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2018.06.20 11:00  週刊ポスト

年間1万2000件の老人ホーム事故は、こうして闇に葬られる

 介護保険法に基づく省令には「事故が発生した場合は、市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行う」とある。家族への報告は義務化されている。しかし「どの程度の事故をどう伝えるかまでの取り決めはない」(厚生労働省老健局高齢者支援課)という。

 事故報告を受ける自治体にも明確な取り決めはない。

「家族への事故報告については、各事業所の管理者を対象にした集団指導講習会で適宜、指導やお願いをしていますが、事故をどの程度の段階で伝えるかのマニュアルはありません」(神奈川県高齢福祉課)

 つまり、施設側に“お任せ”ということだ。では、施設を管理する運営会社には何らかの運用ルールはあるのだろうか。

 大手運営会社は、「事故に該当するものは全てご家族様にも連絡しています」(ニチイ学館)、「事故はすべて起きた時点で、程度が小さくても行政とともにご家族にも報告しています」(老人ホーム等を運営する“さわやか倶楽部”)と説明する。

 会社により細かい運用に違いはあるものの、少なくとも「事故が起これば家族に報告する」という方針は共通している。ただ、すべての施設が徹底した報告をしているわけではない。関東近郊の施設に母を預けた吉田達正さん(仮名・50代男性)はこう嘆く。

「85歳の母の膝に痣を見つけました。しかし、施設から報告は一切なかった。ヘルパーさんに指摘したが、強く抗議すると、母が雑に扱われるのではないかと心配になり、やんわりした言い方しかできませんでした」

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