テブナンの定理




テブナンの定理

テブナンの定理 は求めたいものが、回路の電流 のときに有効な定理です。
回路中の任意の場所に流れる電流 I を、求めるときに使います。

テブナンの定理の使い方

図(1)のような、複雑な回路網の抵抗に流れる電流 I を求めるとします。
この場合、図(2)のように等価電源 V0 と等価抵抗 R0 に変換します。
電流 I は 
I=V0R0+R [A] として簡単に求めることができます。

手順
1.電流を求めたい部分を切り離します。
2.等価電源 V0 を求める。
3.等価抵抗 R0 を求める。(回路内部の電源をすべて短絡する)
4.等価回路に変換する。
5.目的の電流 I=V0R0+R [A]を求める。

テブナンの定理の例

図のようなの回路の電流 I を求める場合において、テブナンの定理の使い方を説明します。

1.電流を求めたい部分を切り離します

2.等価電源 V0 を求める

V0 を求めるには、次のようにします。

閉回路に流れる電流を I0 とすると、次の式が成り立ちます。
I0=1563+6=1 [A]

したがって、V0 は
15V3V=6V+6V=12 [V] になります。

起電力と電圧降下の正負

2018.07.13

3.等価抵抗 R0 を求める。

回路内部のすべての電源を短絡させます。

合成抵抗 R0 は、並列接続なので
R0=3×63+6=2 [Ω] になります。

4.等価回路に変換する

この等価回路の負荷抵抗に流れる電流 I を、オームの法則により求めると、次のようになります。

I=V0R0+R=122+4=2 [A] 

テブナンの定理を検証する

次のような回路で、電流 I をテブナンの定理で求めよ。という問題があるとします。

テブナンの定理で、V0 を求めます。

I0=10025=4 [A] から

V0=1005×4=80 [V]

次に、等価抵抗 R0 を求めます。

抵抗の並列接続なので、和分の積で求めます。
R0=5×205+20=4 [Ω]

求めた V0R0 から、もとの回路を、等価回路にすると次のようになります。

求める電流 I
I=808=10 [A] になります。

各要素についての検証

回路の各要素を、次の図のようにして考えて見ます。

合成抵抗を R とすると

R=5+20×420+4=253 [Ω]

I1=100253=12 [A]

I2I を分流の法則で求める。

I2=I1×420+4=2 [A]

I=I1×2020+4=10 [A]

したがって、V1=V2=40 [V]

V1=1005×12=40 [V]

V2=20×2=40 [V]

●各要素の数値は次のようになります。

回路の負荷抵抗 4 [Ω] にかかる電圧は、40 [V] になり、テブナンの定理の V0=80 [V] とは異なることに注意が必要です。

●等価回路での各要素の数値は、次のようになります。

V0=80 [V] は、R0 と負荷抵抗 4 [Ω] の電圧降下の和になります。


テブナンの定理の証明

テブナンの定理は、どのように考えて作られたのでしょうか。

図1のような、回路の端子ab 間に抵抗 R [Ω] をつないだとき、流れた電流を I [A] とすると次のように表されます。

I=ViRi+R [A] 

●テブナンの定理の証明をしてみます

まず、回路の負荷抵抗 R を切り離します。

回路網の複数の電源を一つにまとめた電源を V0 とします。

同じように、複数の抵抗を一つにまとめた内部抵抗を Ri とします。 

また、端子ab 間の開放電圧を Vi とします。

一般的に、V0Vi の値は異なります。

●端子電圧と同じ電圧の電池 Vi を接続する

図3のように、ab 間の端子電圧と同じ大きさの起電力を持つ電池を、ab 端子に接続します。

そうすると、両方の電位差がなくなりますので、回路には電流 IE は流れません。

●抵抗 R を接続する

回路に流れる電流 IE は 0(ゼロ)なので、図4 のように、回路に抵抗 R を接続しても変化は起こりません。

●内部電源 V0=0 にする

図4 の回路の内部電源 V0 を 0(ゼロ)にすると、電池 Vi から、図5 のように、電流 I1 が流れます。

●電池 Vi=0 にする

次に今度は、図4 の回路の電池 Vi を 0(ゼロ)にすると、内部電源 V0 により、図6 のように、電流 I2 が抵抗 R に流れます。

この電流 I2 は図1 で流れた電流 I と等しくなります。

図1 の電流 Iテブナンの定理で流れた電流になります。

●内部抵抗 Ri を求める

この回路が持つ内部抵抗(合成抵抗)は Ri ですから、図7 の右の図の回路と等価になります。

したがって、電流 I1 はオームの法則から

I1=ViRi+R [A] になります。

ここで、I1=I2I2=I ですから、向きが違いますがそれぞれの大きさは等しくなります。

つまり、I1=I2=I [A]

したがって、

I=ViRi+R [A] になります。

この式は、図1のテブナンの定理の式と同じになります。

以上で「テブナンの定理」の説明を終わります。