イタリアの世界遺産にもなっているピサの斜塔。「斜塔」の名の通り大きく傾いていることでも知られるが、700年もの間大きな地震にも倒れることなく建っている理由をローマ第三大学率いる研究チームが探った。その秘密は、この塔が傾く要因ともなっている土壌にあった。
傾いても地震に耐えるピサの斜塔
傾斜5度、中心から5mずれた58メートルのこの塔は、1372年完成。まっすぐ立っていることすらままならないピサの斜塔は、これまで中規模の地震が起きれば崩れたり崩壊したりすると思われてきた。
しかしこの地域では1280年以降少なくとも4度の大きな地震が起きているが、ピサの斜塔は倒れることもなく、地震からの損傷も見られない。これを研究チームが調査したところ、その理由が判明した。
その理由は、塔の高さ、剛性、そして基礎部分の土壌の柔らかさのバランス。これが構造の振動特性を変化させることで、塔が地震による地盤振動で共鳴しない、地盤構造物相互作用が起きるのだ。
地震に強い理由=傾く理由
今回の実験にはブリストル大学の土木工学博士、ジョージ・ミロナキス(George Mylonakis)も参加している。彼は地盤構造物相互作用と地質工学を教えると同時に、同大学でインフラを巨大地震に耐えることができるようにするための研究を行う「地震と地質工学研究グループ」(The Earthquake and Geotechnical Engineering research group)のトップでもある。
ミロナキス博士はブリストル大学の発表の中で、ピサの斜塔が崩れそうなほど不安定に傾かせている要因である土壌そのものが、地震で塔が崩れるのを防ぐことになっているのは「皮肉だ」と語っている。
今回の研究成果は6月18日から21日までギリシャのテッサロニキで行われる第16回ヨーロッパ地震工学学会で正式に発表される予定となっている。