今年は浜田省吾のデビュー40周年、記念すべき年だ。僕が敬愛するシンガーソングライターの歴史は、1976年4月21日発売のデビューシングル「路地裏の少年」から始まった。
僕と浜田省吾との出会いは、1979年発売の7枚目のシングル「風を感じて」。日清カップヌードルのテレビコマーシャルから流れてくるこの曲で、僕は彼のファンになる。でも、高校生の時は洋楽に夢中だったからか、本格的に聴き始めたのは結構遅くて大学生になってから。車で遊び始めたこの頃、9枚目のアルバム「DOWN BY THE MAINSTREET」(1984年10月21日発売)をほぼ毎日のように聴いていた。そう、1984年と1985年の僕は、過去のアルバムに遡り、まるで、浜田省吾を聴かずに過ごした高校時代の3年間を取り戻すかのように、夢中になって聴きまくっていた。
浜田省吾の10枚目のアルバム「J.BOY」が発売されたのは1986年9月4日。僕が神アルバムと呼んでいるこの2枚組のアルバムで、僕は彼のデビュー曲「路地裏の少年」と改めて向き合うことになる。「J.BOY」に改めて収録された「路地裏の少年」はいわゆるフルヴァージョン。デビュー当時のシングルレコードでは容量の関係で収録できなかった3番の歌詞をほぼ当時のままに、そして新たなアレンジで歌われていて、8分を超える大曲として仕上がっている。
もちろん、デビューシングルヴァージョンの「路地裏の少年」も好きだったけど、このフルヴァージョンの「路地裏の少年」は別物と言っていいくらい素晴らしく、発売から40年経った今聴いてもまったく色褪せない。浜田省吾の曲で大好きな曲は沢山あるけど、何が一番好きかと聞かれれば、僕は未だにこのフルヴァージョンの「路地裏の少年」と迷わず答える。
ある少年が、16歳で家出をし、18歳でアルバイトに疲れながらも、いつかはこの国目を覚ますと仲間と夢を描き、裏切られ、21歳で恋に落ちて戸惑い(デビューシングルヴァージョンはこの21歳が省略されている)、22歳で挫折して行き止まりの路地裏に立ち尽くすまでを彼は自叙伝的に歌い上げる。少年が夢を描き、その夢と現実とのギャップに挫折し、もがき葛藤する様が実に見事に表現されていて、この曲がデビュー曲であること、しかも23歳の時に書き上げたという事実から、浜田省吾のシンガーソングライターとしての実力が如何に高いかを証明するに相応しい曲だと僕は思う。
強いメッセージを伴うロックとラブ・バラード、社会の矛盾への怒りや切ない恋心をストレートに表現させたら右に出るものがいない偉大なシンガーソングライター浜田省吾は、今年の12月29日で64歳。彼は今も路地裏の少年のままだろうか。僕は今も路地裏の少年のままだ。未だに夢を描き、挫折し、もがいている。困ったもんだけど、悪くないかもしれない。
カタリベ注:
エンベッドした動画は、1988年の「A PLACE IN THE SUN」での「路地裏の少年(フルバージョン)」と、今年公開された「路地裏の少年40周年記念ヒストリームービー(デビューシングルヴァージョン)」です。どちらもアレンジは、アルバム「J.BOY」ヴァージョンです。
2016.10.27
YouTube / SHOGO HAMADA Official YouTube Channel
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