……わかった。俺の全財産を渡そう」


 髭の山賊は腰のバッグから大量の金貨を取り出し、俺の足元に放った。


「何を勘違いしている。『お前の』じゃなく『お前ら』のだろう」


「お、追い剥ぎするのか!」


「先にやろうとしたのはどっちだ?」


 首筋に剣が触れるギリギリまで近づけていく。

 髭の山賊の額から冷汗が垂れる。


「お、お前らの持ち金も全部差し出せ! 金はまた手に入るんだ。金は時間さえあればまた手に入る!」


「アニキ……」


「こうなったら仕方ねえ!」


 チャリンチャリンと金貨が俺の足元に貯めっていく。

 全ての金貨を回収すると200枚あった。

 金貨1枚で大体1万円の価値なので、200万円ほど手に入ったことになる。

 山賊のおかげでボロ儲けだ。これだけの金貨を真面目にコツコツと稼ごうとすればどれほどの時間がかかるだろう……。


「金は全て渡した! も。もういいだろう!」


「ああ、もう用は()()()


 ほっと息をつく山賊たち。

 ……こいつら、何か勘違いしていないか?

 これで終わったと思っているのだろうか。


 俺は最近覚えた新魔法【空間移動(ゲート)】を発動する。

 対象は山賊全員。移動先は衛兵の駐屯地だ。


「な、何をする気だ!」


「決まっているだろう。お前たちを衛兵に突き出すんだ」


「せ、誠意を見せただろう! そんなのあんまりだ!」


「黙れ。この金は弱い旅人からせしめた金なんだろう。そんなものが『誠意』と呼べるか!」


 それに、こいつらはそのまま放っておけばまた必ず人を襲う。

 ある意味魔物よりタチの悪い存在だ。

 衛兵の施設で強制労働させることで、更生させなければならない。


 俺は山賊全員を動けないように【拘束(ブロッキング)】し、まとめて衛兵の駐屯地に転送した。


 急がなくちゃならないのに、時間を食ってしまったな……。

 まあ、旅の資金が手に入ったので良しとしておこう。

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