トランプ大統領の態度が一変
アメリカで、新型コロナウイルスの1日の新規感染者が7万人にせまる中、マスクを巡って分断が深まっている。
これまで公の場でのマスク着用を頑なに拒否してきたトランプ大統領が態度を一変、11日、公の場で初めてマスクを着用して報道陣の前に姿を見せた。
そもそも、マスク着用を拒んでいたのは、弱いリーダーと見られたくないという思惑や、「個人の自由」を理由にマスク着用に反対する保守層が自身の支持層と重なった事などが理由とみられる。
マスク着用は「反トランプ」、マスク着用なしは「親トランプ」

一方、大統領選の対抗馬となることが確実なライバル、民主党のバイデン前副大統領はマスクにサングラスの「完全防備」でイベントに出席。トランプ大統領とは正反対の対応をとり、マスクを着用しないトランプ氏を徹底的に批判している。アメリカではマスク着用が政治問題化しマスクを着ければ「反トランプ」で、マスク着けなければ「親トランプ」という不毛な対立を生んでいる。
マスクを着用するよう注意された男性が逆切れする動画がツイッターで拡散し話題となったり、オハイオ州でマスク着用の義務化に抗議するデモが行われるなど対立が広がり、分断が深まっているのだ。


7月4日の独立記念日の花火大会では、当局が会場周辺でマスク30万枚を配り、着用を求めた。取材してみると「親トランプ」と「反トランプ」でマスク着用に対する受け止めが大きく違っていて驚かされた。
ウェストバージニア州から訪れたトランプ大統領の支持者は「マスク着用は効果があるか分からない」とマスク着用には否定的な考えを示したのに対し、フロリダ州から訪れていたトランプ反対派は「マスクを着けてソーシャルディスタンスを徹底しています」とマスク着用の重要性を強調していた。
方針転換をした2つの大きな理由
トランプ大統領がここに来てマスク着用に踏み切ったのには、大きく二つの理由がある。
1つは新型コロナウイルスの対応を巡って批判が強まり、支持率が低迷したため、方針転換をせざるを得なくなった。ABCテレビの世論調査ではトランプ大統領の新型コロナウイルス対策を「支持しない」と答えた人が67%に上り、3カ月間で最高値となった。

さらに、2つ目の理由は感染リスクを減らすにはマスクの着用が不可欠だとの認識がアメリカ人に浸透してきたことが挙げられる。このため、大統領としてもマスク着用に理解を示す必要が出てきた。アメリカでは経済再開を推し進めたテキサス州やネバダ州で感染者が急増。各地で感染拡大が相次ぎ、マスク着用を義務化する州が増えている。モンタナ州とサウスダコタ州、アイオワ州、ウィスコンシン州の4州以外の州は、州全土かもしくは、一部の地域でマスクの着用を義務付けている。

また、7月15日からは全米のスターバックスでお客と店員、両方にマスク着用を義務化する方針が発表された。マスクを着用する習慣のなかったアメリカ人も、マスク着用が基本になりつつありる。
こうした中、6月末には米金融大手のゴールドマンサックスが全米でマスクの着用を義務付けた場合、GDP=国内総生産の落ち込みを5%軽減できるとの試算を示すなど、マスク着用による経済効果が注目されている。
マスク嫌いのトランプ大統領だが、低迷する「支持率」と「経済」を回復させるためには「マスク」は軽視できない問題となっている。
【執筆:FNNワシントン支局長 ダッチャー・藤田水美】