私が暮らすロンドンのマンションの斜め上は、欧州最大規模を誇るヒースロー空港の着陸コースにあたっている。窓から見上げると、旅客機が数分おきに空を横切る――。その風景が3月、一変した。以来、空は静まりかえっている。
新型コロナウイルスの感染拡大は、人の流れを止めた。国境が閉ざされ、減便や運航停止が相次いだ。欧州では、首都間の往来が日常化していただけに、変化も際立った。
それから3カ月近く経った6月初め、ロンドンとローマを航空機で往復する機会があった。感染は多くの国でピークを越えていたものの、まだ国際的な人の流れが十分回復していない時期だけに、通常の移動とはいくつかの点で異なっていた。今後空港を利用する人にも参考になればと思い、その模様を報告したい。
感染者の流入を恐れ、3月以降入国を厳しく制限してきた欧州各国は、6月初めごろから徐々に国境を開き始めた。閉鎖による経済への影響が深刻になったためだ。中でもイタリアは、大打撃を受けた観光業の復興を目指して、英国を含む欧州各国からの入国を6月3日に解禁。入国者に課す2週間の自主隔離も撤廃した。
私は取材と会合のため、かねて予定していたローマ出張を実行に移そうと考えた。英国は逆に、新たな入国制限を8日から導入すると決めており、その前に戻ってくるのが望ましかった。
6月1日に航空券を手配。しかし、1日20便以上あったローマ直行便はコロナ禍で2便に減っており、予約は6月中旬まで埋まっていた。待ちわびていた人々が殺到したのだろう。通常なら他国の経由便を手配するところだが、今回はイタリア以外に入国できない。キャンセル待ちをかけたものの、翌日も反応がない。
半ば諦めていたら、3日になっ…
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