――ここまで語られた検査体制の拡充のためには、具体的にはどのような道筋が必要だと考えますか?
小林: 医療や検査の体制の増強ペースがどうなるかについて、国民は数値的な目安を知りたいはずです。国民に対して将来像を数値で示してくれると経済活動がやりやすくなるのです。
具体的には、今後来るかもしれない第二波に備える意味でも、9月末までには全国で1日10万件は検査できるキャパシティーを作る計画を今のうちから立てて実行する必要があると思っています。
さらに、冬にはインフルエンザの流行が予想されます。発熱した人たちがインフルエンザなのかそれとも本当は新型コロナウイルスの感染者なのか、検査を受けてもらって診断しなければ医療現場は大混乱に陥ります。
インフルエンザの患者数は、流行の大きい年には週当たりピーク時には200万人にのぼります。これに対応するには、11月末までには1日20万件の検査能力を最低限確保する必要があります。そのためには、唾液を用いたPCR検査や、抗原・抗体検査の組み合わせも必要になるでしょう。
そうした数値目標を立て、着実に実行していくことで消費者の安心につながり、経済が再生していくと考えています。
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さまざまに報道されていることだが、日本の現在の人口当たりの検査数は一時よりかなり増えたとはいえ、まだまだアメリカ、イギリス、ドイツなどのG7諸国と比較して突出して少ない。
例えば、この8日に日本記者クラブでの会見に参加したドイツ(人口8300万人)、ロベルト・コッホ研究所のローター・ヴィーラー所長は、「私たちの戦略では、感染の発生を早期に発見するために、早い段階から大量の検査能力を確保し、今では週に110万件(1日15万件強)のPCR検査能力を持つに至っている」と語っている。(https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35678/report)
これら欧米諸国では感染者数も日本より多いという事情もあるが、日本より人口当たりの感染者数が少ないか同レベルの中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドといった東アジアや太平洋に面する国々も日本より多い検査を行い、感染者を抑えることに成功しているのが実情だ。
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小林: さらに水際対策も重要です。
今は海外から日本に来る人は非常に少なくなっていますから全員検査ができていますが、オリンピックを見据えれば、来年の春にはもっと外国から人が入ってくることになります。たとえ簡素化したとしても最盛期には1日何万人という人が入ってくるでしょう。その全員検査にも対応しなくてはなりません。
そして、海外からの観光客も、将来的には以前ほどでないとしても再び来てもらわなくては、日本の経済は復活できないのです。以前の十分の一の数でも、1日1万人にのぼります。