ソウル市の朴元淳(パク・ウォンスン)市長が9日午前10時44分ごろにソウル市鍾路区嘉会洞の官舎を出た後、二度と戻らなかった。黒の帽子に暗い色のジャンパー、黒いズボン、グレーの靴を着用し、黒のリュックサックを背負っていた。それからおよそ9分後、朴市長の姿は成均館大学裏門がある臥竜公園近くの監視カメラに再び写っていた。生きて撮影された最後の姿だった。それからおよそ13時間後、北岳山の肅靖門近くで遺体で発見された。警察は自殺と推定している。
朴市長の最後の一日は普段とは違っていた。通常は朝早く出勤する朴市長だが、この日は未明から「体調が悪い」との理由で出勤せず、公館内にずっといたという。ユーチューブ、あるいはインスタグラムなどのSNS(会員制交流サイト)アカウントも非公開に変更した。9日午前10時10分、ソウル市庁担当の記者団に「朴市長の今日の日程は、やむを得ない事情でキャンセルになった」というメールが届いた。当初、朴市長はこの日午後、市長室で大統領直属国家均衡発展委員会の金思烈(キム・サヨル)委員長と地域均衡発展に関する意見交換を行う予定だった。しかしソウル市の関係者は「市長は健康上の理由と最近の過密スケジュールを理由にキャンセルした」と伝えた。
朴市長はこの日、公式のスケジュールのほかに丁世均(チョン・セギュン)首相と首相公館で昼食の約束もあった。これについても朴市長は丁首相に電話をかけ「あまりにもしんどい。申し訳ない」としてキャンセルしたという。
その後、午後5時17分ごろに朴市長の娘が警察に「4-5時間前に父は遺言のようなものを残して家を出た。今は電話がつながらない」と通報した。通報を受けた警察は、携帯電話会社の協力を得て朴市長の携帯電話からその位置を照会した。それによると午後2時42分に臥竜公園で最後の通話をしたことが分かった。同じ場所で監視カメラで撮影されてから4時間近く過ぎた後だった。さらに午後4時ごろ、北岳ゴルフ練習場を最後に携帯電話の信号は途切れた。携帯電話の電源が切られたのだ。