国境閉鎖で「帰れない」日系学生に特別便搭乗を許可 政府が方針転換
南米ペルー政府が新型コロナウイルス禍で国境を閉鎖し、日本から現地を訪れていた日系3世の男子大学生が日本政府のチャーター機への搭乗が認められず帰国できずにいた問題で、日本政府は30日までに男子大学生を含む日系人2人について、チャーター機への搭乗を許可した。外務省南米課が西日本新聞の取材に明らかにした。
男子大学生は早稲田大4年の日系ペルー人、ジャンコ・ペレス・ベラスコ・サンチェスさん(24)。5歳から日本で育ち、永住権を持っている。今春から進学する早大大学院の研究でペルーを訪れていたが、コロナ禍で同国政府は緊急事態宣言を出し、16日までに国境を閉鎖した。
当初は、在ペルー日本大使館などから「日本国籍があるか、日本人の家族が同伴していないと、空席があっても乗せられない」と政府チャーター機への搭乗を断られた。ジャンコさんは「このままではいつ帰国できるか分からない」と西日本新聞「あなたの特命取材班」にSOSを寄せ、本紙が窮状を報じていた。
ペルー政府は現地時間26日に緊急事態宣言を延長。27日にも再び日本政府チャーター機への搭乗を断られたが、同日夕方に「国籍を理由に搭乗を断っていた人の、搭乗を許可する」という連絡があったという。
外務省南米課によると「生活基盤が日本にあり、帰国困難となっている日系人2人をチャーター機に乗せた」という。ジャンコさんは現地時間の29日に出国し、メキシコ経由で31日に帰国する見込み。費用は計約3400米ドル(約36万5千円)掛かるという。
ジャンコさんは「帰国のめどが立たず不安だったが、新聞報道のおかげで自分の置かれた状況を知ってもらえた。日本大使館や友人らの助けもあって帰国できることになり、とても感謝している」と話した。
ペルーは世界遺産のマチュピチュなどがある人気の観光地。外務省領事局海外邦人安全課によると、ペルーでは一時、旅行客など約260人の邦人が取り残された。台湾政府や日本政府のチャーター機で計133人が帰国できる見通し。運賃は自己負担という。
NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)によると、国籍を理由に旅先などに取り残された外国人はほかの国にもいるという。移住連の担当者は「日本に生活の拠点がある外国人に対し、国籍が理由で差別されたり、日本に戻れなかったりすることがないよう、政府などへ対応を求めていく」と話した。
同様の事例への対応について、外務省は「状況に応じて判断する」としている。