どこを切り取っても、いや切り取らずとも最低最悪の珍アニメである。コメディアニメとして見れば良くできているが、これを災害、SF、群像ドラマ……なんでもいい。とにかく人に何かしら感動を与える作品として世に送り出しているとしたら、この作品の製作陣は頭のネジが数百本レベルで飛んでいるか、ラリッているとしか言いようがない。
主人公の歩が競技場で陸上のトレーニング中に大地震に見舞われる場面から物語はスタートする。日本沈没2020はここから既にダメである。
地震が原因で彼女やコーチを初めとする一行は屋外に避難することになるのだが、ここでコーチが出す指示は「では、各自更衣室で着替えてから、競技場の外に集合」である。大規模地震が発生した場合、とりあえず退避が基本で、屋内の更衣室に行かせるなど話にならん指示だ。3.11以前から避難の基本は、そうなっているはずである。「あー、余震で人が死ぬだろうなー」と思っていると案の定、大きな余震が発生し、歩のチームメイトは全員圧死。当たり前である。当たり前過ぎて「そりゃ死ぬよね」と。
次に歩は、バンバン倒壊する建物を潜り抜け自宅まで"走って"帰り、崩壊した自宅を目の当たりに愕然としつつもなんとか家族と再会、自己中をデフォルメしたような言動を取る性悪モブキャラクターを尻目に独自避難を開始する。
父親の驚くほど豊富なサバイバル知識と、薬でもキメてるんじゃないかと思うほどの母親のポジティブシンキングをもって一家で危機を乗り越えていくのか?と思った矢先、地震のショックで食欲がない歩のためにと、彼女の好物である山芋を掘っていた父親が不発弾の信管を"スコップ"でカチリとクリック。「嘘だろ?」という言葉と共に盛大に爆死する。降り注ぐ親父の躰。あまりに唐突。もはや大爆笑である。不発弾埋没地区という設定といえども地雷原ではないのだから、たまたま不発弾を掘り当てるとは、どれだけ運が悪いんだと。せめてここは無言で逝って欲しいところだ。
残酷描写で観客にインパクトを与える手法をショックバリューと言うのだが、あまりに唐突かつ不自然にやりすぎると"ただの面白おかしい場面"になる。「おお、手足がぶっ飛んでら!あっはっは!」みたいな。だからシリアスな場面にするためには、前後のセリフやタイミングがとても重要。しかし、この場面から分かるのは、製作者が全くショックバリューを理解していないということだ。残酷に殺せば災害の悲惨さが伝わると勘違いをしているのだ。そのおかげで、これ以降のあらゆるキャラクターの拷問ポルノ的残虐性すら感じる死亡シーンには失笑するしかない。
作品はこんな調子で歩に関わった人間を次々と不自然かつ面白おかしく無残に殺していく。歩はニコニコと死を振りまきながら活路を見出していくのだ。絶対絶命の危機が訪れようと周囲の人が悲惨な死を迎えようと、彼女は絶対に死なないし絶望もしない。ピンチに陥ると必ず誰かが身を挺して助けてくれるし、たとえ落ち込んでいても次の惨死イベントが起こるとケロっと前の出来事を忘れてしまう。多くの災害映画において、度重なる危機と死は人の精神を崩壊へと追いやる。追い込まれていく人々の生き様。それが災害映画の最大の見所のはずだ。しかし歩の精神は何があっても健やかだ。それはそれで崩壊直前の作画同様、力強くて良いことだが、そんな高校生などいるワケがないだろと。さて、そうなると、この映画の描きたいことは何なのだろう?と考え込んでしまう。
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2020/07/13 20:24
更衣室のロッカーで踏み潰されたチームメイトを置き去りにして、さっさと家族の元に走り出すヒロインのJCで、嫌な予感がしてましたが…。
女子陸上チームを壊滅された女性コーチ。終盤でさらっと脱出船にスポーツ特待枠で旦那と一緒に乗り込もうとしてました。それで、チーム唯一の生き残りの主人公と再会して「元気だけが取り柄なのー!」と嬉しそうに笑っていて愕然としました。
サイコパスが書いたシナリオなのかと??
2020/07/13 20:35
コメントありがとうございます!あの選別シーンそのものも問題なのですが、あのコーチの立ち振る舞いはちょっとおかしいです。そもそも、彼女があんな指示を出さなければ、チームメイトは死ななかったわけで、その責任も感じず「貴方は選別枠なのよー」とかないです・・・。
2020/7/13 更新
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