テブナンの定理
テブナンの定理 は求めたいものが、回路の電流 のときに有効な定理です。
回路中の任意の場所に流れる電流 を、求めるときに使います。
テブナンの定理の使い方
図(1)のような、複雑な回路網の抵抗に流れる電流 を求めるとします。
この場合、図(2)のように等価電源 と等価抵抗 に変換します。
電流 は
[A] として簡単に求めることができます。
1.電流を求めたい部分を切り離します。
2.等価電源 を求める。
3.等価抵抗 を求める。(回路内部の電源をすべて短絡する)
4.等価回路に変換する。
5.目的の電流 [A]を求める。
テブナンの定理の例
図のようなの回路の電流 を求める場合において、テブナンの定理の使い方を説明します。
1.電流を求めたい部分を切り離します
2.等価電源 を求める
• を求めるには、次のようにします。
閉回路に流れる電流を とすると、次の式が成り立ちます。
[A]
したがって、 は
[V] になります。
3.等価抵抗 を求める。
回路内部のすべての電源を短絡させます。
合成抵抗 は、並列接続なので
[Ω] になります。
4.等価回路に変換する
この等価回路の負荷抵抗に流れる電流 を、オームの法則により求めると、次のようになります。
[A]
テブナンの定理を検証する
次のような回路で、電流 をテブナンの定理で求めよ。という問題があるとします。
テブナンの定理で、 を求めます。
[A] から
[V]
次に、等価抵抗 を求めます。
抵抗の並列接続なので、和分の積で求めます。
[Ω]
求めた から、もとの回路を、等価回路にすると次のようになります。
求める電流 は
[A] になります。
各要素についての検証
回路の各要素を、次の図のようにして考えて見ます。
合成抵抗を とすると
[Ω]
[A]
を分流の法則で求める。
[A]
[A]
したがって、 [V]
[V]
[V]
●各要素の数値は次のようになります。
回路の負荷抵抗 [Ω] にかかる電圧は、 [V] になり、テブナンの定理の [V] とは異なることに注意が必要です。
●等価回路での各要素の数値は、次のようになります。
[V] は、 と負荷抵抗 [Ω] の電圧降下の和になります。
テブナンの定理の証明
テブナンの定理は、どのように考えて作られたのでしょうか。
図1のような、回路の端子ab 間に抵抗 [Ω] をつないだとき、流れた電流を [A] とすると次のように表されます。
[A]
●テブナンの定理の証明をしてみます
まず、回路の負荷抵抗 を切り離します。
回路網の複数の電源を一つにまとめた電源を とします。
同じように、複数の抵抗を一つにまとめた内部抵抗を とします。
また、端子ab 間の開放電圧を とします。
一般的に、 と の値は異なります。
●端子電圧と同じ電圧の電池 を接続する
図3のように、ab 間の端子電圧と同じ大きさの起電力を持つ電池を、ab 端子に接続します。
そうすると、両方の電位差がなくなりますので、回路には電流 は流れません。
●抵抗 を接続する
回路に流れる電流 は 0(ゼロ)なので、図4 のように、回路に抵抗 を接続しても変化は起こりません。
●内部電源 にする
図4 の回路の内部電源 を 0(ゼロ)にすると、電池 から、図5 のように、電流 が流れます。
●電池 にする
次に今度は、図4 の回路の電池 を 0(ゼロ)にすると、内部電源 により、図6 のように、電流 が抵抗 に流れます。
この電流 は図1 で流れた電流 と等しくなります。
図1 の電流 はテブナンの定理で流れた電流になります。
●内部抵抗 を求める
この回路が持つ内部抵抗(合成抵抗)は ですから、図7 の右の図の回路と等価になります。
したがって、電流 はオームの法則から
[A] になります。
ここで、 ですから、向きが違いますがそれぞれの大きさは等しくなります。
つまり、 [A]
したがって、
[A] になります。
この式は、図1のテブナンの定理の式と同じになります。
以上で「テブナンの定理」の説明を終わります。