19世紀、電気が普及する以前に警察が暗闇で悪者を見つけるために使用したランタン。現在でも、映画やドラマのために小道具として模造品の製造が行われている。余談だが、ランタンはランプの1種で、携行できるランプのことをランタンと呼ぶそうだ。詳細な作り方は動画に譲るとして、本稿では、このランタンが使用されていた当時のイギリス警察の状況を有名な推理小説を交えて紹介したい。
その小説とは皆さんもご存知の『シャーロック・ホームズ』だ。ちなみに、コナン・ドイルがシャーロック・ホームズの記念すべき第一作『緋色の研究』を発表したのはかの悪名高い「切り裂きジャック」がロンドンに姿を現した前年。奇妙な因縁を感じざるを得ないが、続いて当時のイギリス警察について少し触れたい。
当時のイギリスの警察はまだ産声を上げたばかりの組織で、ホームズによくバカにされるロンドン警視庁(スコットランドヤード)のレストレード警部もその出来たてホヤホヤの組織の一員だったのである。それ以前の捜査は、12世紀から延々と続く旧態依然とした制度によって運営されており、科学的な捜査は行われずに適当な人間を吊し上げて処罰するだけのものだったようだ。
推理小説では(当たり前のことだが)証拠がなければ犯人だと断定することは出来ないため、合理的な捜査を行うスコットランドヤードが出来るまでは推理小説の誕生する余地などなかったのである。このような当時の状況を知っていると、シャーロック・ホームズをはじめとする古典的な推理モノを見る時に少し違った視点で見ることが出来るかもしれない。