036
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フランは深淵を彷徨っているうちに目を覚ました。
頭がずきずき痛む。
「くっっ……っ」
彼を救った家臣が跪いた。
「殿下!」
「メルト……?」
補佐で家臣のメルトを見た瞬間、自分がこの場所で目を覚ました理由がわかった気がした。
「フラン家の宝具を使ったのですか?」
「殿下を救うためには仕方ありませんでした。どんな罰でもお受けします!」
古代の宝具。
それはフラン家が1000年かけて生み出してきたマナの陣が宿るアイテムだった。
強力なマナが宿っているもので、宝具によって違う特性を持っていた。
「では……。その宝具は破壊されてしまいましたね」
「はい……。申し訳ございません!」
「まあいいです。あなたに罪はありません。相手のことをきちんと把握できていなかった自分のせい……。それより、我が軍は!」
「申し訳ありません……。いつお目覚めになられるかわからなかったので、戦場にいるわけにはいきませんでした。今ここは、ナルヤの国境沿いにあるロエン領地です」
ロエン。
侵略のために今回初めて駐屯した領地。
そこからルナン王国北部の領地を順番に占領していった。
「……」
フランは歯を食いしばった。
自分もやられた。
そんな人物に総大将のいない兵力が持ちこたえるのは無理だ。
「全軍に退却を命じます! 一目散に退却すべきです。すぐにでも兵士を送ってください。 ひとりでも兵士を救わなければ……」
「かしこまりました、殿下!」
完全なる敗北だった。
すべてにおいて負けてしまった。
フランはぶるぶる体を震わせた。
エイントリアン・エルヒン。
あんな存在がルナン王国にいたなんて。
私の戦略だけでなく、マナの陣まで撃破する人物が!
「今度は……。次があるなら必ず……」
ガンッ !
そのように言いながらフランは壁に頭を打ちつけた。