小林: アメリカの経済学者の研究では、消費者が市中感染のリスクを感じていると消費が大きく落ち込むことがわかっています。その影響は先ほども言ったように人命にかかわります。
これを防ぐには、なるべく広く検査をして市中感染の状況を把握する必要があります。
そのためには、国民全員を検査するというのは現実的には難しいですが、まず症状がある人はもれなくすぐに検査できるようにする、そして陽性者の濃厚接触者であれば症状がない人も検査する。あるいは、医療施設や介護施設、そして障害者福祉施設に従事される方は感染リスクが高いことから重点的に検査できるようにする、さらにこうした施設に新たに入院する人、入居する方は症状のあるなしに関わらず検査する体制を作るべきです。
つまり、これまでの「受け身の対処」から「積極的な感染防止戦略」への転換です。「攻めの戦略」が必要だということです。
そのためには、例えば大きな病院であればPCR検査の機械を自前で設置すれば、そこで毎日でも検査できるようになります。あるいは小規模な医院や介護施設、福祉施設に対しては地域ごとに、PCR検査の設備を常備するというような形で検査を増やしていくということが考えられます。
PCR検査には熟練の検査技師の技術と、数時間という時間が必要ということはしばしば報道されている。こうした問題を解決するPCR検査の全自動機械がすでに各国で開発されており、しかも日本のベンチャー企業も参入している。「BIZ STREAM」では松戸市にあるその「プレシジョンシステムサイエンス(PSS)」社を訪れて取材した。
12個の検体をカートリッジに入れて設置し、あとは蓋を締めてスイッチオンにして待つだけだ。結果が出るまでにかかる時間も2時間程度とはるかに短い。
コロナ禍が世界を覆って以来、フランスを中心とした欧州で販売を伸ばし、500台以上が採用され、正確かつ数多くのPCR検査の実施に役立っている一方、驚くべきことに日本ではつい最近まで保険適用になっておらず、ほとんど使われていなかった。
これは審査する厚労省の対応が今回遅かったというわけではなく、もともとこうした医療機械に対する審査基準が日本よりヨーロッパの方が簡略だという事情もある。いずれにしても、現在では保険適用となり、これを受けて同社は日本でも販売体制を整え、早くも数多くの引き合いが来ているという。
「全国でおよそ300施設には入れてもらうようにしたい」と田島秀二社長が語るように、8月には新型コロナウイルス検査のための使用が始まるようにして、想定される「第二波」対策に貢献したいという。
小林氏の指摘のように、こうしたPCR自動検査機械が日本各地の大病院や、地域的な拠点に置かれれば、迅速かつ大量の検査体制が大きく前進するだろう。
すでに海外メーカーの製品を入れている施設もあり、こうした自動検査機械の購入のための支援の政策も考えるべきだろう。
これは日本が国際的に今も通用するテクノロジー分野でもある。日本の国際医療戦略の観点からも、海外市場だけでなく国内でもこうしたベンチャーも含めた企業の活躍の場を広げ育成することが重要なのは言うまでもないことだ。
小林氏へのインタビューに戻ろう。