第十四話:世界最強の暗殺者、レベル5と対峙する【五】
(さて、今度はこちらから仕掛けるか……)
ルインがパキンと人差し指を鳴らし、体重を爪先に載せたそのとき――前方から、とてつもない魔力の奔流が吹き荒れた。
「……っ」
それは彼をして、一旦踏みとどまらせるほどの大魔力。
すなわち――『レベル5』の全力だ。
「――対物障壁を叩き割る、驚異的な身体能力。<
全身に超高圧電流を纏い、まさに『雷』と化したステラは、心の底から賛辞を贈った。
「だけど、どこまで行っても所詮は『レベル2』。――知っているわよね? 現代魔法において、『レベルの差』は絶対。たとえ天地がひっくり返ろうとも、あなたじゃ私に勝てないのよ!」
ステラは
「――<
彼女の右手に
「空間さえも斬り裂く超高出力の大魔法。御自慢のレベル2<
ステラは滅雷剣を右手で弄びながら、不敵な笑みを浮かべる。
「おいおい、ちょっと待て……。ルール上、『致死性の攻撃は禁止』じゃなかったのか?」
さすがのルインも、これにはストップを掛けた。
<
致死性の有無など、今更あえて論ずるまでもない。
「その点については、問題ないわ。普通の魔法士なら跡形も残さずに消えちゃうだろうけど、きっとあなたなら死なないでしょう?」
「確かに死ぬことはないが……。さすがにそれはかなり効くぞ」
ルインは『家庭の事情』もあって、ありとあらゆる魔法に耐性を持っているが……。
いくら彼でも、レベル5の直撃を食らえばタダでは済まない。
「この剣を見て、『死ぬことはない』と言い切れるのね……ほんと呆れた。――でも、おかげで安心できたわ。これで一切の手加減なく、全力でルインを叩きのめせるわね!」
ステラの全身から溢れんばかりの魔力が吹き荒れ、<
(……なんという魔力だ。まさか、これほどの魔法士だったとはな……)
とてつもない大魔法を目にしたルインは、素直にそう感心していた。
「踏み付けにされた、私の自信とプライド……。入学式のときに受けた、耐えがたい屈辱と恥辱……っ。積もりに積もったこの恨み、今ここで晴らさせてもらうわ!」
「どれ一つとして、心当たりはないんだが……」
「問答無用! 死なない程度に……死ねぇ!」
ステラは大きく右手を振りかぶり、<
私怨のたっぷりと籠められたその一撃は、音速を優に超え――ルインの心臓を目掛けて突き進む。
(ぃよし、これは勝ったわ!)
(はぁ……やむを得んな)
ルインは心の中でため息をこぼし、ゆっくりと
そしてほんの一瞬、刹那にも満たない僅かな時間――右目の魔眼を解き放つ。
すると次の瞬間、
「……え?」
赤黒い閃光が空を駆け、<
厳しい修業の果てに会得したステラの誇る最強の大魔法が、魔法の深淵を覗く者にのみ許された至高の一撃が、ただのひと睨みで消し飛ばされてしまったのだ。
信じられない光景を目にした彼女は、ただただ呆然と立ち尽くす。
(う、そ……。いったい、何が起きたの……?)
呆然自失となったステラが
「……ッ!?」
目の前に右手を振りかぶったルインの姿が浮かび上がる。
「素晴らしい魔法だったぞ」
彼は短くそう告げ、恐ろしい速度の手刀を振り下ろし――そこでふと冷静になった。
(……さすがにこれはやり過ぎだな)
思いがけず魔眼を使ったことで、少し腕に力が入り過ぎてしまっていた。
このままでは、文字通りステラの首を落としてしまう。
ルインは手刀の速度を大きく落とし、彼女の首筋へ優しく魔手を差し向けた。
すると――。
「『ノーブルバース』を……舐めるなぁ……ッ!」
ステラは咄嗟の判断で、レベル2の強化系魔法<
生体電気を無理やりに活性化させ、限界まで反射神経を高めた彼女は、人間の限界を超えた動きによって、ルインの手加減に手加減を重ねた手刀をなんとか回避。
振り下ろされた彼の右手をがっしりと掴んだ。
(勝った……ッ! ゼロ距離で体内へ直接電気を叩き込めば、たとえどんな魔法でも防ぎようはないわ!)
今度こそ勝利を確信したステラは、渾身の超高圧電流を叩き込もうとしたが……。
その顔はすぐさま、真っ青に染まる。
(な、なんで……どうして魔法が使えないの……ッ!?)
このとき、ステラは気付かなかった。
ルインの右腕を掴んだ自分を、真紅の魔眼が見下ろしていることに。
※とても大事なおはなし
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