東京の感染者が過去最多となる中、新型コロナウイルス第一波を検証し第二波への備えを探ります。政府と専門家の連携はどうだったか。私たちは政府の会議で出された一枚の資料を独自に入手しました。書き込こまれた赤い線から両者の食い違いが見えてきました。
記事全文
■「事前に相談されていたら、止めていた」
「いわば専門家会議が発展的に移行する、そうした形で開催させていただく」
6日に開かれた第1回新型コロナ感染症対策分科会で、西村経済再生相はこう発言。コロナ対応を議論する専門家会議が新たな体制に切り替わりました。
これまでの専門家会議は先月24日、突然、西村経済再生相が廃止を発表。同じころ、別の場所で会見していた専門家会議のメンバーは……。
尾身茂副座長「いまあの大臣がそういう発表されたんですか?私はそれは知りません」
新体制への移行をめぐり、すれ違いも。危機対応での連携はどうだったのでしょうか?
今年2月27日、安倍首相が突然、発表したのが「全国の小中学校・高校への休校要請」でした。自らの「政治判断」で休校を要請したと説明した安倍首相。突然の発表に驚いたのは専門家も同じでした。
専門家会議メンバーは……。
「専門家会議は全く知らない話。聞かれてもいない」
「事前に相談されていたら、止めていた」
当時、学校でのクラスターも起きていない中で専門家は効果が分からない一斉休校をとるべき選択肢として考えていませんでした。
■「専門家の判断…」政府に不信感
専門家の意見を聞かずに決まった休校要請。ところが、私たちが入手した資料には“ある矛盾”がありました。
1か月半後に政府と専門家の会議で政府側が出したものです。そこには「学校の一斉休業が望ましいという専門家の判断を踏まえ」と、専門家が休校を議論し判断したかのように書かれていたのです。
専門家が反発しこの記述はなくすことに。「トル」と書きこんでいます。
ある専門家会議のメンバーは政府が責任の一端を押しつけようとしているのではないか、と不信感を抱いたといいます。
「専門家会議」は感染状況を分析して政府に助言する立場。政策を判断し、責任をもつのはあくまで政府です。今回、前例のない危機対応を迫られる中で、両者の考え方の違いが表面化する場面もたびたびありました。
感染者が増え病床が逼迫しはじめていた3月末ごろ。専門家は、強い危機感を訴えていました。
<3月27諮問委員会の議事録にもとづく再現>
東北大・押谷仁教授「非常に深刻な状況になりつつあります。首都圏の医療機関がいっぱいになるのはもう時間の問題です」
中には、緊急事態宣言などの強い措置を求める声も。
三重病院・谷口清洲医師「もう少しきちっとしていかないと、本当に東京はロックダウンになるのではないか」
東大医科研・河岡義裕教授「死者を出さない為には、今ロックダウンのような事をしてもいいぐらいだ」
西村経済再生相「しっかりと受け止めて、政府内で共有をして迅速な対応をやっていきたいと思います」
しかし、緊急事態宣言が出たのはこの11日後でした。
この時のことを、西村経済再生相は…。
西村氏「(3月末に)近いうちに緊急事態宣言を発令することになるかもしれないということも発言していますので、非常に危機感は共有していたところです。ロックダウンは日本ではできないし、そうしたことを考えているわけではないということ(国民の誤解)を払拭するのに一定の時間を要したのは事実だと思います」
■会議「形骸化」に苦言
一方、専門家会議のメンバーは…。
日本医師会・釜萢敏常任理事「それ(宣言発令)までに少し時間がかかった。日に日に医療提供はさらに逼迫が強まっているので、ハラハラしながら拝見していたというところがあります」
宣言後、経済対策の実行の遅れを批判されていた政府。感染の減少傾向がみえると
“宣言解除”へと急速に傾いていきます。39県で宣言を解除する2日前には-。
官邸関係者「政府は特定警戒の県も解除しようとしているが専門家は嫌がっている。そこの綱引きだ」
こうした中、専門家に解除方針を諮る場で、専門家から出たのはー
<第回諮問委員会(5月14日)取材にもとづく再現>
出席した専門家「すでに39県で解除と報道されている。ここで議論する必要が無いんじゃないですか?」
会議が形骸化しているとの苦言でした。西村経済再生相はこうとりなしたといいます。
「先生方の危惧はよく共有しました」
■政府と専門家“第2波”にどう立ち向かう
様々な局面で違いもみえた政府と専門家。これまでの対応を振り返って専門家が注文をつけたのが……。
釜萢医師「国民に対してどういう形で情報を提供すれば、パニックにならずに、かつ一番正確に情報が伝わるかというところを国は工夫すべきだったんですね」
今回専門家は政府にデータなどを示しても世間になかなか伝わらないという危機感から、「8割接触減」や「テレワーク」など経済にも影響を及ぼす国民の行動変容まで訴えました。
ただそれは専門家の役割の範囲外で政府の役割だったと釜萢医師は話します。
「『専門家会議はこう言ったけれども、政府としては政府の責任でこの部分を採用します』というのを(政府が)ハッキリおっしゃっていただくのが必要になるんだろうと思います」
この点について、西村経済再生相も…
西村氏「(政府と専門家の)キャッチボールですね。『政府としてはこう考えてこう対応した』と専門家から今度は『それじゃ足らないからこうしたほうがいい』とか、そのキャッチボールをもう少し皆さんに目に見える形でやっていかなければならない」
ふたたび増えはじめた感染にどう立ち向かうのか。政府には専門家との役割も明確にしながら丁寧に情報発信をしていくことが求められます。
(7月10日放送 news every.より)
「いわば専門家会議が発展的に移行する、そうした形で開催させていただく」
6日に開かれた第1回新型コロナ感染症対策分科会で、西村経済再生相はこう発言。コロナ対応を議論する専門家会議が新たな体制に切り替わりました。
これまでの専門家会議は先月24日、突然、西村経済再生相が廃止を発表。同じころ、別の場所で会見していた専門家会議のメンバーは……。
尾身茂副座長「いまあの大臣がそういう発表されたんですか?私はそれは知りません」
新体制への移行をめぐり、すれ違いも。危機対応での連携はどうだったのでしょうか?
今年2月27日、安倍首相が突然、発表したのが「全国の小中学校・高校への休校要請」でした。自らの「政治判断」で休校を要請したと説明した安倍首相。突然の発表に驚いたのは専門家も同じでした。
専門家会議メンバーは……。
「専門家会議は全く知らない話。聞かれてもいない」
「事前に相談されていたら、止めていた」
当時、学校でのクラスターも起きていない中で専門家は効果が分からない一斉休校をとるべき選択肢として考えていませんでした。
■「専門家の判断…」政府に不信感
専門家の意見を聞かずに決まった休校要請。ところが、私たちが入手した資料には“ある矛盾”がありました。
1か月半後に政府と専門家の会議で政府側が出したものです。そこには「学校の一斉休業が望ましいという専門家の判断を踏まえ」と、専門家が休校を議論し判断したかのように書かれていたのです。
専門家が反発しこの記述はなくすことに。「トル」と書きこんでいます。
ある専門家会議のメンバーは政府が責任の一端を押しつけようとしているのではないか、と不信感を抱いたといいます。
「専門家会議」は感染状況を分析して政府に助言する立場。政策を判断し、責任をもつのはあくまで政府です。今回、前例のない危機対応を迫られる中で、両者の考え方の違いが表面化する場面もたびたびありました。
感染者が増え病床が逼迫しはじめていた3月末ごろ。専門家は、強い危機感を訴えていました。
<3月27諮問委員会の議事録にもとづく再現>
東北大・押谷仁教授「非常に深刻な状況になりつつあります。首都圏の医療機関がいっぱいになるのはもう時間の問題です」
中には、緊急事態宣言などの強い措置を求める声も。
三重病院・谷口清洲医師「もう少しきちっとしていかないと、本当に東京はロックダウンになるのではないか」
東大医科研・河岡義裕教授「死者を出さない為には、今ロックダウンのような事をしてもいいぐらいだ」
西村経済再生相「しっかりと受け止めて、政府内で共有をして迅速な対応をやっていきたいと思います」
しかし、緊急事態宣言が出たのはこの11日後でした。
この時のことを、西村経済再生相は…。
西村氏「(3月末に)近いうちに緊急事態宣言を発令することになるかもしれないということも発言していますので、非常に危機感は共有していたところです。ロックダウンは日本ではできないし、そうしたことを考えているわけではないということ(国民の誤解)を払拭するのに一定の時間を要したのは事実だと思います」
■会議「形骸化」に苦言
一方、専門家会議のメンバーは…。
日本医師会・釜萢敏常任理事「それ(宣言発令)までに少し時間がかかった。日に日に医療提供はさらに逼迫が強まっているので、ハラハラしながら拝見していたというところがあります」
宣言後、経済対策の実行の遅れを批判されていた政府。感染の減少傾向がみえると
“宣言解除”へと急速に傾いていきます。39県で宣言を解除する2日前には-。
官邸関係者「政府は特定警戒の県も解除しようとしているが専門家は嫌がっている。そこの綱引きだ」
こうした中、専門家に解除方針を諮る場で、専門家から出たのはー
<第回諮問委員会(5月14日)取材にもとづく再現>
出席した専門家「すでに39県で解除と報道されている。ここで議論する必要が無いんじゃないですか?」
会議が形骸化しているとの苦言でした。西村経済再生相はこうとりなしたといいます。
「先生方の危惧はよく共有しました」
■政府と専門家“第2波”にどう立ち向かう
様々な局面で違いもみえた政府と専門家。これまでの対応を振り返って専門家が注文をつけたのが……。
釜萢医師「国民に対してどういう形で情報を提供すれば、パニックにならずに、かつ一番正確に情報が伝わるかというところを国は工夫すべきだったんですね」
今回専門家は政府にデータなどを示しても世間になかなか伝わらないという危機感から、「8割接触減」や「テレワーク」など経済にも影響を及ぼす国民の行動変容まで訴えました。
ただそれは専門家の役割の範囲外で政府の役割だったと釜萢医師は話します。
「『専門家会議はこう言ったけれども、政府としては政府の責任でこの部分を採用します』というのを(政府が)ハッキリおっしゃっていただくのが必要になるんだろうと思います」
この点について、西村経済再生相も…
西村氏「(政府と専門家の)キャッチボールですね。『政府としてはこう考えてこう対応した』と専門家から今度は『それじゃ足らないからこうしたほうがいい』とか、そのキャッチボールをもう少し皆さんに目に見える形でやっていかなければならない」
ふたたび増えはじめた感染にどう立ち向かうのか。政府には専門家との役割も明確にしながら丁寧に情報発信をしていくことが求められます。
(7月10日放送 news every.より)
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