[2020知事選・観光振興] 再生の道筋官民一体で
( 7/10 付 )

 新型コロナウイルスは国内外で人の動きを止めた。緊急事態宣言中(4月7日~5月25日)の鹿児島県内の経済実態を映したリポートが相次いで発表され、観光への影響の深刻さが改めて浮き彫りになった。
 県がまとめた5月の観光動向調査によると、ホテル・旅館の延べ宿泊者数は前年に比べ89.3%減った。4月からさらに7.8ポイント悪化。2007年の調査開始以来最大の下げ幅という。外国人客にいたっては98.5%減り、2月以降大きく落ち込む。
 観光は関連産業の裾野が広く、人口減少が進む鹿児島の地域経済に果たす役割は大きい。感染を抑えつつ、観光をどう立て直すか。県知事選の主要な論戦テーマである。再生に向け、官民一体となった実効性のあるシナリオが急がれる。
 鹿児島の観光は近年、インバウンド(訪日外国人客)とともに成長してきたと言っていい。18年の観光消費額は3016億円で、現行の統計基準になって最高を記録した。NHK大河ドラマ「西郷どん」の放送に加え、外国人延べ宿泊者数が80万人を突破、3000億円超えを後押しした。
 しかし、この年の14%に当たる414億円を消費したインバウンドは当面期待できなくなった。一方、国内も感染「第2波」への警戒感は強く、県内ではクラスター(感染者集団)が発生した。観光の本格的な復活にはまだ時間がかかりそうな気配だ。
 先行きへの不安は既に雇用面の数字に表れている。鹿児島労働局の6月29日時点のまとめによると、新型コロナに関連した解雇や雇い止めは412人に上った。宿泊業が145人と最も多く、飲食業も54人と、観光関連産業の苦境ぶりが際立つ。
 不振の業界を地元で支えようと、各自治体がプレミアム付き商品券を発行するなど独自に需要喚起策を打ち出している。コロナ禍は、地域の結束力が問われる難局だけに心強い。
 とはいえ、行政の支援は財源に限りがある。例えば、宿泊費の1万円補助を目玉にした県のキャンペーン事業費は6億9000万円。効果は限定的と言わざるを得ない。
 行政による支援を呼び水にして、県全体で地元観光の機運を醸成したい。修学旅行で離島に行ったり、赤字ローカル線を使ったりするアイデアがあっていい。受け入れる側も、提供するサービスの質をはじめ魅力を磨く努力が欠かせない。
 ウイルスとの共存を前提にした観光の姿はどうあるべきなのか。明確なビジョンと発信力で、業界全体をまとめていけるリーダーシップが県政のトップには求められる。