ホームレスへの10万円給付金、戸籍活用認めず 渋谷区の提案に総務省「住民登録で」
2020年6月18日 14時04分
新型コロナウイルス対策で国民に一律十万円を配る特別定額給付金が、住民登録のないホームレスらは対象外となっている問題で、一部の自治体が総務省に対し、戸籍の活用など住民登録に基づかない支給方法を検討するよう意見したことが分かった。ただ、総務省は本紙の取材に「別の方法は困難」との見解を示し、住民登録を前提とする方針を変えていない。 (天田優里)
この問題を巡り、東京と大阪の十の当事者団体が五月二十日、給付金支給や手続きの緩和を求める要望書を総務省に提出。同省はこれを受け、全国の一部の自治体に手続き上の課題や必要な措置についてメールや電話で意見を求めた。同省はやりとりした自治体の数や具体的な内容は明らかにしていない。
本紙が都内のいくつかの区に取材したところ、渋谷区は当事者団体などから意見を聞いた上で、住民登録に基づかない支給方法が必要と判断。総務省に対し、以前の住所が記録される戸籍の付票の活用を求めたという。
簡易宿泊所が多い山谷地区がある台東区は、区役所に住民票を置けるかとの同省からの質問に「できない」と回答し、「住民票に代わるものを使った全国的なデータベースを構築すれば、ホームレスの人にも支給できるのでは」と代替方法を提案した。
自治体からの提案について、総務省の担当者は取材に「そういう意見も把握しているが、準備の時間と労力がかかる」と話し、二重給付を防ぐためにも住民登録が前提との姿勢を崩していない。
一方、ホームレスの人らが簡易宿泊所やインターネットカフェに一時的に住民票を置くことについて、新宿区は経営者から断られた事例があるとして、こうした施設に総務省から協力を求めるよう、同省に要望した。
都によると、都内のホームレスは昨年八月時点で千三十七人。ホームレス支援に関わる東京大の湯浅誠特任教授は「戸籍を基にした給付は現実的には可能なはずだ。住民票がない人が戸籍の付票で代替できるなら、全国民に漏れなく支給することができるのではないか」と指摘している。
PR情報