南シナ海の緊張 中国は挑発をやめよ
2020年7月11日 07時52分
南シナ海で中国が軍事力誇示を強めていることに対し、米国や東南アジア諸国連合(ASEAN)が対抗する動きを示している。これ以上緊張を高めないよう、中国は挑発的な行動をやめるべきだ。
中国は一日から五日まで、ASEANのベトナムなど複数の国と領有権紛争がある南シナ海の西沙(英名・パラセル)諸島のほか、東シナ海、黄海で軍事演習を実施した。
これに対し、米国は「自由で開かれたインド太平洋を支援するため」として、南シナ海に空母二隻を派遣して軍事演習で対抗した。
米国は中国の軍事演習に先立ち「南シナ海情勢をさらに不安定化させる」と懸念を表明していた。中国が米国の警告を無視するどころか、異例ともいえる三海域同時演習に踏み切ったのは挑発的だ。
中国は今春以降、南シナ海での軍事拠点化や挑発行為を拡大させ、ASEANとの対立が深刻化しているのも気がかりだ。
四月には、中国が西沙と南沙(スプラトリー)に独自の行政区を新設したほか、西沙周辺では中国海警局の船がベトナム漁船に体当たりして沈没させた。
ASEAN首脳は六月、テレビ会議方式で会談し、南シナ海問題で「信頼を損ね、緊張を高めた最近の活動や重大な出来事に懸念が表明された」とする議長声明を発表した。昨年は「いくつかの懸念に留意する」との表現だった。
今年は、領有権をめぐり中国と鋭く対立するベトナムが議長国だったこともあるが、中国寄りの国もメンバーに名を連ねるASEANが足並みをそろえ、強い表現で「懸念表明」したのは、それだけ中国の横暴さが看過できないレベルになっている証左であろう。
南シナ海の紛争防止に急務なのが法的拘束力のある国際的なルール「行動規範」の策定だ。中国の李克強首相は二〇一八年秋、「三年以内の交渉妥結」を表明したはずだ。だが、その後、策定に向けた前向きな動きは見られない。
香港紙の報道によると、中国は南シナ海での実効支配を強め、不審な航空機の領空接近を警戒するための「防空識別圏」設定までも計画しているという。
新型コロナウイルスのまん延や香港国家安全維持法の施行強行で国際的批判を浴びるのと軌を一にし、中国は南シナ海での強硬姿勢を露骨にしてきた。自ら摩擦を起こし、求心力を高める装置として使うとすれば、言語道断である。
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