イナゴの群れが中国に到達! というクソみたいなデマが流れていたので、バッタの進行の見方を解説する
まとめサイトや東スポなどが「サバクトビバッタの大群が中国へ!」というどうしようもないデマを流していて、えぇ…マジかよ…と頭を抱えたバッタウォッチャーの中の人ですこんばんは。
いや、冗談抜きに、人知れずもう10年くらい毎年春の時期になるとサバクトビバッタの発生をウォッチしてますからね。
え、何でそんなヒマなことしてるのかって?
たまにエジプトにバッタが襲来するからです。
さて、最初に言っておきますが
サバクトビバッタの群れはイラン高原とヒマラヤを越えられません。
これは毎年見てれば判ります。過去履歴も追えます。なので中国にはそもそも到達できません!
そして
中国・日本で発生する「蝗害」はトノサマバッタで、サバクトビバッタではありません。
もし中国で蝗害が発生するならトノサマバッタです。
デマを流した人も引っかかった人も、地図見てないし過去事例も見てないんだよなあ。
本当のところはどうなのか調べられるのはここです。FAO(国連食糧農業機構)のサイト。
http://www.fao.org/ag/locusts/en/info/info/index.html

週ごとに群れの発生や各国の対処状況などを追ってくれている。なんで食料農業機構がバッタの群れをモニタリングしているかっていうと、大規模な群れが発生して農作物を食いつくすと、即・飢饉が発生するからです。冗談じゃなく大げさでもなく、人の命がかかってます。
ここに中国なんて出てきますか? かすりもしませんね。
さらに今までのバッタの動きを月ごとに追えるアーカイブもあります。なんと1978年分からあるぞ。
http://www.fao.org/ag/locusts/en/archives/archive/index.html
ここを見ると、そもそもパキスタン・インドで発生している群れと、エチオピアやソマリアなど東アフリカで発生している群れは別と分かります。つまり「東アフリカのバッタの群れがインド・パキスタンに到達」という情報を流していた人たちも、適当にモノ言ってるだけのデマですね。実際の動きは逆。ソースあるんだからちゃんと見て!


ちなみに今週の状況はこんな感じ。パキスタンからペルシャ湾を渡ったものの行き先もなくもう一回折り返しで海を渡り、イラン南西部に到達、しかし高地を越えられないためイラン高原でブロックされてそこで停滞、という状況。

バッタは高い山は越えられないんですよ。寒いし、飛ぶとき風に乗って移動するのは出来ても高度上げるのには向いてない。そして寒いと繁殖できないので、たとえ偶然越えられたとしても1世代以内、数カ月もあれば全滅します。
もっと具体的に言うと、気温が22度以上ないと飛翔出来ないという研究があります。つまり夏の日中帯でもこれ以下の温度の山岳地帯に突入すると、身動きとれなくて詰むってこと。飛べないバッタなど他の小動物の餌。

https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-15K18808/15K18808seika.pdf
なので途中に山地があると、ブロックされてその先行かないです。エチオピア高地の標高が高い部分を避けて移動したりするのでウォッチしてると動き面白いですよ。逆に「サバクトビバッタ」の名前のとおり砂漠はがんがん踏破するので、アフリカの西端にあるモーリタニアで発生した群れは、あっというまにサハラ横断してエジプトも通り越してイスラエルまで行ったりします…。
というわけで、サバクトビバッタのウォッチ方法はもう分かったかと思います。これで二度とデマには引っかからないよね!
あと私、何年もずっとエジプトで起きる蝗害のパターンをウォッチしてるんですけど、古代エジプトの時代にどの程度の頻度でサバクトビバッタが発生してたのかっていう疑問がいまだに解決する糸口すらないんですよ。誰か3000年以上前のバッタの動きをウォッチできる方法を考えてくれませんかね…。それか古代と現代の気候の違いでバッタ禍が起きる確率が上下するかどうか…。
****
ちなみに、今、東アフリカで起きているバッタの大発生については、バッタ博士の解説とか分かりやすいです。
https://forbesjapan.com/articles/detail/32395
****
「あれ? じゃあ中国で撮影されたと思しき動画ってなんなの?」とか言いだす人がいるかもしれないので追記しておくけど、中国は、トノサマバッタの蝗害は頻繁に発生します。
つまりそれ、今年の動画じゃないし、写っているのはサバクトビバッタではない。真冬にバッタが湧くわけないでしょ! トノサマバッタだよ? あのトノサマバッタだよ?? 見たことあるよね。成虫になるのって夏前だよね?
また頻繁に蝗害が発生するがゆえに対策も色々講じていて、「バッタ食わせるためにニワトリ(アヒル)を放てばいいじゃない」とかも昔からやってる話。youtubeとかで探すと動画落ちてます…
こんなんとか
https://www.youtube.com/watch?v=ev6pO8dR0_E


中国に侵入したバッタの撃退にアヒル軍を投入! とか、パキスタンのバッタ軍にアヒルを投入! とかは、フェイクニュース。
ただし 中国で過去に発生したトノサマバッタの被害 に対して家禽が投入されたことがあるのは、事実。
多分これ、部分的に事実な話に尾ひれがつきまくって推測で伝言ゲームしてるうちにおかしくなっちゃった話だと思う…。
最後に、動画に出てくるバッタがサバクトビバッタかトノサマバッタか見分けるための目安画像置いときます。
群れになると色が変わって黒くなり、飛翔力などが上昇するのがこれら蝗害を起こすバッタ。ゲームでよくある同じデザインなのに色違いになるといきなり強くなるモンスターと一緒。緑色の時はノーマルモード。黒くなったらLv.80くらい(ただし氷属性に弱い)。
サバクトビバッタの幼虫は黄色と黒の毒カラー。あとトノサマバッタのほうがくすんだ色合いで、模様も違うのでこれで見分けて!

*****
追加分
イナゴの群れは夏には中国に到達! というクソみたいなデマが流されるので、もう少しバッタについて説明する
https://55096962.at.webry.info/202003/article_7.html
・バッタ騒ぎはコロナウィルスと同時に発生したわけではなく、もっと前から発生しています。
単にニュースになってなかっただけ。
・たとえ夏であっても数が増えても、バッタは中国には行きません。
バッタの動きを見ずにデマを流すなと。
大量発生したサバクトビバッタがコンテナに紛れ込んで中国に! というデマが流されるので、バッタの繁殖特性について説明する
https://55096962.at.webry.info/202005/article_30.html
・この種のバッタは、群れではなくなると群生相から孤独相(ノーマルな緑色のバッタ)に戻ります。ノーマルモードのバッタはそのへんにいるバッタと変わらないです。つまり少数が荷物に紛れ込む可能性は、どのルートだろうと無視して構いません。
・そもそも相手はただのバッタなんで…。ヒアリと違って噛むとか無いんで…。
いや、冗談抜きに、人知れずもう10年くらい毎年春の時期になるとサバクトビバッタの発生をウォッチしてますからね。
え、何でそんなヒマなことしてるのかって?
たまにエジプトにバッタが襲来するからです。
さて、最初に言っておきますが
サバクトビバッタの群れはイラン高原とヒマラヤを越えられません。
これは毎年見てれば判ります。過去履歴も追えます。なので中国にはそもそも到達できません!
そして
中国・日本で発生する「蝗害」はトノサマバッタで、サバクトビバッタではありません。
もし中国で蝗害が発生するならトノサマバッタです。
デマを流した人も引っかかった人も、地図見てないし過去事例も見てないんだよなあ。
本当のところはどうなのか調べられるのはここです。FAO(国連食糧農業機構)のサイト。
http://www.fao.org/ag/locusts/en/info/info/index.html
週ごとに群れの発生や各国の対処状況などを追ってくれている。なんで食料農業機構がバッタの群れをモニタリングしているかっていうと、大規模な群れが発生して農作物を食いつくすと、即・飢饉が発生するからです。冗談じゃなく大げさでもなく、人の命がかかってます。
ここに中国なんて出てきますか? かすりもしませんね。
さらに今までのバッタの動きを月ごとに追えるアーカイブもあります。なんと1978年分からあるぞ。
http://www.fao.org/ag/locusts/en/archives/archive/index.html
ここを見ると、そもそもパキスタン・インドで発生している群れと、エチオピアやソマリアなど東アフリカで発生している群れは別と分かります。つまり「東アフリカのバッタの群れがインド・パキスタンに到達」という情報を流していた人たちも、適当にモノ言ってるだけのデマですね。実際の動きは逆。ソースあるんだからちゃんと見て!
ちなみに今週の状況はこんな感じ。パキスタンからペルシャ湾を渡ったものの行き先もなくもう一回折り返しで海を渡り、イラン南西部に到達、しかし高地を越えられないためイラン高原でブロックされてそこで停滞、という状況。
バッタは高い山は越えられないんですよ。寒いし、飛ぶとき風に乗って移動するのは出来ても高度上げるのには向いてない。そして寒いと繁殖できないので、たとえ偶然越えられたとしても1世代以内、数カ月もあれば全滅します。
もっと具体的に言うと、気温が22度以上ないと飛翔出来ないという研究があります。つまり夏の日中帯でもこれ以下の温度の山岳地帯に突入すると、身動きとれなくて詰むってこと。飛べないバッタなど他の小動物の餌。
https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-15K18808/15K18808seika.pdf
なので途中に山地があると、ブロックされてその先行かないです。エチオピア高地の標高が高い部分を避けて移動したりするのでウォッチしてると動き面白いですよ。逆に「サバクトビバッタ」の名前のとおり砂漠はがんがん踏破するので、アフリカの西端にあるモーリタニアで発生した群れは、あっというまにサハラ横断してエジプトも通り越してイスラエルまで行ったりします…。
というわけで、サバクトビバッタのウォッチ方法はもう分かったかと思います。これで二度とデマには引っかからないよね!
あと私、何年もずっとエジプトで起きる蝗害のパターンをウォッチしてるんですけど、古代エジプトの時代にどの程度の頻度でサバクトビバッタが発生してたのかっていう疑問がいまだに解決する糸口すらないんですよ。誰か3000年以上前のバッタの動きをウォッチできる方法を考えてくれませんかね…。それか古代と現代の気候の違いでバッタ禍が起きる確率が上下するかどうか…。
****
ちなみに、今、東アフリカで起きているバッタの大発生については、バッタ博士の解説とか分かりやすいです。
https://forbesjapan.com/articles/detail/32395
****
「あれ? じゃあ中国で撮影されたと思しき動画ってなんなの?」とか言いだす人がいるかもしれないので追記しておくけど、中国は、トノサマバッタの蝗害は頻繁に発生します。
つまりそれ、今年の動画じゃないし、写っているのはサバクトビバッタではない。真冬にバッタが湧くわけないでしょ! トノサマバッタだよ? あのトノサマバッタだよ?? 見たことあるよね。成虫になるのって夏前だよね?
また頻繁に蝗害が発生するがゆえに対策も色々講じていて、「バッタ食わせるためにニワトリ(アヒル)を放てばいいじゃない」とかも昔からやってる話。youtubeとかで探すと動画落ちてます…
こんなんとか
https://www.youtube.com/watch?v=ev6pO8dR0_E
中国に侵入したバッタの撃退にアヒル軍を投入! とか、パキスタンのバッタ軍にアヒルを投入! とかは、フェイクニュース。
ただし 中国で過去に発生したトノサマバッタの被害 に対して家禽が投入されたことがあるのは、事実。
多分これ、部分的に事実な話に尾ひれがつきまくって推測で伝言ゲームしてるうちにおかしくなっちゃった話だと思う…。
最後に、動画に出てくるバッタがサバクトビバッタかトノサマバッタか見分けるための目安画像置いときます。
群れになると色が変わって黒くなり、飛翔力などが上昇するのがこれら蝗害を起こすバッタ。ゲームでよくある同じデザインなのに色違いになるといきなり強くなるモンスターと一緒。緑色の時はノーマルモード。黒くなったらLv.80くらい(ただし氷属性に弱い)。
サバクトビバッタの幼虫は黄色と黒の毒カラー。あとトノサマバッタのほうがくすんだ色合いで、模様も違うのでこれで見分けて!
*****
追加分
イナゴの群れは夏には中国に到達! というクソみたいなデマが流されるので、もう少しバッタについて説明する
https://55096962.at.webry.info/202003/article_7.html
・バッタ騒ぎはコロナウィルスと同時に発生したわけではなく、もっと前から発生しています。
単にニュースになってなかっただけ。
・たとえ夏であっても数が増えても、バッタは中国には行きません。
バッタの動きを見ずにデマを流すなと。
大量発生したサバクトビバッタがコンテナに紛れ込んで中国に! というデマが流されるので、バッタの繁殖特性について説明する
https://55096962.at.webry.info/202005/article_30.html
・この種のバッタは、群れではなくなると群生相から孤独相(ノーマルな緑色のバッタ)に戻ります。ノーマルモードのバッタはそのへんにいるバッタと変わらないです。つまり少数が荷物に紛れ込む可能性は、どのルートだろうと無視して構いません。
・そもそも相手はただのバッタなんで…。ヒアリと違って噛むとか無いんで…。