( 7/10 付 )

 無精をするな、手間を惜しむなと言われれば、働きぶりを見抜かれたかと身の縮む思いがする。だが、食通の北大路魯山人が随筆で戒めたのは納豆のまぜ方だった。

 糸を出せば出すほどおいしくなるから「極力ねりかえすべきである」と勧める。最初は何も加えず、ねり上げてからしょうゆを数滴落とす、といった調子で強いこだわりがうかがえる。

 きょうは語呂合わせで「納豆の日」である。大豆とわらの出合いで生まれた発酵食品の栄養価は高い。数回か数百回か、まぜ方はそれぞれでも、素早く箸を回しながらおいしくなれ、健康に効けと念じる人は多いだろう。

 コロナ禍で「免疫力を高める」と注目され、都内では売り切れが相次いだ。消費者庁はウイルスへの効果は未確認とするが、今も売れ行きはいいようだ。キムチなども含めた発酵食品人気の裏には、微生物の働きにもすがりたい心理がのぞく。

 普段は納豆を食べなくても、大事なテストや試合の前には食卓に上る家庭もあるかもしれない。こちらは粘り強さにあやかった験担ぎである。熱々のご飯に載せてかき込めば、確かに力が湧く気がするから不思議だ。

 大雨による災害とコロナ感染に警戒を緩められない日が続いている。早めに避難する手間を惜しんだり、手洗いを無精したりすれば、周りの人も危険にさらす。納豆のように粘り強くと、互いに励まし合いたい。