感染の拡大 後手の対応では防げぬ
2020年7月11日 07時52分
東京都で新型コロナウイルスの新規感染者数が二日連続で二百人を超えた。全国でも感染者数は増え、感染は広がっているとみるべきだ。社会経済活動を続けるためにも、ここで食い止めたい。
政府も自治体も、経済へのダメージを考えれば自粛要請はしたくないのだろうが、そのために対策を打つ判断が遅れ、対応が後手に回らないか、心配だ。
都が確認した新規感染者は九日が二百二十四人、十日は二百四十三人となった。東京近隣や関西を中心に全国でも感染者がじわり増えている。
増加した理由について、都はいわゆる「夜の街」関連の検査数を増やしたからだと説明する。政府も、重症者は少なく医療態勢は逼迫(ひっぱく)していないとして、イベントの開催制限を予定通り緩和した。
政府は経済活動を加速させる構えだが、九日の新規感染者の中身を見ると気になる点がある。
PCR・抗原検査数に占める陽性者の割合である「陽性率」は市中感染の状況を推定する指標となるが、直近で5%を超え、六月の1〜2%台から上昇している。
陽性率の上昇は、市中でも感染している人の割合が徐々に高まっている状況の反映とみていい。
新規感染者のうち夜の街関連は三割強にとどまり、職場や家庭、学校などでの感染者が増えた。感染経路不明者も減っていない。年代は五十歳代以上も目立ちはじめた。感染は社会に広がっている。そう考えるのが自然だろう。
確かに四月に比べれば重症者は少なく医療態勢には余力がある。
とはいえ、入院患者数は増加傾向で、感染が、重症化しやすい高齢者層に広がれば一気に患者数も増える。
豪雨被災地では感染対策に限界がある。災害への警戒が必要な状況での感染拡大が心配だ。
何としても今、感染拡大を食い止めねばならない。
夜の街関連は検査の拡大だけでなく、業種や地域を限定した休業要請を検討すべきではないか。都などは協力金とセットでの休業要請を考えている、という。休業の間、収入が途絶える以上、こうした支援は必要だ。
政府も今後、状況によっては移動や営業の自粛を再度、求めねばならないのではないか。警戒を怠ってはならない。
東京では感染拡大により会食など消費を控える動きも出始めている。感染の封じ込めが結局、経済活動を支えると再認識したい。
関連キーワード
PR情報