長崎大学は10日、新型コロナウイルス感染症の無症状者や軽症者を対象に、抗エイズウイルス(HIV)薬の医師主導臨床試験(治験)を月内に始めると発表した。実際の患者でウイルスがなくなるまでの日数などを調べる。早ければ1~2カ月で試験を終え、結果をまとめたい考えだ。
薬は「ネルフィナビル」で、日本たばこ産業(JT)と米ファイザー子会社が共同開発し、国内ではJT子会社が2020年3月まで販売していた。HIVが細胞内で増える際に必要な酵素の働きを妨げる。国立感染症研究所などが4月、細胞に新型コロナウイルスを感染させた実験で、ウイルスを減らす効果があったと報告していた。
治験は宮崎泰可・長崎大講師らが進める。無症状や発症早期の軽症の成人患者120人を2つに分け、薬を投与した群としなかった群で、ウイルスが体内から検出できなくなるまでの日数を比べる。発症や重症化を抑える効果なども調べる。治験には東京大学医科学研究所や大阪市立十三市民病院なども加わる。
コロナ治療薬を巡っては国内外で既存薬などを使い効果を調べる研究が進んでいる。エボラ出血熱向けに開発された「レムデシビル」は新型コロナ患者の回復を早める効果が米国などで確認され、日本も特例承認した。英オックスフォード大学は抗炎症薬「デキサメタゾン」が重症患者の死亡率を下げるとの研究結果を発表している。