朝鮮日報

被害者に対する二次加害や故人を嘲笑…最低限の尊厳・マナーも守られない社会

 こうした現象は、与党の政治家たち当初、被害者女性の立場を全く考慮しないで追悼文を出したのが発端になったとの指摘もある。与党・共に民主党の朴範界(パク・ボムゲ)議員は朴市長が命を絶った理由について、「清い方だから」と、チョ・ヒヨン・ソウル教育監は「ご自身に対して過酷なまでに厳しいあなた」と述べた。

 一方、反対陣営からは、度を越えた朴市長への嘲笑(ちょうしょう)が相次いだ。動画投稿・共有サイト「ユーチューブ」のチャンネル「縦横研究所」の司会者は10日、朴市長が自殺したソウル・北岳山の現場を訪れ、「(自殺の道具が)ネクタイならばエルメスのネクタイをお使いになったのでしょうね」などの発言をして大きな声で笑った。別のユーチューバーは11日、朴市長の焼香所が設けられたソウル広場前で『モンキーマジック』という歌を流して、バナナを手に踊った。

 慶煕大学社会学科のキム・ジュンベク教授は「自分に有利なように敵味方を分ける傾向が故人や被害者への無分別な攻撃となって現れている。一人の死を前にして、韓国社会のゆがんだ二つの顔がそのまま出てしまった」と語った。

 朴市長の死をめぐる政治的対立は、死亡確認当日の朝、ソウル市が「ソウル特別市葬」を行うと発表したことから始まった。「疑惑には目をつむる一方的美化とそれによる二次加害」→「それに対する反発」→「反発に対する反発」という様相を呈し、極端な方向に進んでいったものだ。

 ソウル市の発表直後、青瓦台公式ホームページに寄せられた「朴元淳氏の葬儀を五日間にわたりソウル特別市葬として行うことに反対する」という請願は一日に20万人を超える同意を集め、12日午後10時の時点では55万人超が同意した。

 反対側からは「故・朴元淳ソウル特別市長様の葬儀を手厚く行うよう要求する」という反論請願を掲載した。請願人は「とりわけ性道徳に敏感な大韓民国」「万一、被害者の主張が事実だとしても、彼がソウル市長として成し遂げた業績まで相殺されるのでしょうか? 最期の道まで泥道にしなければならないのでしょうか?」と書いた。この請願にも2万4000人が同意した。

 死を前にしても悪らつになっていく韓国人の自画像は、6・25戦争(朝鮮戦争)の英雄、ペク・ソンヨプ(白善●〈=火へんに華〉)予備役大将死去のニュースでも同様だった。左派性向の「軍人権センター」という団体は12日、声明で「ペク・ソンヨプ氏が行く所は顕忠院(国立墓地)ではなく靖国神社だ」と述べた。

 専門家らは、相手をさげすむことによって自分自身のアイデンティティーを認めてもらおうとする心理に端を発する一種の反社会性だと分析している。檀国大学心理治療学科のイム・ミョンホ教授は「暴力的な方法で故人や被害者を攻撃し、自身の正当性を見いだそうとする心理だ。社会がこれらの反社会的な行動に歯止めをかける必要がある」と語った。成均館大学社会学科のク・ジョンウ教授は「韓国社会が成熟した市民社会として進んでいくには、故人を追悼すると共に、被害者の悔しさを晴らすための真相解明が必ず行われなければならない」と述べた。

イ・ヘイン記者

前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 被害者に対する二次加害や故人を嘲笑…最低限の尊厳・マナーも守られない社会
  • 被害者に対する二次加害や故人を嘲笑…最低限の尊厳・マナーも守られない社会
  • 被害者に対する二次加害や故人を嘲笑…最低限の尊厳・マナーも守られない社会

right

関連ニュース
あわせて読みたい