4連休前に前倒しのGoToキャンペーン、都会の感染者を拡散懸念も
牧綾香-
観光業界は「ありがたい」と歓迎も、ツイッターには「来ないで」
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県外からの旅行客の感染確認が相次ぐ沖縄、「強い危機感」と県知事
People at the Kusatsu Onsen resort in Kusatsu, Japan.
Photographer: Soichiro Koriyama/Bloomberg
都内の新型コロナウイルス感染者数が過去最多となるなど拡大に歯止めがかからない中、政府は打撃を受けた業界を支援する「GoTo キャンペーン」のうち観光分野の割引を22日から開始すると発表した。観光業界からは歓迎の声が上がる一方、感染者の少ない地方に感染が拡散する懸念の声も上がる。
東京都では11日にも206人の新規感染者を確認。前日過去最多となった243人に続き、200人を超えるのは3日連続となった。小池百合子知事は不要不急の他県への移動自粛を都民に呼びかけているが、政府とのズレが目立つ。菅義偉官房長官は7日の会見で一律に移動自粛をする必要があるとは考えていないとの立場を示し、国土交通省はGoToキャンペーンの8月上旬開始目標を前倒しさせた。
「旅館やホテルが大変厳しい状況の中、ありがたい」と、佐賀県唐津市にある観光ホテル大望閣の広報担当、古館健一氏は喜ぶ。愛媛県松山市の大和屋本店旅館の奥村勇太取締役は「感染が拡大している中で手厳しい意見があるのは承知しているが、4連休に向けてゲストの戻りを回復させたいという決断を政府がしたことはありがたい」と話す。
三重県伊勢市で宿屋伊勢ピットを経営する長田圭介氏は、「国や県の受け入れ自粛要請などがなければ都内からのゲストを受け入れる」と話す。「南関東からのゲストが半数近くを占めるので断ってしまうと維持が難しくなる」と言い、警戒の仕方も変えていく必要があると考えている。
一方ツイッター上では、「来ないでほしい」との書き込みや、地方に感染が拡大して医療体制が逼迫(ひっぱく)する可能性を指摘する声などが上がった。
すでに都会から地方への拡散は現実のものとなっている。沖縄県は9日に東京からの20代の女性旅行者、10日にも埼玉からの30代男性旅行者の感染を確認。沖縄では4月30日から7月8日まで感染者ゼロが続いていた。玉城デニー知事は10日の会見で今週確認された4人の感染者がいずれも県外から来たことを指摘。「強い危機感を抱いている」と述べた。同県では東京都、埼玉県、鹿児島県からの来訪者に外出自粛を呼びかけている。
観光庁のGoToトラベル事業に関する発表資料によると、国内旅行を対象に旅行代金の半分の相当額を支援。支援額のうち7割は旅行代金の割引に、3割は旅行先で使える地域共通クーポンとして付与されるという。海の日を含む7月の4連休前に旅行代金の割引のみ先行的に開始し、連休中の旅行需要を喚起する狙いがある。
事務委託を受けるJTBは独自のキャンペーンを投入予定。JR東日本は7日、「旅に出よう!日本を楽しもう!」と銘打って7月下旬から新幹線が半額になるキャンペーンを発表している。
福島県いわき市の旅館こいとの宗像達應氏は、感染拡大について「深く注意をしなければならない」と、気を引き締める。「キャンペーンに遅れや変更等があってもいいので、できる限り安全に、安心した旅ができるよう開始してほしい」と述べた。