世にも奇妙な物語 ‘20 「しみ」広瀬アリス・「3つの願い」伊藤英明・「燃えない親父」杏・「配信者」白洲迅… New!


出典:『土曜プレミアム・世にも奇妙な物語‘20夏の特別編【ストーリーテラー:タモリ】』の番組情報(EPGから引用)


2020/07/11(土) 21:00:00 ~ 2020/07/11(土) 23:10:00
土曜プレミアム・世にも奇妙な物語‘20夏の特別編【ストーリーテラー:タモリ】[字]

30周年突入!今宵“奇妙な世界”へみなさまをいざないます…▽「しみ」広瀬アリス▽「3つの願い」伊藤英明▽「燃えない親父」杏▽「配信者」白洲迅

番組内容
珠玉の短編ドラマをオムニバス形式でお送りする『世にも奇妙な物語』は、毎回、斬新で多様なラインアップをとりそろえ、おなじみのストーリーテラー・タモリと豪華キャストが“奇妙な世界”へといざなう人気シリーズ。
今回の『世にも奇妙な物語’20夏の特別編』は4本のストーリーで構成される。
「しみ」クリーニング店で働く三浦あずさ(広瀬アリス)は、ある日謎の女が店に持ち込んだ、しみのついたシャツをきっかけに、
番組内容2
とある事件に巻き込まれていく。
「3つの願い」最愛の美しい妻が誘拐されてしまうが、それは伊藤英明演じる謎の男が、むかし手にした不思議なランプと関係があった…。
「燃えない親父」杏と松下洸平演じる姉弟は、父親が亡くなり、家族と火葬場で父親の遺体が燃えるのを待っている。ところが何度火葬を試みても遺体が燃えない。果たしてどんな謎が隠されているのか?
番組内容3
「配信者」テレビ局でADとして働く赤城良太(白洲迅)は、時々息抜きにネットで生配信を行っている。そこに1通の“バズるネタ教えてあげようか”というコメントとともに、とあるURLが届く…。
出演者
【ストーリーテラー】
タモリ 

【しみ】
広瀬アリス、宮川一朗太、山口香緒里 ほか 

【3つの願い】
伊藤英明、松角洋平、沢井美優、滝藤賢一 ほか 

【燃えない親父】
杏、松下洸平、森矢カンナ、山本道子、山田明郷 ほか 

【配信者】
白洲迅 ほか
スタッフ
【編成企画】
渡辺恒也、狩野雄太 

【プロデューサー】
小林宙、中村亮太 

【演出】
植田泰史、河野圭太、淵上正人 

【制作】
フジテレビジョン 

【制作著作】
共同テレビジョン


『土曜プレミアム・世にも奇妙な物語‘20夏の特別編【ストーリーテラー:タモリ】』のテキストマイニング結果(ワードクラウド&キーワード出現数ベスト20)

世にも奇妙な物語 ‘20 「しみ」広瀬アリス・「3つの願い」伊
  1. 若林
  2. 山口
  3. 貴美子
  4. 光一
  5. お父さん
  6. 春香
  7. 野島
  8. ジャスミン
  9. 悦子
  10. 佐藤
  11. ランプ
  12. 魔人
  13. ハァ
  14. 親父
  15. 駄目
  16. お願い
  17. 五郎
  18. 康子
  19. 足音
  20. ホント


『土曜プレミアム・世にも奇妙な物語‘20夏の特別編【ストーリーテラー:タモリ】』の解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)


解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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(あずさ)
この染み 何とかしなきゃ。

(若林)いでよ ランプの魔人。

(魔人)あなたの願いを
3つ かなえましょう。

(鬼瓦)お父さまが!
(春香)どうしたんですか?

(鬼瓦)燃えません。
(一同)はっ?

(良太)許して…。

(ストーリーテラー)皆さん こんばんは。

皆さんは
思ったことはありませんか?

あの失敗さえなければとか。

あるいは あのとき
別の選択をしていればとか。

人生には 後悔が尽きません。

あっち!

そんなとき
タイムマシンに乗って

もし 過去に
戻ることができたとしたら。

タイムトラベルには 親殺しのパラドックス
という問題があります。

タイムマシンに乗って
過去の世界へ行き

子供を持つ前の
自分の親を殺したら どうなるか。

自分は 生まれることなく

この世に
存在しなかったことになる。

存在しなければ
タイムマシンに乗って

過去に行くこともできず
親も殺すことはできません。

…というパラドックス
矛盾が生じます。

こよい 奇妙な世界へ迷い込んだ
4人の主人公。

もし 過去を変えることが
できたとしたら

彼らは
奇妙な世界に迷い込むことは

なかったのでしょうか。

(あずさ)よし。
(五郎)どうだ?

(あずさ)できたよ。 はい。

(五郎)おっ。
奇麗に仕上がってるな。

職業柄 よれた服じゃ
まずいでしょ?

(五郎)まあな。

(五郎)しかし まだ信じられんよ。
矢田部が死ぬなんて。

急だったんでしょ?

(五郎)前の日まで
ピンピンしてたからな。

人生 一寸先は分からないよ。

(康子)ほらあなた もう行かなきゃ。
(五郎)ああ。

じゃあ 悪いな。
ここのところ 任せてばっかりで。

(あずさ)ううん。
(康子)あずさ ごめんね。

(あずさ)いってらっしゃい。
(五郎)うん。

ハァ…。

よいしょ。

痛っ…。

≪(チャイム)
(あずさ)はーい。

いらっしゃいませ。

(女性)いいお天気ですね。

(あずさ)そうですね。
そちら クリーニングですか?

ここに チョコレートの染みが
付いてしまったんです。

(女性)落とせますか?
(あずさ)失礼します。

うん。 これくらいなら たぶん
奇麗に落とせると思いますよ。

♬~

♬~

う~ん… 変化なし。

ホントに これ チョコレートか?

お客さんは そう言ってたけど…。

(あずさ)何か 昨日より
染みが大きくなってるみたい。

(康子)えっ!?
(五郎)気のせいだろう。

(あずさ)うーん… そうかな?

とにかく うちで
落とせないんだから仕方ないわよ。

お客さんに連絡して。
(あずさ)うん。

あーあ 「しみ抜き達人がいる店」を
名乗ってるのにさ。

(五郎)達人でも
落とせないもんは 落とせないの。

(あずさ)はーい。

☎(呼び出し音)

☎(アナウンス)
おかけになった電話番号は…。

うん?

(あずさ)お父さん。
(五郎)うん?

ちょっと にじんじゃってるけどさ
この人 知ってる?

いや。
(あずさ)そう。

(康子)こんなことになるんなら

1人で 店番なんて
させるんじゃなかった。

やめろよ。

いまさら そんなこと言っても
しょうがないだろ。

あっ… あずさ。

ねえ 私の携帯 知らない?

(康子)お店の方なんじゃないの?
(あずさ)あっ そっか。

(あずさ)あった。

誰?

♬~

♬~

何これ?

何か分かる?

(五郎)真面目にやってきたのに

何で こんな仕打ちを
受けなきゃいけないんだ。

くそ…。

たちの悪い いたずらね。
(あずさ)いたずらなの!?

どうして こんな…。
ねえ。

知らないよ。 俺だって。

あなた。

あっ… あのシャツ…。

(女性)今日も いいお天気ですね。

(あずさ)ただいま。
≪(五郎の叫び声)

お父さん!?

お父さん?

お父さん 大丈夫!?

うわぁ!?

(康子)お父さん!?

お父さん! お父さん!

(うめき声)
(康子)お父さん 分かる?

こ… この…

この染みさえ…
消えてくれれば…。

(あずさ)お父さん!
お父さん しっかりして!

救急車… 救急車 呼ばなきゃ!
(あずさ)お父さん!

お父さん… どうして…。

お母さん。

お父さんの最期の言葉の意味
何か分かる?

お父さんと お母さん
私に何か隠してたんじゃないの?

誰にも言えなかった
秘密があるの。

秘密?

この前 亡くなった
お父さんの友達…。

矢田部さん?

矢田部さんと お父さんには

七峰さんっていう
共通の知り合いがいてね。

その七峰さん
もともと被害妄想や

人への執着が激しい人だったのか

よく分からない話を
繰り返してたの。

その人が オカルトじみた
趣味にのめり込んだとき

お父さんは 縁を切った。

ある晩 矢田部さんが
突然 店に駆け込んできたの。

血だらけだった。

矢田部さんは 七峰さんと
口論になって襲われて

身を守るために
殺してしまったって。

そのとき お父さんが
矢田部さんに言ったの。

その血の痕を全部消して
何もなかったことにしようって。

矢田部さんが着ていた服から
血の痕を一つ残らず…。

殺人を隠す手伝いをしたの?

お父さんは 親友の矢田部さんを
見捨てられなかったのよ。

そんな…。

今まで どうして黙って…。
(康子)言えるわけないでしょ。

お父さんも 私も
ずっと苦しんできた。

これで よかったのかって。

信じられない。

(康子)あずさ…。

お父さん。

どうして そんなことしたの?

いったい 何が起きてるの?

えっ?

(悲鳴)

(あずさ)お母さん!

ここも おかしいの!
すぐに出ないと。

お母さん?

えっ?

あずさ。

私は ずっと そばにいる。

1人にしないわ。

嫌…。 お母さん?

お母さん!
お母さん!!

ちょっと待って!

ここ…。

♬~

♬~

(呪文を唱える声)

ああっ! 嫌!
やめて! お願い!

ねえ お願い! やめて!

(あずさ)やめてよ!

お前たちは
報いを受けなければならない。

(女性)父の死に関わった
全てに あだ討ちを。

お前も父の死を
すっかり洗い流してしまった。

私には関係ない!

ある。

お前にも責任が。

《あずさ… 何やってんだ!》

(あずさ)《お手伝いしてたの》

《しなくていい…
しなくていいから!》

そんなの知らない!

(呪文を唱える声)

(あずさ)嫌!

(あずさ)嫌! やめて お願い!

お願い やめて!

嫌ー! やめて!

お願い! ねえ…
お願い やめて!

(呪文を唱える声)

(あずさ)やめろ!

♬~

嘘…。

私が… 殺した…。

この染み… 何とかしなきゃ。

何とかしなきゃ!

(キャスター)この住宅の軒下からは
七峰 承子さんの遺体の他に

死後 十数年
経過したとみられる

白骨化した男性の遺体も
発見されました。

栃木県警は 殺人事件とみて
捜査本部を設置し

男性の遺体の身元の確認を…。
(あずさ)《大丈夫》

《このシャツみたいに
過去を真っさらにして

新しい場所で 新しい人生を》

(男性)へぇ 東京で
暮らし始めたのは最近なんですね。

はい。 ずっと 父の事業を
手伝っていたんですが

先月 両親が亡くなったのを機に
こちらに出てきました。

(男性)そうですか。
それは つらかったですね。

いえ。 今は結婚して ささやかでも
幸せな家庭を築けたらって。

月並みな夢ですが。

とても すてきな夢だと
思いますよ。

(男性)あっ…。

ご… ごめんなさい
大丈夫ですか?

駄目。
(男性)えっ?

駄目 駄目 駄目 駄目 駄目…
駄目!

染みは嫌。
一つも残せない… 嫌!

落ちろ!

落ちろ 落ちろ 落ちろ!

≪落ちないわ。

(あずさ)あっ!!

どうして?

あんたも殺して 誰にも知られずに
全て終わらせたのに!

≪終わりっこない。

えっ?

うまく作った話だとは思う。

だけど あなたの不幸に
理由なんてない。

(あずさ)痛っ…。

痛…。

≪今日も いいお天気ですね。

ブラインド 開けますね。

ほら。 気持ちがいいですよ。

(康子)あのとき 1人で店番なんて
させなければよかった。

(康子)倒れたとき
そばにいてやれれば。

やめろって。

そんなことばかり言ってても
しょうがないだろう。

≪(ノック)

(医師)おはようございます。
(康子)おはようございます。

失礼しますね。

少し よろしいでしょうか?

(医師)この部分。

あずささんの脳出血は
縮小傾向が見えません。

位置が悪く
やはり 開頭手術は厳しいです。

そんな…。

この…

この染みさえ消えてくれれば…。

(あずさ)《染みを消して…》

《誰か…
この染みを消してよ!》

《お願い! 誰か!》

「シミがなくなりますように
あずさ」

どうにか助かってほしいもんです。

人間の願いは多種多様。
古今東西。

今 自分にないものを
手に入れるために

人間は願い事をしてきました。

お願いをするだけなら
タダですからね。

うん?

「金 美女」

しかし 安易に
タダなものに手を出すと…。

(若林)ああ… 気持ちいいね
今日は。

(貴美子)うん。

(若林)
もうすぐ 僕らも5年か。

(貴美子)そうね。

ずっと 一緒だよな?

当たり前でしょ?
どうしたの?

いや。

ワイン取ってくる。

≪(割れる音)

貴美子?

貴美子?

貴美子!




(チャイム)

(山口)警視庁 特殊事件捜査係の
山口です。

どうぞ。

こちらへ。
(山口)電話は どちらに?

(若林)こっちと あっちです。
(山口)機材 向こうで。

(野島)はい。
(松山)はい。

(山口)若林さん。
(若林)はい。

(山口)奥さんが
誘拐されたときの状況を

もう一度 詳しく
お話し いただけますか?

はい。

外で食事をしてて

ワインを取りに
この部屋に戻ってきて…。

≪(割れる音)

(若林)《貴美子?》

《貴美子!》




《はい 若林です》

☎(ボイスチェンジャーの声)
《若林 和也さんだね》

《誰だ?》
☎《あんたの奥さんは預かった》

《無事に返してほしければ
現金5億円を用意しろ》

《身代金が用意できたころに
もう一度 連絡する》

《おい!》
☎《奥さんの命が大事なら

余計なまねは するなよ》
(若林)《貴美子は無事なのか?》

《声を聞かせろ 貴美子の!
もしもし…》

☎(不通音)

(野島)奥さんから 目を離した
時間は どれくらいでした?

15秒もなかったと思います。
(野島)たった15秒ですか?

ええ… それぐらいに感じました。

お願いします。 妻を…
貴美子を取り返してください。

お願いします!

(浦田)庭に向けられた
防犯カメラの映像です。

(浦田)12時20分34秒。
ここで 若林さんが席を立ちます。

(浦田)こっから なぜか
映像が乱れ始めます。

(山口)えっ?

(野島)何だこれ… まるで
神隠しみたいじゃないですか。

(浦田)若林さんが
席を立ってからは15秒。

カメラの映像が消えてからは
わずか5秒です。

その間に犯人は
奥さんを誘拐してます。

(山口)他のカメラは?
(浦田)はい。

(野島)妨害電波でも
使ったんですかね?

念のため 映像が
加工されてないか調べろ。

(浦田)はい。

(日比野)防犯カメラに
死角はありませんでした。

(山口)どうやって 犯人は
カメラに写らずに侵入したんだ?

(野島)山口さん
これ見てください。

若林さんから
奥さんの携帯を借りたんですが

電話帳の登録も 発信履歴も
旦那さんだけです。

他の携帯がないか
確認したんですが

これ1台だけだと。

ここの夫婦
何か変じゃないですか?

(山口)はい 山口。
(織部)おう。

若林 和也という男
調べてやったぞ。

ああ… どうだ?

(織部)若林は
投資で生計を立ててる。

把握できた収入源は
それだけだな。

あとは謎だらけだ。
(山口)謎?

5年ほど前 彗星のごとく
投資の世界に現れて

億単位の金を転がし始めてる。

ネットや経済雑誌にも
取り上げられたぐらいだ。

あとで お前の携帯に
記事のリンク送ってやるよ。

助かる。
気を付けろよ。

えっ?

若林は 過去の経歴が
一切 謎に包まれてる。

資金源は 裏社会の
黒い人脈かもしれんぞ。

(バイブレーターの音)

♬~

山口だ。

東都経済通信の佐藤 学という
ライターの話を聞いてくれ。

(刑事)若林さん宅に
訪問されたことは?

(佐藤)何度か ありますね。
取材は いつも自宅でやるので。

(刑事)若林 和也さんの周囲で
最近

何か 変わったこと
ありませんでしたか?

変わったことっていうか…。

俺 出禁なんですよ。

(シャッター音)
(佐藤)《ああ いいっすね》

(若林)《何やってんだ!》

(佐藤)若林さん 普段は
とても穏やかな人なんですけど

この前の取材で
猛烈に怒らせてしまって。

そんなに 奥さん 他の男に
見られるのが嫌なのかなって

ちょっと怖くなりましたよ。

若林 和也は かなり奥さんに
執着してるみたいですね。

引き続き
佐藤から話を聞いてくれ。

野島。
(野島)はい。

若林夫婦の関係を細かく洗え。
俺は本人から話を聞く。

(野島)はい。

(松山)5億 揃っています。

若林さん
ご用意ありがとうございます。

妻を取り返せるなら
幾ら払っても構いません。

(山口)
5億は かなりの大金ですよ。

お金なら また稼げます。

若林さんは
投資で 生計を立てる前は

何されてたんですか?

色々やってました。
職を転々と。

奥さんとは
どこで出会われたんですか?

誘拐の捜査と
何の関係があるんですか?

何が手掛かりになるか
分かりません。

もし 差し支えがなければ。

知り合いの紹介です。

≪(チャイム)

週1回 ハウスクリーニングを
お願いしてる 峰岸さんです。

今 開けます。

(野島)警察です。

(松山)中へ。
(峰岸)えっ? えっ!?

(野島)若林夫妻の間で

最近 何か 変わったことは
ありませんでしたか?

(峰岸)変わったことですか?

印象に残ってることであれば

どんな ささいなことでも
構いません。

(峰岸)あっ…
そういえば この前…。

≪(若林)《何で
あいつに見せたんだよ!?》

(若林)《なあ。
あれは僕たちだけの秘密だろ?》

(貴美子)《だって~》

《分かってるよな?》

《僕は その気になれば 君を
消すことだってできるんだからな》

(峰岸)ケンカしてるのを見たのが
初めてだったので

珍しいと思って。

「消すことだって
できるんだからな」

若林さん 確かに
そうやって言ったんですね?

はい。

若林さんが
「あれ」と言っていたのは

何のことだか 分かりますか?

そこまでは ちょっと…。

そうですか。
(メールの受信音)

(浦田)
山口さん これ見てください。

≪(ノック)
(若林)どうぞ。

若林さん。

あなた 嘘ついてましたね。
(若林)嘘?

何の話ですか?

あなたの戸籍には
婚姻の記載がない。

書類上 あなたは未婚で
奥さんとの間に 婚姻関係がない。

それは…。

籍を入れられない
事情があるんです。

どのような?

プライベートな話です。
誘拐とは何の関係もありません。

ホントにそうでしょうか?

誘拐の瞬間は どの防犯カメラにも
写ってませんし 目撃者もいない。

そこにきて 貴美子さんは 実は
あなたの配偶者ですらなかった。

加えて あなたと貴美子さんが
言い争いをしていたという

目撃証言も出てきました。

そのとき こう言ったそうですね。

「僕は 君を消すことだって
できるんだからな」

僕を誘拐犯だと
疑ってるんですか!?

冗談じゃない!

僕は 心から
貴美子を愛してます!

では 貴美子さんの旧姓は
分かりますか?

えっ?

確か…。

知らないんですか?
(若林)いえ 知ってます!

だけど 事件のせいで
頭が真っ白になっているだけで…。

ああ…。 では 貴美子さんの
ご出身はどちらですか?

出身?

同じ屋根の下に暮らしてるのに
出身地も ご存じないんですか?

変だなぁ。
(若林)ええ 僕らは特殊なんです。

事件の… 事件と
何の関係があるっていうんですか!

(山口)ここに 貴美子さんの
ご家族や お友達

お知り合いでも結構です。
思い当たる全員の

お名前と連絡先を
書き出していただけませんか。

何のために?

あなたから
情報を頂けないんでしたら

他の方に聞くしかありません。

貴美子さんの戸籍も調べます。

♬~

やはり あなたは
貴美子さんのことを

何にも ご存じじゃない。

(若林)違う… そうじゃない!

若林さん。

ホントの誘拐犯は
あなたなんじゃないですか?

あなたが貴美子さんを連れ去って
このうちに住まわせていた。

全て あなたの
自作自演なんじゃないんですか?

僕は誘拐犯なんかじゃない!

違うんだったら
真実を話せるはずです。

あなたと貴美子さんの間には

人に知られてはいけない 秘密が
あるのは明らかなんですよ!

分かりました。 話します。

だけど…
あまりにも荒唐無稽過ぎて

僕の正気を疑うだけですよ。

話してください。

山口さん。

『アラビアンナイト』の ランプの魔人の話は
ご存じですか?

『アラジン』の魔法のランプですか?

3つの願いを
かなえてくれるという。

ええ。

(若林)もし そのランプが

実在すると言ったら
どう思いますか?

(若林)これは5年前
僕の身に起きた ホントの話です。

(若林)5年前まで

僕はリサイクルショップで
バイトをするフリーターでした。

僕は生まれつき体が弱くて

何をやっても 人より
うまくいかない 駄目人間でした。

(若林)将来に
何の明るい希望も持てないまま

ただ 年を重ねているだけの
毎日でした。

《体力ないくせに無理すんな》

《また倉庫に 荷物 届いたから
倉庫整理やっといてくれ》

《すいません》

(若林)リサイクルショップには 定期的に
大量のジャンク品が届くんです。

それを 売れるものと 不要品に
より分ける単調な仕事があって。

体力がない僕は よく その仕事を
押し付けられていました。

《いでよ ランプの魔人》

(せき)

《何やってんだか》

(せき)

ところが それから間もなくして
倉庫の入り口に男が現れたんです。

≪(足音)

《私を呼んだのは
あなたですか?》

《いえ? 呼んでませんけど》

《そのランプ
こすりましたよね?》

《えっ?》

《あっ… はい》

《でしたら
あなたが私を呼び出したのです》

(魔人)《申し遅れましたが
私はランプの魔人です》

《ランプの… フフッ 魔人?》

《何か おかしいですか?》

《いや… いや あの…
だって おかしいでしょう》

《スーツとか着てるし》

《この姿は
私の実体ではありません》

《呼び出した人が
最も安心する姿で現れるのです》

《何事もTPOですよ》
《へぇ~…》

《では 願いをどうぞ》

《あなたの願いを
3つ かなえましょう》

《願い…
かなえてくれるんですか?》

《そのために
呼び出したんですよね?》

《いや… そういうわけじゃ…》

《私は 必ず 約束を守ります》

《あなたの どんな望みも
3つ かなえましょう》

《ただし 願い事をする前に
注意事項を1つだけ》

《私は無から ものを
生み出せるわけではありません》

《私ができるのは
あなたが望んだものを

どこかから
取り寄せてくることだけです》

《分かりますか?》
《いえ…》

《察しが悪い人ですね》

《では 実演するので
見ててください》

《ハァ… 何だ? 今の》

≪(店長)《チクショー 誰だよ!》

≪(店員)《すいません!》

(店長)《お前に謝られたって
しょうがねえだろ》

(若林)《何かあったんですか?》

《やられたんだよ。 ケースの中に
ルビーの指輪 あったろ?》

《誰か盗みやがったんだよ!》

《うちの店の 一番の高級品を。
よりによって…》

《誰の仕業なんですかね?》

《おい 何か心当たりあんのか?》

《いや…》
(店長)《だよな》

(魔人)《これで 私の力を
信じていただけましたか?》

(若林)
《あんたが これ 盗んだのか》

《何てことしてくれたんだよ!》

《これじゃ まるで
僕が盗んだみたいじゃないか》

《それは
サービスで差し上げます》

《もし あなたが
ルビーの指輪を願ったら

そちらの指輪を
お持ちするつもりでした》

《こんなの
願いをかなえているというより

人のものを
盗んだだけじゃないか》

《ですから
申し上げましたよね?》

《私は無から願い事の対象を
生み出せるわけじゃないと》

《私のサービスは
何事も等価交換が原則です》

《つまり…》

《僕が得をする分
誰かが損をする…》

《ようやく
ご理解いただけたようで》

《さあ どうしますか?》

《良心が痛むなら 願い事をせずに
やめても構いませんよ》

(若林)《僕は ずっと
負け犬の人生を送ってきた》

(若林)《僕にだって
幸せになる権利はあるはずだ》

《願いをかなえてくれ》

《では 1つ目の願いをどうぞ》

《お金!》

《働かなくても 困らないくらいの
大金を出してくれ》

《承知いたしました》

♬~

(若林)《ハァ…》

全部で5億近くありました。
(山口)5億?

心が痛まなかったわけじゃ
ありません。

人のものだと分かっていても
自分の欲望には勝てなかった。

罪の意識は
正直 あまり ありませんでした。

(野島)
ハァ… とんでもない男ですね。

すぐバレる嘘をペラペラと。
(山口)野島。

リサイクルショップに連絡して
若林の話を聞け。

山口さん… 若林の話を
信じるわけじゃありませんよね?

若林が犯人なら ここまで計画的に
誘拐を偽装しておいて

あんな すぐバレる

おとぎ話みたいな
嘘をつく理由が分からん。

何か… ある。
(野島)確かにそうですけど。

あと5年前の失踪者の中で

貴美子さんと特徴が一致する
女性がいないかも調べろ。

分かりました。
(山口)行け。

若林さん。

続きをお願いします。

はい。

《では 2つ目の願いをどうぞ》

《僕を愛してくれる女性を
連れてきてくれ》

《飛びっきり美人の!》
(魔人)《承知いたしました》

(貴美子)《こんにちは》

《こんにちは》

《すごい!
このお金 あなたのなの?》

《まあね》

《彼女… どこの誰なんですか?》

《誰かの奥さんとかじゃ
ないですよね?》

《気になるなら
願いを取り消しますか?》

《彼女を消すのは…
お安いご用です》

《いや… ちょっと待って!》

(魔人)《ああ… ちなみに 彼女の
過去の記憶は消してあります》

《あなたも
その方がいいでしょうし》

《お名前は?》

《貴 美 子》

《貴 美 子… さん》

《素晴らしい。 若林さん
あなたは富と愛を手に入れた》

《もう誰もあなたを
負け犬とは思わないでしょう》

《さあ では最後の願いを》

だから 僕は
貴美子の素性を知らないし

彼女には戸籍がないんです。

戸籍がないから 入籍したくても
できなかったわけですか。

取材のとき かたくなに
奥さんの撮影を拒絶したのは

本当のご家族に
見られてしまうのを

恐れたからですか?

はい。

「消せるんだからな」というのは?

魔人に願いを取り消して
もらえるぞという意味で。

カッとなって つい。

けど 3つの願いをかなえた後

ランプは
何の反応もしなくなりました。

それで あなたは
最後に何を願ったんですか?

それは…。



≪(日比野)入電!


(山口)準備できたか?

(松山)いつでも。
(山口)よし。

できるだけ時間を稼いでください。
(若林)はい。

あと 貴美子さんを
必ず電話に出させるように。

分かりました。



はい 若林ですが。

☎(ボイスチェンジャーの声)
身代金は用意できたか?

ああ。

☎1時間後 港区 芝浦の
日本ダストに持ってこい。

貴美子の声を聞かせて…。
☎(通話の切れる音)

くそっ!
発信元は? 追跡できたか?

公園通りの公衆電話です。

すぐに近くの捜査員を向かわせろ。
(松山)はい。

日本ダスト出ました。 今は
使われていない廃棄物処理場です。

こっからの距離は?
(浦田)30分ほどです。

時間がありません 急ぎましょう。
行くぞ!

(一同)はい。

(日比野)若林さん お願いします。
(若林)はい。

(野島)山口さん。
(山口)うん?

確かに若林は 5年前まで
リサイクルショップで働いてました。

辞める直前
急に若林の羽振りがよくなって

美人の彼女ができたのを
店長が覚えてました。

写真を見せたら
貴美子さんに間違いないと。

失踪者に該当は?
(野島)該当なしでした。

サンキュー。

(山口)われわれは そのマイクで
音声を聞いています。

何か異常があれば
大声で叫んでください。

すぐに捜査員が駆け付けます。
(若林)山口さん。

はい。

まだ 自作自演だと
思っていますか?

貴美子さんを案ずる
あなたの気持ちに

嘘はないように思えます。

少なくとも貴美子さんの誘拐に
あなたは関わってはいない。

それは信じます。

であれば 貴美子さんを
無事に取り戻すことが最優先です。

(山口)ただし あなたの奇妙な話を
うのみにしたわけじゃありません。

事件が解決したら 徹底的に
話を聞かせてもらいますよ。

覚悟しといてください。

分かりました。

若林さん。 それは?

実は 犯人が…。

このランプも
一緒に持ってこいと。

すいません! 黙ってて…。

(山口)どうして そんな
大事な話を黙ってたんですか!

とうてい 信じてもらえないと
思って! すいません。

若林さん。 ランプの話を
私以外の誰かにしましたか?

貴美子には
普通に話していましたけど。

貴美子さんと話していたときに

誰かに 立ち聞きされたり
しませんでしたか?

それが そんなに
大事なことなんですか?

犯人は ランプの存在を
知っている人間です。

あなたの話が真実かどうかは
ひとまず置いときます。

誘拐犯が ちょうど あなたが大金や
奥さんを手に入れたタイミングで

自分の資産や
家族を奪われてたとしたら?

僕の願いによって
大切なものを奪われた人…。

実際どうか 関係ありません。

あなたに大切なものを
奪われたと思い込んだだけで

動機になり得ます。

そういえば
僕の記事を書いてくれてた

佐藤君という
ライターがいるんですけど

最後に取材に来たときに 貴美子が
ランプを見せていたことが。

それで ケンカになったんです。

(若林)《佐藤君 まだいたのか》

(佐藤)《若林さん。 これ
魔法のランプなんですって?》

《単なる旅行の土産だよ》

《貴美子
佐藤君からかったら 駄目だろ》

まさか 彼が…。

(バイブレーターの音)

山口さん 5年前の山梨の強盗事件
覚えてますか?

(山口)警備会社が襲われて
預かり金を奪われたヤマか。

(刑事)佐藤 学は
強盗に殺された経営者の息子です。

被害額は?
(刑事)約5億円といわれています。

有力な容疑者が浮上した。
東都経済通信の佐藤 学だ。

佐藤は逆恨みで
犯行に及んだ可能性がある。

野島は佐藤の自宅に向かえ。
(野島)はい。

(山口)残りは俺と
身代金授受現場に向かう。

必ず人質を無事に救出するぞ。
(一同)はい。

(山口)若林さん 聞こえますか。
(若林)聞こえます。

身代金を渡す前に 必ず

貴美子さんの
安全を確認してください。

(若林)はい。
(山口)何があっても

冷静に行動願います。
われわれを信じてください。

分かりました。

山口さん。
はい。

ありがとう。

感謝するのは
まだ早いですよ。

(日比野)若林さんが
車から降りました。

(松山)処理場の出入り口
押さえました。

(山口)こちらも 今 着いた。

ネズミ1匹 逃がすな。
(一同)はい。

(バイブレーターの音)

はい。

(野島)佐藤 学の
自宅前に到着しました。

(山口)佐藤の姿 確認できたか?

姿は確認できていませんが
人の気配はあります。

悟られないように近づいて
突入しろ。

了解しました。

♬~

(若林)約束どおり
身代金 持ってきたぞ!

ランプもある。

聞こえるか!?
(ノイズ)

おい 音声が
ノイズで聞こえないぞ。

(浦田)対応中です。
故障ではないと思うんですが。

≪(佐藤)はい。

うわっ!?

いくぞ。
(佐藤)あ痛ててて!

(刑事)おとなしくしろ!

(女性)キャー!!

(バイブレーターの音)

人質は無事か?
(野島)佐藤はシロでした。

(女性)あんたら 何なのよ!?
(佐藤)いってぇよ お前!

女と一緒にいただけでした。

(ノイズ)

貴美子!
(ハウリング音)

(ハウリング音)

状況を説明しろ。
日比野。 松山!

(ノイズ)

(浦田)山口さん!

貴美子! 貴美子?

≪(足音)

お久しぶりですね 若林さん。

何で あんたが?

お久しぶりですね 若林さん。
(若林)何で あんたが?

あんたが 貴美子 誘拐したのか?
貴美子に何をした!?

(魔人)ちゃんと
説明したじゃありませんか。

私は 無から
何かを生み出せるわけじゃないと。

私の等価交換は その人の中で
完結してもらうのです。

5年もかかるなんて
あなたは本当に駄目な人だ。

何言ってんだよ!?

フフフ…
相変わらず お察しが悪い。

見覚えありませんか?
このキャリーケース。

(魔人)失敗しました。

もっと早くあなたは

5億くらい 余裕で払えるように
なると思っていたんですがね。

先行投資は難しい。

願いは順番にかなえていくので

あなたが 身代金の5億を
簡単に払えるまで

ハァ…。
(指を鳴らす音)

待たなくてはいけませんでした。

何なんだよ!?
ちゃんと説明しろ!

5年前の
あなたの願いをかなえるんです。

あなたが願ったことなんですから
当然でしょう。

人のものを奪ったら
それは泥棒ですよ 若林さん。

あなたも そう
おっしゃっていたじゃないですか。

ハハッ… あっ。
一つ 忘れていました。

♬~

サービス分も頂いてと。

では まず1つ目の願いを
かなえてきます。

(魔人)大金を目にした
5年前のあなた

目を輝かせて
いいお顔をされていましたよ。

ハッ!

奥さまの記憶は
すでに消しました。

彼女 お金さえあれば
幸せを感じる女性なので

きっと 大金を手にしたあなたを
好きになるでしょう。

これで2つ目。

(魔人)《私のサービスは
何事も等価交換が原則です》

全部…
未来の僕のものだったのか…。

(刑事)山口さん。 中です。
(山口)こっち?

(松山)こっちです。

若林さん。
ちゃんと覚えていますか?

あなたの最後の願い。

《さあ では最後の願いを》

《僕は生まれつき
心臓が悪いんだ》

《移植しないかぎり 長くは
生きられないと医師に言われた》

《最後の願い…》

《僕に適合する
健康な心臓が欲しい》

《それが あなたの
最後の願いですね?》

《分かりました》



《はい》

(医師)《若林さん》

《移植用の心臓が 奇跡的に
手に入るかもしれません》

《えっ!?》

《ただ あまり大きな声では
言えない 裏の方法でして》

《アメリカに渡っていただかなくては
いけない上に

多額のお金が
必要になるのですが》

《大丈夫です》

《お金なら あります》

(若林)そんな…。

待ってくれ。

取り消す!
願いを取り消すから!

それはできません。
契約は契約。

5年前の
あなたの願いですから。

≪(悲鳴)

若林さん!

♬~

♬~

あっ こりゃ 失礼。

おやおや 皆さん
こんなとこまで見ているんですね。

ただ 燃えるものと
燃えないものの区別

非常に ややこしくありませんか?

よもや 私自身が 炎上するなんて
思ってもみませんでした。

怖い世の中です。

何が燃えて 何が燃えないのか
一寸先は 闇です。

(バイブレーターの音)

(春香)はい。
えっ? 何?

(春香)
あ~ 私 戻って処置するから。

必要なもの 揃えといて。

こっち もう終わるから。

ハァ…。

(トシ)徹~。
この親不孝者めが~!

(鬼瓦)では 最後に

故人さまが
大切にしていたものなどあれば

一緒に
棺に入れてあげてください。

(光一)こんなときまで仕事かよ。

無理やり抜けてきたんだから
仕方ないでしょ。

(鬼瓦)あっ 金属やガラスは
燃えませんので ご遠慮ください。

これは どうですか?

父は 陶芸職人で。

はい。

(悦子)お父さん 窯のことは
心配しないでくださいね。

それでは お別れでございます。

(トシの泣き声)

(光一)親父は
殺しても 死なないと思ってた。

(悦子)ホント 急だったね。

(光一)おふくろも
散々 苦労したって言ってたけど

これだけ好き勝手
生きたんだよ。

もう 思い残すことないだろ。

≪(足音)

大変です!
ハァハァハァ…。

お父さまが…。
(春香)どうしたんですか?

燃えません。

(一同)はあ?

(鬼瓦)どうぞ。

(トシ・悦子)キャッ!
(鬼瓦)えっ? えっ?

あっ あっ あっ!
失礼しました!

動転していて!

機械の故障とかじゃ
ないんですか?

違います。 お父さま以外のものは
全て燃え尽きました。

幽霊?
(悦子)えっ?

なっ 何 バカなこと。
(光一)いや でも。

≪(物音)

(光一)何?

何何何…。
(春香)かっ 風よ。 風。

おいおい
よく そんなことできるな。

とにかく もう一度
火葬してみてもらえます?

承知しました。

♬~

(トシ)ありがとう。
(悦子)いいえ。

≪(足音)

駄目です! 燃えません。

こんなことってあるの?

親父 窯の温度には
うるさかったからね。

ねえ まさか それ 冗談のつもり?

原因とか分からないんですか?

われわれも こんなこと初めてで。

例えばですが

故人さまに 何か心残りがあって

肉体が
この世に執着している… とか?

はい?
(鬼瓦)あっ 失礼しました。

この仕事をしていると

たまに 説明がつかない事態に
遭遇するもので。

はあ。

いや 徹なら あり得る!
(春香)えっ?

確かに。
親父の頑固は 筋金入りだからね。

うん お父さんなら
あるかもしれない。

あんたたち 正気?

いくら 田舎だからって
そんな迷信みたいなこと。

あの 私も
決して 確信があるわけでは。

じゃあ 他に説明できんのかよ。

お得意の医学で。

心残りなく
送り出してあげたいです。

徹~。

あ~ 分かったわよ。

捜せばいいんでしょ
その… 心残り。

で 何か心当たりある人。

光一?
(光一)んっ?

あっ いや。

(悦子)
やっぱり 女じゃないですか?

女?
(悦子)ほら

ドラマとかで よくありますよ。

夫の葬式に 愛人が乗り込んできて
修羅場とか。

お父さん
幾つだと思ってんの?

男は 死ぬまでスケベじゃ~。

(光一)ハハハ…。

死ぬまで… フッ。

ねえ… みんな 真剣に考えて。

私 もう時間ないんだってば。

あっ。

今 思い出したんですけど…。

≪(徹)《いい女だったな~》

(徹)《閉めんか!》

嘘…。
(光一)それ いつの話?

1カ月くらい前かな。

わしも 徹が
電話してるのを聞いたことがある。

ミンミンだか ユーミンだか…。

ミンミン…? 外国の人?

はて。

あの子は じいさんに似て
昔っからモテたからな。

あっ あそこかも。
ほら 近くのフィリピンパブ。

いやいやいや あの店に
ミンミンちゃんなんか いない… あっ。

あら~ ずいぶん詳しいのね。

たまたま… たまたま。

1カ月前でしょ? 何だろうね。

あっ。

何か知ってるの?

えっと あの…。

(光一)サイン会
ついてきてほしいって 頼まれて。

え~。

あのお父さんが 恥を忍んで
頼むなんて 相当ですね。

何か おふくろの若いころに
似てる! っつって。

ハッ。

ん~ まあ これで
心置きなく いけるっていうなら

棺に入れて…。
(光一)あっ ちょちょちょ…。

俺 これ
形見分けで もらうんだよ。

(光一)ねえ ホントに?
サイン入りだよ。 サイン。 ねえ。

(悦子)んっ!

≪(足音)

やっぱり 燃えません!

俺の みなみん!

ハァ~。

ハァ…。

うん 逆に ほっとした。

でも そうなると 何でしょうか。

光一
窯の経営は 問題ないのよね?

大丈夫です。
問題ありません。

(トシ)なあ 春香。

やっぱり
死んどらんいうことはないか?

ないよ。 脈 取ったし。

でも おとといまで
ピンピンしとったんだよ。

心不全だからね。

ちなみに 火葬に失敗するたび
棺代が かさんでます。

えっ やっぱり 有料なの?

ヤッバ。

次で決めよう。

もういい!
徹は わしが 家に連れて帰る!

(春香)ちょっと
急に 何 言ってんの?

幽霊だろうが何だろうが
わしのカワイイ息子じゃ!

悪霊だったら どうすんだ?
ばあちゃん。

最後まで 責任 持って
かわいがれる?

あっ!
今日 13日の金曜日だ!

(トシ)怖い。
(光一)あっ ホントだ。

あ~ もう バカバカしい!
付き合ってらんない。

病院 戻んなきゃ。
あと よろしく。

ちょちょちょ ちょっと待ってよ。
本気で行く気?

親父の心残りって
姉ちゃんのことじゃねえの?

東京 出てから
親父に 何回 顔 見せたよ。

ホント 信じらんない。

あそこまで薄情だと思わなかった。

♬~

♬~

ねえ 心残りって
あのことは関係ないよね?

親父には 一応 話 したし。

そうだよね。

悦ちゃんは 他に 何か見てない?

うん…。

あっ そういえば…。

《やっぱり 入れるのは無理か…》

もしかして 再婚して
籍を入れたい人がいたとか?

(光一)マジ?

ってことは やっぱり 女?

ミンミン…。
(光一)もう みなみんは いいって。

でも お父さん
電話してたんでしょ?

みなみんとは 電話できなくない?
(光一)うん。

(光一)ばあちゃん ばあちゃん
ばあちゃん ばあちゃん…。

ねえ 本当は 思い出してんでしょ
相手の名前 ねえ。

ミンミンじゃなくて
ユーミンでもなく…。

知らん! 徹は ずっと
わしのそばに おるんじゃ~。

まあ そうなんだけどね
ばあちゃん ねえ。

おばあちゃん
これ以上 失敗したら

おばあちゃんの たんす貯金にも
協力してもらいますよ。

えっ…。

…スミン。
(悦子)えっ? 何ですか?

ジャスミン。
(光一)えっ 嘘!

えっ?

また知ってるみたいね。

(光一)んっ? あっ いや…
うん 知ってる…。

今すぐ ここに呼べ!

≪(足音)

来たわね ジャスミン。

(ジャスミン)ここか?
(ジャスミン)光一 来たよ~。

ちょっと
あなたたち 誰なんですか?

(ジャスミン)ジャスミン!
(ジャスミン)ジャスミン。

ジャスミ~ン。

さっ どれだ?

かわいそうに。

あなたが お父さんの恋人?

ううん。
こんな おっさん 知らない。

えっ?

誰だ? こいつ。

見たことないよ。

ジャスミン違いだった。
(悦子)ちょっと あんた。

≪(足音)

誰?

徹ちゃん!

ジャスミン!?

(ジャスミン)ジャスミンの花
好きだって言ってたわよね。

(ジャスミン)
最後に会えて… よかった。

(光一)父とは いつから?

もう15年の付き合いになるかしら。

そんなに前から…。

お店に初めて来たとき
奥さまを亡くして すぐでね。

落ち込んでいたのを

私が 慰めてあげたの。
(光一)あ~…。

親父の再婚相手って マジかよ。

確かに 籍を入れるのは難しそう。

何の話?

えっ?

(ジャスミン)私たち ただのお友達よ。
(光一・悦子)えっ?

あの…。
≪(足音)

やっぱり 駄目です!

あ~。

(バイブレーターの音)

ちょっと すいません。

(バイブレーターの音)

(呼び出し音)

(光一)はい。
(春香)あっ どう?

何 人ごとみたいなこと
言ってんだよ。 自分の親だろ。

長男は あんただから。

また そうやって
全部 俺に押し付けんのか。

フッ。 いつも そうだよな。

親父も 姉ちゃんには
昔っから甘くて。

一度でも 窯のこと
俺に聞いてきたことがあったか?

継いだのは 光一でしょ。

ハァ…。

うん 分かった。
じゃあ 好きにするわ。

窯半分つぶして
カフェにするから。

はあ?

心残りって それじゃないの?

親父には 一応 説明したし
もう 工房だけじゃ無理なんだよ。

そんな簡単に…。

勝手に決めていいの?

姉ちゃんに
そんなこと言う権利はない!

親父が どれだけ苦労したか
知らないくせに。

家族のことなんか
どうだっていいんだろ!

(通話の切れる音)

光一
春香ばっかり責めるんじゃない。

あの子にも 事情があるんじゃよ。

春香は 2人の子供じゃない。

徹と茉莉花さんには
長い間 子供が できんくてな。

養子を迎えたんじゃ。

しかし
5年後に お前が生まれた。

不幸じゃったのは

春香に 本当のことを伝える前に
茉莉花さんが亡くなったことじゃ。

(トシ)徹も春香も 似た者同士。

素直じゃないけな。

擦れ違っとるうちに
本人に知られてしまったんじゃ。

ハァ…。

(バイブレーターの音)

♬~

(春香)
《大学 ホントに行っていいの?》

《せっかく 医大に受かったのに
いまさら何だ》

(春香)《お母さんがいなくなって
窯 大変でしょ》

《私が 跡を継いで…》
《お前に継がせる気はない》

《私が
本当の子供じゃないから?》

《光一がいれば
それでいいんでしょ!》

♬~

原因は 私?

ごめんなさい。

あんなこと
言うつもりじゃなかった。

大学に行けって
言ってくれたんだよね。

分かってたのに…。

まだ ありがとうって
言ってないよ…。

(春香の泣き声)

♬~

ごめん。 窯のこと 知らなくて。

俺の方こそ

姉ちゃんのこと… 知らなくて。

親父の心残り 窯のことだよな。

俺 駄目な2代目で。

違うよ。

お父さんから メール来てたの。

最初 意味 分かんなくて
スルーしちゃってたんだけど。

カフェのこと 賛成してたんだよ。

だから 原因は 光一じゃない。

お父さんの わだかまりって
きっと 私のことで。

≪(ジャスミン)違うわよ。

徹ちゃんに
わだかまりなんてない。

この前 徹ちゃんに

今 作ってるものを
見せてもらったの。

(ジャスミン)カフェの名前だって。

2人から取ってるんでしょ?

春香も光一も
徹の大事な子供じゃ。

♬~

親父 俺たちは もう大丈夫だから。

なっ。
(春香)うん。

ごめんね お父さん。

ありがとう。

ようやく
松田家が一つになったな。

わしも決心がついたぞ。

これで 徹も
安心して 旅立てるじゃろう。

そうだな。
今度こそ。

≪(足音)

(光一)だいたい こういうときは
燃えるもんだろ。

ちょっと しつこいわよ。

ちょっと
肌つや 良くなってません?

こうなったら
わしが引導を渡してやる!

こら 徹!
(ジャスミン)もう死んでるわよ!

どうにかしてくださいよ!
あなたの仕事でしょ!

申し訳ありません!
しかし…。

あっ…。

(春香)《お母さん!》
(トシ)《入れなさい》

(鬼瓦)《申し訳ありません》

《頼むよ》

《燃えないものは
ご遠慮ください》

まさか!

姉ちゃん?

≪(足音)

ちょ どこ行ってたんだよ。

今日だけ これ
入れさせてもらえませんか?

仏壇に隠してあった。

(悦子)結婚指輪?

お母さんが 前に言ってたの。

お金なくて
式も挙げられなかったけど

結婚指輪ぐらい欲しかったって。

結婚式のCM…。

(徹)
《やっぱり 入れるのは無理か…》

(悦子)お父さん 指輪 見てたんだ。

「入れるのは無理」って
棺に 指輪をってことか。

今回だけ お願いします。

(悦子・光一)お願いします。
(トシ)頼みます。

今回だけですよ。

ありがとう。

♬~

あっ なるほど。

何?

茉莉花って
ジャスミンのことなんだ。

だから お父さん
ジャスミンの花が好きだったんですね。

もしかして…。

≪(徹)《いい女だったな~》

(悦子)お父さん あのとき…。

《閉めんか!》

(悦子)お母さんの写真
見てたのかも。

親父って 意外と いちずなんだな。
(春香)フフッ。

今度こそ
ホントに いっちまったか。

♬~

(風の音)

ハァ。

お母さんに よろしく。

指輪がない…。

言葉で伝えないと
他人の思いは

たとえ親族であっても
うまく 推し量れないものですね。

しかし 逆に 言葉で伝えると
非常に強い力を持つものです。

たとえ
それが 匿名であったとしても。

(良太)ありがとうございます。
(安永)はいはい。

(良太)ハァ…。

(良太)ハァ~。 疲れた。

(バイブレーターの音)

お疲れさまで~す。

(羽田)赤城 お疲れ。
ロケ どうだった?

順調に終わりましたよ。

けど 食べ歩き企画 1日5軒は
やっぱ きついっすね。

ハハッ。 そっか。

じゃあ 次の取材のリサーチ
今日中な。

えっ あしたじゃ駄目ですか?

じゃあ お疲れ。
(通話の切れる音)

あっ。

チッ。 くっそ。

安永さん お疲れさまです。
(安永)お疲れさま。

(車のドアの施錠音)

あ~。

お疲れ。

今日 これ
某テレビ局から 生配信中です。

見える?

『グッド アフタヌーン!』って
昼の情報番組。

実は 俺 これのADなんだよね。

あっ 今から すごいことするから
みんな 集まって。

はい これ。

女子アナ 北条みゆきの
食べかけのお菓子。

あ~ん。

どうよ。

ハァ…。 伸びねえ。

いったい どうやったら
バズるんだよ。

(良太)んっ?

何 何?

はっ?

ちょ 何だよ これ。

えっ?

これって うちのロケ車?

どういうこと?

(警備員)ちょっと。
何やってんですか? そこで。

(警備員の悲鳴)
(良太)うわ!

♬~

誰だよ これ やってんの。

いくら何でも
悪趣味過ぎんだろ。

くそ!

こっちに向かってきてる。

何なんだよ これ。

≪(足音)

やめろ。

早く 早く!

♬~

♬~

♬~

おい。

♬~

♬~

♬~

安永さん…。

(安永の悲鳴)

♬~

♬~

(良太)何なんだよ これ!

早く逃げなきゃ。

でも どうやって…。

そうだ。

安永さん ごめんなさい。

♬~

♬~

(良太)うお!

あ痛っ。

♬~

(エレベーターの開く音)

≪(足音)

早く閉まれ!!

♬~

(車のドアの解錠音)

(車のドアの施錠音)

(セルモーターの音)

何で かかんないんだよ!

(セルモーターの音)

(セルモーターの音)

うわぁ~!!

助かった…。

フッ…。

分かった。
こういう動画か。

あんたら全員 グルだったんだな。

もう マジで ビビった。

はっ?

ちょっと…。

いや だから もう分かったって。

もう十分だから!
撮影 終わり!

♬~

♬~

♬~

♬~

(良太)何で… 何で 俺なんだよ。

許して…。

(配信者)バズったね。
楽しかった?

えっ?

♬~

♬~

タイムトラベルにおける
親殺しのパラドックスという矛盾。

この解決策の一つに

事後選択モデル
というものがあります。

現在 自分が存在してる
という事実がある以上

過去に行って

自分の親殺しを
実行することはできない

というものです。

どうやら いくら 後悔しても
起こってしまった事実

過去を変えることは
できないのです。

でも 諦めてはいけません。

たとえ 過去は変えられなくても
未来は変えられるのですから。

♬~

「すっ すっごい美人の彼女が
欲しいです!」

「君 お願いしたね」

「この乾燥機の前で
お願いをすると

何でも欲しいものが
出てくるんだよ」

「今から デートしませんか?」

「うん! するする!」
「あっ やった」

「小さい子供が
空想の友達と遊ぶのは

よく あることらしい」

「大人になっても
イマジナリーフレンドって

現れるんでしょうか?」

「ユキちゃんは
私が幸せになることが嫌なの?」

「わがクロサキ家は
アップデートすることにした」

「はあ? アップデート?」

「家族をアップデートして
効率化を図ることにしたんだ」

「タテモトさんに殺される?」
「何で 何もしゃべらないんですか」

「何があったんですか!」
「タテモト マサコは記憶を消せる」

「ハッ!」
「あいつ…」

では 30年目の秋に
また お会いしましょう。


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