私は伊藤氏とも山口氏とも、縁もゆかりもなかった。 2019年12月に決した裁判で、はじめて知った位である。
「ジャーナリスト同士の争いですか、英語で記者会見とかクールだなあ」と思っていろいろネットで情報をみていくと、山口氏の説明が、きわめて明快で筋が通っているように感じられた。そのあとブラックボツクスを付箋だらけになるほど読み、事情がわかりはじめてきたので、感じたことをまとめてみた。
まず伊藤詩織氏と山口敬之氏の出会いまでを簡単に表にした。山口氏の記事が中吊りにでた日と伊藤氏がメールで就職依頼をした日が一致しているのは偶然ということだが、それ以外にも奇妙に行動が同期しているように見えるところがある。しかもメールやラインはほぼ伊藤氏が先に送り始めている。
時期 | 伊藤氏 | 山口氏 |
2013年 1月 |
メリーマウントマンハッタンカレッジ入学 |
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2013年 初夏 |
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某外交官から韓国軍がベトナム戦争時に慰安婦を使っていた情報があることを知らされた。 |
2013年 9月 |
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TBSワシントン支局長として赴任、公文書調査を開始。 |
2013年 12月10日 | NY・ピアノバーGでホステスとして勤務。「知人を介して?」山口氏と会う。 |
知人の記者に連れられてピアノバーにゆきそこで伊藤氏に会う。 |
2013年 12月11日 | TBSニューヨーク支局長を紹介され、支局を案内されるが、その後フィレンツェに留学する。(金銭的理由?) |
TBSニューヨーク支局長に伊藤氏を紹介し、支局長に伊藤氏を任せてその場を立ち去る。 |
2014年 7月25日 | ベトナムの韓国軍慰安所についての書簡を発見 |
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2014年 8月 | NYに戻り、インターン先を山口氏に頼む8月27日 日本テレビNY支局インターンに決まる。(11月まで) | TBS本社とベトナム慰安所報道の交渉を始める。(2015年2月から逆算して半年前) |
2014年 9月23日 |
国連総会 伊藤氏からのメールでのやり取りのみ。 |
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2014年 12月頃 | ベトナム韓国軍慰安所の証人フィンライソン氏にインタビュー |
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2014年 12月末~ | 日本に戻る | |
2015年 2月 | ロイター東京支局で無給インターン開始 |
ベトナムの韓国軍慰安所の件はTBSで扱わないと決定 |
2015年 3月25日 |
山口氏にメール。就職依頼。会いたい旨伝える |
記事の載った週刊文春の中吊り広告が出る |
2015年 3月26日 | 週刊文春発売 |
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2015年 3月30日 |
日本に帰国 |
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2015年 4月3日 |
山口氏伊藤氏と会い恵比寿の①串カツ屋~②鮨の喜一~③東京シェラトンホテルへ |
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2015年 4月4日 | 5時50分にホテルのタクシーに乗る |
7時40分にシェラトンホテルを出る。 |
2013年1月ごろ 伊藤氏はアメリカの大学に入学。写真とジャーナリズムの勉強をしながらピアノバーというキャバクラのようなところで働いていた。キャバクラ経験は以前から六本木でもあったようである。(伊藤)
2013年初夏 某外交官から韓国軍がベトナム戦争時に慰安婦を使っていた情報があることを知らされた。(山口)
2013年8月~9月 TBSのワシントン支局長として赴任後、アメリカの公文書調査を始める。(山口)
2013年12月10日 山口氏は知人の記者に連れられてそのピアノバーへ行き、伊藤氏がホステスとして山口氏についた。そのときが初対面で伊藤氏は山口氏から名刺をもらい、大学でジャーナリズムを学んでおり、ジャーナリストになることを夢見ていることを強くアピールした。(伊藤)
※学生で不法就労していた疑いがある。
二人はホステスと客の関係であったが、伊藤氏がジャーナリスト希望を猛烈にアピールしたため、山口氏が便宜をはかり、翌日ニューヨーク支局長を紹介した。
しかし伊藤氏はまもなく留学と称してフィレンツェに行ってしまう。
2014年7月 山口氏、ベトナム関連重要書簡を発見。証人のインタビューも行う。
2014年8月 山口氏、ベトナムの件をTBSで報道するために本社とやり取りし始める
2014年8月 伊藤氏、ニューヨークに戻り、山口氏にインターン先を依頼。日本テレビニューヨーク支局長を紹される。
2014年9月 山口氏は国連総会でニューヨークに来訪。伊藤氏からメール。山口氏は有名人や国連大使等との面会などに誘ったが、伊藤氏は日本からゲストが来ているとのことで会わず。
2015年1月(あるいは2014年12月後半) 伊藤氏 日本に帰国。
2015年2月 伊藤氏 ロイター通信の東京支局で無給のインターン開始。
2015年2月 TBSはベトナム慰安婦の問題を扱わないと結論。
2015年3月25日 山口氏の記事が載っている週刊文春の中吊り広告が出る。
2015年3月25日、伊藤氏メールで山口氏に就職依頼。山口氏は無給のインターンか、有給のプロデューサーの支援を提案、ただしプロデューサーならビザが必要である旨を伝える。山口氏はTBSに呼び出されており、日本に帰る予定があったので伊藤氏の要望もあり、会うことになった。
2015年3月26日 週刊文春に山口氏の記事が載る。
山口氏は記事の扱いで、TBSに呼び出されて3月30日、日本に一時帰国する。
TBS本社での話を終え、最後の一泊というところだった。
【恵比寿駅~串焼き屋~鮨屋 酒量】
2015年4月3日。午後8時。山口氏はすでになじみの串焼き屋についていて、電話がきて恵比寿駅まで迎えにいった。
山口氏はなじみの串焼き屋に伊藤氏を連れていき、伊藤氏は小さなコップでビール二杯とワイン1,2杯を飲んだという。串焼5本、もつ煮込み、きゅうりの叩きなどを食べた。客は満席に近くでビザの話も説明し他の客ともやりとりした。
※店の女将によれば、小さなコップでビール2杯としそサワー1杯それに本人が飲めるというのでワインはボトルで入れたので、数杯(5~6杯)は飲んだという。
そのあと、2人は徒歩5、6分のところにある鮨屋にいった。ここも客はいっぱいいてほぼ満席。隣にはさかなクンが座ったという。伊藤氏は日本酒を2合を飲み終わる前にトイレで、意識を失った。
伊藤氏がトイレからなかなかでてこないので、店員がいってみると、トイレ内で便器から崩れ落ち、不自然なかたちで寝込んでいたという。
店員の話では伊藤氏は声をかけると目を覚まし、意識をとりもどした。その後、他の席へいって話をしたり、裸足で歩き回ったりしていた。
伊藤氏本人はトイレで気を失ってから翌日4月4日5時ごろまで記憶がないと主張。
店側はこの時日本酒1升ちかく(7,8合)を二人で飲んでいたとしている。
【タクシー~ホテル】
店をでて、山口氏はタクシーをひろった。その時の伊藤氏は酔って街路樹によりかかるような状態であったという。裁判所では鮨屋は恵比寿の駅からは5分とあり、タクシーに乗せるのは不合理であると判じた。つまり近いのにタクシーに乗せるのは怪しいというわけである。
だが近いと言っても夜道を千鳥足で歩く。鮨屋で一度眠り込んで意識を失った伊藤氏である。道端でまた同じようにならないとも限らない。
大概の男性なら、女性がふらふらしていて、自分がタクシーなら、近くてもついでだから途中まで乗せていくだろう。合理性はある。
これでタクシーに乗せたのが不合理といわれたら身もふたもない。裁判所の判断には無理がある。
タクシーの運転手の証言では、車の中で、二人は鮨や仕事の話などしていたという。これはこの時点で伊藤氏に意識があった証左である。
しかも伊藤氏から運転手に最寄り駅を聞き、目黒駅といわれると、目黒駅で降ろしてくれと言った。これは目黒駅を理解する見当識があったこと、駅で降りるという判断力があったことを示している。
運転手は目黒駅に近づくにつれ、行き先を確認したが、伊藤氏は再度目黒駅を指示した。山口氏はそれを止めようとはしなかった。
もし、山口氏が最初からホテルに連れて行くことを目的としていたなら、ここで説得にかかるだろう。
目黒駅につく直前で、山口氏は伊藤氏の様子がおかしいのを察知し、ホテルで休ませる決断をした。結局伊藤氏は、車内で嘔吐した。
ホテルにつき、山口氏は降車したが、伊藤氏はタクシー内の嘔吐物をなんとかしようとして、降りるのにもたついた。
山口氏は伊藤氏に手を貸し、支えてタクシーから降ろした。
このときのホテルの監視映像があるので、その時の証拠になりそうなものだが、同じ映像を観たにもかかわらず、伊藤氏が話を盛って形容したために、みる人によって意見が異なり、裁判官すらも引きずるように降ろしたと結論づけた。
しかし、伊藤氏は自ら足をタクシーの外に出している。本人に意識がなかったり、降りるのが嫌なら、腕や肩をもって引きずりだそうとしたときに、下半身がシートの摩擦と体の重みで残り、上半身がタクシーの中で倒れてしまう。さらに引っ張れば相手は脚がタクシーに残った状態で上半身から引きずり出されてしまう。
伊藤氏が足から出たということは一度自分でおしりをずらし、体をドアにむけて回転させたということ。つまり伊藤氏自身に協力動作があったということである。
さもなくば山口氏が伊藤氏の腰~尻~または下肢に手をまわし、無理やり引きずりださなければならないが、そこで意識のある伊藤氏が拒否すれば格闘になる。
そうなればさすがのタクシードライバーも、フロントのボーイも異変に気づくはずである。
伊藤氏は自分で足から出てきた。
さらに事実を具体的に指摘しなければならない裁判所は引きずる「ように」と曖昧な表現した。
「ように」ということばは、そのようにみえるが実際はそうではない、あるいはほんとうはわからない時に使う言葉である。
裁判所も本当は引きずっていない、あるいはわからないにもかかわらず、こうした印象を与えるあいまいな言葉をそのまま使った。
伊藤氏はフロントを通過するときも、抱きかかえられ、足が地についておらず、引きずられたと主張しているが、山口氏は伊藤氏はふらついていたので支えてはいたが自分の脚で歩いていたという。
足が地につかず引きずられるためには両脇から抱えてつれてゆかなければならない。Black Boxに書かれた伊藤氏のこの説明は物理的に不可能である。伊藤氏はホテル内の移動が自己の意思ではなかったことを強調したかったようであるがやりすぎである。
また山口氏は片手にカバン二つと伊藤氏のものと思われるコートも持っている。片腕で女性を抱きかかえて連れて、数十メートルを引きずるようなことをすればフロントが異常を察知する。
以下の画像はネットに流出していたものであるが、山口氏は公判で訂正したようにカバンを二つとコートのようなものも持っている、サポートが片手であることがわかるため、伊藤氏を介助する力が強くないことを証明している。
片手では倒れないように支えるのがやっとで、片手で酩酊した大人の女性を無理やり引きずることが難しいことが分かる。
ところが伊藤氏側はそれを単なる「形容」であるといい、裁判官も動画をみて異論をさしはさまなかった。これは度が過ぎた誇張であり、事実を歪める形容であるが、裁判官はスルーした。
その後、伊藤氏の主張は目が覚めたらベッドで山口氏がおおいかぶさって性交していたという生々しいものだった。伊藤氏は痛い痛いと抵抗し、一旦バスルームに逃げこんだという。
ところが、なぜかバスルームに入った後、逃げようとしてまた部屋を出るためにドアをあけた。すると再び山口氏に押さえこまれたという。しかし、強く拒否したので山口氏は行為をやめた。伊藤氏はこれが5時ごろのことと主張している。
バスルームでは手元の山口氏のアメニティに気づくも、目の前にある電話に気づかない。しかも折角逃げ込んだバスルームのドアをあけるというのは、動転していたとはいえ、不自然である。実は伊藤氏は以前このホテルにとまっている(BlackBox )。バスルームの電話に気がつかぬはずはない。
【山口氏の主張】
伊藤氏の主張は裁判所の判決とは逆に不審な点が多く、一貫性がない。では山口氏の主張はどうであろうか。
山口氏の主張では、伊藤氏がエレベーター前でも意識があり、会話をしたという、部屋に入るとパソコン周辺バスルーム前、バスルームの中で嘔吐し、嘔吐まみれになってうずくまっていたという。
山口氏は伊藤氏が嘔吐まみれの衣類を脱ぐのを手伝い、嘔吐をふき取り、伊藤氏はその後ベッドでいびきをかきながら寝たという。
深夜2時ごろ伊藤氏はバスルームに行き、戻ってきてから非礼を謝罪し、不合格ですかなどと連呼したので、山口氏は先ほど伊藤氏が寝ていたベッドで休むように促した。
伊藤氏はまだチャンスがあるのであれば、こちらに来てほしい などと言ったので山口氏は伊藤氏のベッドに腰かけ、なだめ、座る位置を変えるなどしているうちに手が触れ、伊藤氏に手を引かれ、ベッドに入り添い寝するような状態になり、伊藤氏が脚を載せるなどして絡みついてきたのでなだめるために性行為を行ったという。この時山口氏は臭いと酔いのため途中で萎えてしまい、伊藤氏が口淫を行い再度挿入したが再び萎え、射精には至らなかったという。
3時ごろには就寝しており、山口氏は伊藤氏が目を覚ましたのには気づいていない。ブラウスはほとんど乾いていていたと思われるが伊藤氏がTシャツを希望したので選ばせた。
その日は普通の会話をして出ていった。
伊藤氏自身の陳述でも部屋を出るときまたねと言われて会釈して出たという。強姦した相手に会釈して出ていく性被害者などいるだろうか。
その後山口氏は一度ホテルに置き忘れてあったポーチについて尋ねるため伊藤氏に電話をしたが、伊藤氏のものではないとのことだった。
【膝のずれと痛み】
伊藤氏はベッド上で無理やり膝をこじあけられ、「膝がひどく痛んだ」として、翌日友人と会うためにレストランまでいき、2階から降りるときに強い痛みを感じてなかなか階段をおりることができなかったといっている。
その翌日整形外科の開いている月曜日4/6に受診し「膝がズレている」と言われたとしている。
しかしホテルを出るときの映像では、ヒールのある靴で足早に大股で歩いていた。普通膝がずれていては、このようには歩けない。
2019/7/8の口頭弁論では5月4日早朝痛みはなく、5月5日に階段で痛みを感じたと証言を変えている。
(裁判官)右膝の痛みを最初に意識したのは
(伊藤)5日に友人と食事するために、2階のレストランへの階段を上り降りしたとき
(裁判官)4日の早朝に痛みは
(伊藤)認識していない
事件直後の受診について時系列でまとめると
4/4 5時ごろ膝をこじあけられ、「膝がひどく痛んだ。」
4/4 5時50分ごろホテル~タクシーへの移動時を含めて早朝に痛みはなかった。
(ホテルを出るときの映像では、ヒールのある靴で足早に大股で歩いていた。)
4/4 午前中アフターピルをもらいにイーク表参道産婦人科へ行く。
4/4 妹らと夜桜見物をして0時前に帰宅し、膝が激しく痛み、歩けないほどになっていた。
4/5 午後友人と会ったレストランは「二階にあり、私は膝が痛くてなかなか下りることができなかった。」
さらにその日、看護師のSの家具選び、買い物につきあっている。
4/6 元谷整形外科を受診して「仕事で変な体勢になったので、昔バスケをやっていたから古傷かもしれません」とあいまいに説明した。
ところが伊藤氏曰く、医師は「強い衝撃を受けて、膝がずれている。手術は大変なことだし、完治まで長い時間がかかる。」と言ったという。
にもかかわらず医師はレントゲンを撮らず、電気治療、シップ。受診はこの一回のみ。
しかし診断名は右膝内障、右膝挫傷。この診断名で医師が上記のような言い方をするというのは考えられない。
友人と薬局でサポーターを選んだ。数か月サポーターで過ごすことになった。もし仮に医師が膝のズレを視認できたのであれば、レントゲンを撮るであろうし、必要なのはシーネか、それに近いハードなサポーターで、薬局というより、医師が確認して適したものを診療所で出すのが一般的であろう。
★カルテは閲覧制限されており、裁判で山口氏の弁護士が、開示請求を行った。カルテでは受傷は、山口と会った数日前の3月31日と書かれていることなどがわかった。カルテと供述が一致しない。
伊藤氏はレイプされたとはいえず、「仕事で変な体勢になったので、昔バスケをやっていたので、古傷かもしれません」と説明したという。
ホテルを出てタクシーにのったのが、5時50分、その30分前にこうしたことが起きたと伊藤氏は主張しているが、山口氏側は性交は夜間2時過ぎごろにあったとし、こうした暴力があったこと自体を否定している。
イーク表参道の産婦人科のカルテでは「coitus(性交)AM2~3時頃、」と書かれているという。これは、山口氏側が主張している時間とほぼ一致している。だが、裁判では、コンドームは破れたのではなく、つけていなかったと双方主張している。カルテには事実に反することが書かれているため、このカルテの信憑性がないとされた。伊藤氏はカルテと異なる部分は「勝手に書かれたのだと思う」、「明け方とだけ言った」としている。(7/8口頭弁論)
これ以外にも伊藤氏がビザの話をしたこと、月経を自主申告していたことなど書かれたカルテがあるが閲覧が制限されている。
医療カルテはそんなにあっちでもこっちでもでたらめに作成されるものではない。医師は必要最小限のことを正確に聞き取って書く訓練を受けている。薬などは有効性を判断しなければならないから、時間などいいかげんなことは書かない。むしろ話されたことを正確に書くので、その時の伊藤氏が話した内容の証拠となる。暴行があったことを隠すために事実を語れなかったとしても、時間を違えて申告することは考えにくいし、伊藤氏にとっても医師にとっても意味がない。
【メールのやり取り】
山口氏と伊藤氏のメールでのやり取りは伊藤氏の書いた「Black Box」という本と、山口氏の「私を訴えた伊藤詩織という独占手記」に「一部」引用されている。
BlackBoxには「これでメールはすべてだ。」と書かれているがこれは明白な嘘である。
かなりのメールのやり取りを省略しており、その中には妊娠不安をたてにして入院したと偽り、医療費、仕事を要求するという恐喝に近いものもある。時系列を確認するとわかるが、妊娠の不安が完全になくなったあとも、訴えており、捜査員に頼まれたからメールを送りつづけたなどと裁判後の会見でいっている。
以下のサイトでは事件前後のメールの全文を公開している。
伊藤氏からの事後一通目は、ビザの対応を問い合わせるビジネスライクなものだった。
「山口さん、お疲れ様です。無事ワシントンへ戻られましたでしょうか? VISAのことについてどのような対応を検討していただいているのか案を教えていただけると幸いです。 伊藤」
性被害者がすぐに警察に駆け込まずに日頃のやり取りを維持しようとすることはありうると、伊藤氏側は主張した。
だが、やりとりの一通目、「お疲れ様」という文言は著書Black Boxでは削除されている。伊藤氏自身この「お疲れ様」という文言はおかしいと考えていた証左である。
その後数日伊藤氏は返事が来ないために、山口氏に騙されたのではないかと疑い始め、友人に話し、警察に行ったことがBlack Boxに書かれている。
「そもそもプロデューサー職に内定していた事実さえなかったのかもしれない、この時初めて気づいた。考えたくもなかった。最初から仕事仲間になるということではなく、どうでもできる「モノ」のように見られていたのではないか。悔しくて、悲しくてたまらなかった。」P70
裁判官は虚偽申告する動機がないとしたが、この文章は虚偽申告の動機として指摘できる。内定していてたといえるのかどうかはやりとりからかなり疑わしいが、本人からすれば希望的観測で内定と思い込み、あてがはずれたので行動を起こした虚偽申告の動機としては当てはまる。この悔しさはそのまま山口氏への仕返しとして準強姦虚偽申告のストーリーを構築したとしても不自然ではない。虚偽申告の文献と照らし合わせても動機として確認できる。
山口氏弁護側の誤りは山口氏がワシントン支局長を解任された時期を伊藤氏翻意の時期と考えたことである。そうではなくもっと早く、4/6のお疲れ様メールの返信がすぐ来なかった時点で悔しくて、悲しくてたまらなかったのである。
この文章は、強姦されたからというより、就職の話が偽りかもしれない、VISAが獲得できないということへのくやしさで書かれている。BlackBoxが創作であるとしても、伊藤氏がこの本に書かれている事実が真実であるという限りはこの文言は裁判上動機として指摘できる。
その後の伊藤氏側のメールの素案は友人が書いたものだという。友人には以前セクハラ訴訟を経験した友人がおり、謝罪を要求することが重要だと考えていた様子で繰り返し謝罪を要求している。怒った友人の介入でメール内容はがらりと変わり、ちぐはぐなやりとりがはじまる。
山口氏は驚いて落ち着かせようとするが、事態は更にこじれたものになってゆく。
山口氏は、伊藤氏からのメールが、事実と異なることに疑問を感じ、メールを返信している。
伊藤氏から罵声を浴びせたことの謝罪メールが山口氏のもとにとどいた。「罵声を浴びた覚えはない」と山口氏は送り返す。
強姦したものと、された側のやりとりとしては、かなり奇妙である。
山口氏は罵声そのものが最初からなかったと書いている。
伊藤氏のメールが語るレイプ・ストーリーでは伊藤氏が山口氏に罵声を浴びせたことになっていたのだ。
この素案は伊藤氏の友人が作ったこといっているから、伊藤氏が語ってきかせた罵声をふくめたストーリーを友人が真に受けてメールを作成したと考えられる。メールには友人の感情が加わった様子があり、第三者を思わせる言葉選びが多い。 伊藤氏本人も言った手前、訂正できずに送ったとすると考えると筋が通る。
5月7日捜査員の勧めで妊娠検査を受けたが、妊娠していないことが判明さたあとも妊娠不安で山口氏を恫喝している。この部分はBlack Boxではカットされている。
伊藤氏は、ビザの話はあまりできなかったと書いているが、山口氏としてはさんざんビザの話はした。これについては、店の女将が聞いている。
実はもう一つ奇妙な事がある。ジャーナリスト同士で、これから仕事を紹介してもらうという相手から、読んできてくれと言われた記事を伊藤氏は読んできていなかった。通常の就職活動ならありえないし、尊敬する相手に政治部としてやれるかどうか聞くとなればなおさらである。
伊藤氏は鮨屋で飲んだ日本酒の酒量は1~2合とし、そのためデートレイプドラッグの可能性を主張しているが、店の証言、山口氏の酒量を差し引いて推測すると少なくとも日本酒はトータル4~5合は飲んでいた。しかも串焼き屋のおかみの証言ではビール2杯、サワー1杯、ワインを数杯を飲んでいるという。伊藤氏はこれも少なく見積もってサワーをいれず、ビール2杯とワインを半分以下の1、2杯としている。ワインなら多く飲めるといってボトルをたのませておいて1~2杯ということないだろう。しかもワインを飲んだこの時はまだ記憶がある時間帯である。
デートレイプドラッグ等証拠もなにもないこの件をふくめて、伊藤氏は山口氏に疑いをかけ、名誉を棄損しつづけている。しかし民事裁判所はそれも含めて「事実をすべて真実」「専ら公益のための」ものとした。異様な判決である。
伊藤氏は著書のなかで、膝のズレを山口の暴行のせいだと主張している。 裁判所は、本訴では証拠不十分としながら、反訴に対する判決では書かれた事実をすべて真実としてしまった。判決自体つじつまがあわない。
なぜ裁判所がこんなことを公然とやってしまうかというと「事実を真実とし、もっぱら公益のため」としないと名誉毀損の違法性を否定できないからだ。
当時の捜査員はデートレイプドラッグに関係なく、それだけアルコールを飲んでいれば、逮捕状を請求する決め手になるとふんで逮捕状をとった。一審裁判でも伊藤氏が強度の酩酊状態にあったことは認められている。
逮捕されなかったことについて、政権との関わりがあったなどとうわさされるが、後の民間人が参加する検察審査会でも不起訴相当という結論が出たところをみると、最初の逮捕の中止も不起訴という判断も妥当だったといえる。
主張の食い違いの何点かは、ホテルのビデオ映像と、カルテの公開であきらかになる。
ところが伊藤氏側は映像はホテルから買い取ったものとし、ホテルとの約束で公開できないという。
そして整形外科や、産婦人科カルテにも閲覧制限をかけていることには説明がつかない。個人情報の部分は隠せばいいだけである。そのほか、裁判資料のかなりの部分に閲覧制限をかけている。
関係者は裁判で映像を見ているので、ホテルマンの証言、タクシー運転手の証言との異同があきらかになっているはずであるが、その点について感想が一致しない。
また山口氏は、伊藤氏を虚偽告訴と名誉毀損で刑事告訴した。捜査されれば、これまで不明確であった事実が、あきらかにされるであろう。
ネット上では決め手とされている「記憶に自信がある方ではない」というホテルドアマンの証言の危うさは、山口氏が、フェイスブックでのべている。ドアマンは客観的という言葉をつかってはいるが、相当主観的な証言をしている。彼の証言はむしろ彼女が意識があり、嘔吐物のためにタクシーでもたついていたこと証明するものである。