給付金の支給が始まったのは5月だが、給付率の全国平均は、総務省の発表によると6月24日時点で、全国5853万世帯のうち64.7%だった。
ただし、大都市ではかなり低い。朝日新聞の調査によると、6月19~26日の時点で、大阪市は3%、千葉市8%、名古屋市9%だった。世田谷区では、7月3日時点で、約35%だった。
こうした事情を考えると、5月の受領率が11.8%という上記の推計は、妥当なものと考えられる。
勤労者の賃金は
それほど下がっていない
つぎに(2)のその他の実収入については、図表1の5月における対前年同月実質増減率を見ると、つぎのとおりだ。
まず、経常収入が2.9%増、勤め先収入が2.7%増と、平常並みの数字だ。
世帯主の臨時収入・賞与は、40.4%増になっている。企業の業績不振にもかかわらず、賞与の伸びはかなり高い値だ。
また、非正規雇用者の失業が問題だといわれているが、世帯主の配偶者の収入は14.3%というかなり高い伸びを示している。
かなり大きな落ち込みが見られるのは事業・内職収入だが、実収入に占める比率は低い。
以上のように、勤労者世帯は、平均して見るかぎり、コロナショックにもかかわらず、深刻な収入減には直面していないということが確認できる。
なお、厚生労働省が7日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、所定内の給与も含めた現金給与総額は26万9341円で前年同月比2.1%減だ。2015年6月以来の大きい下げ幅だが、減少率自体はそれほど大きなものではない(注1)。
(注1)毎月勤労統計調査によると、残業代などを示す所定外給与は1万4601円と前年同月比で25.8%減った。これは、企業が残業時間を減らしているからだ。また、非正規労働者が減っているのも問題だ。
受給者が増えた6月には、
実収入が45%程度増加する可能性
重要なのは、上で指摘したように「勤労者世帯で経常収入が減っていない」という事実である。
すると、特別給付金は少なくとも全体として見ると、必要なかったと言える。
もちろん、それは、「勤労者世帯を平均として見れば」ということだ。
実際には、すべての人が同じであるわけではない。
平均より恵まれている人もいるし、平均より深刻な事態に直面している人もいる。