前者の人々は、収入が減っていないにもかかわらず給付金を受けた。そして、後者の人々は、給付金ではとても補いきれないほどの収入減に直面している。
給付金は、大きな打撃を受けて、深刻な収入減に直面している人々に集中すべきだったのではないか?
これは、本コラム(2020年5月14日付け)「コロナで収入激減は国民の約3分の1、政府が本当に救うべき人々とは」で指摘したことだが、5月の家計調査で改めてその必要性が確認された。
特別給付金の受領率は、5月時点では上で推計したように11.8%であり、6月24日には64.7%だった。これを考慮して、6月に53%の世帯に給付金が給付されたとしよう。
すると、6月における世帯当たり受領額は、5月の4.5倍である18万円程度となるだろう。他の収入の状況が変わらなければ、実収入の対前年増加率は45%程度となる。
7月も似た状況が続くだろう。
コロナ感染拡大で所得が大幅に減少する人々がいる半面で、勤労者世帯の収入が給付金によって4割以上も増加するというのは、いかにも奇妙なことではないだろうか。
所得減で困っている人々は
個人事業者ら全体の3割程度
では、「大きな打撃を受けて、深刻な収入源に直面している人々」は、どのような人々か?
上で見たのは勤労者世帯の平均の姿であり、第一に、勤労者世帯でも、深刻な収入減に直面している人々は、もちろんいる。
第2は、勤労者世帯以外の人々だ。就業形態でいえば、個人事業者やフリーランサーだ。そして、失業者や非労働力化した人々だ。
では、それらの人々はどの程度いるのか?
それを知る手がかりを、家計調査が与えてくれる。
5月の家計調査によると、名目消費支出は全体として前年同月比16.2%減だったが、つぎの項目については、減少率がとくに大きかった。
被服・履物(洋服、シャツ、セーター類)が38.3%減、教養娯楽(教養娯楽サービス、書籍・印刷物)が37.9%減、住居(設備修繕・維持、家賃地代)が26.0%減、交通・通信(交通、自動車等関係費など)が22.4%減、教育(授業料、補習教育)が21.0%減。
これらの業種に関連する就業者は、「コロナで収入激減は国民の約3分の1、政府が本当に救うべき人々とは」で示したように、全体の3分の1程度と考えられる。
これらに関連する人々の所得は大きく落ち込んでいる可能性が高い。