豪雨広がる 命を守る特別警報に

2020年7月9日 07時02分
 九州で大被害を出した豪雨が岐阜、長野両県なども襲った。大雨特別警報が複数の自治体に出たが、気象庁は「発令後の避難は手遅れ」とも言う。特別警報の位置付けが分かりにくいのではないか。
 警報より厳しい特別警報は、二〇一三年に始まった。「大雨」「高潮」など九種類あり、「大雨」の基準は「数十年に一度の降水量が予想される場合」となっている。一八年の西日本豪雨や一九年の台風19号災害などで発令された。
 気象庁のホームページ(HP)によると、東日本大震災の際、危険性の高さが十分に伝わらず、住民の迅速な避難に結びつかなかったことへの反省から生まれたという。「重大な災害の起こる恐れが著しく大きい旨を警告する防災情報だ」としている。
 しかし、一方で同庁は、今回の豪雨に際しての会見でも「特別警報が出てからの避難は手遅れとなる。発表を待つことなく市町村の避難勧告などにただちに従ってほしい」と呼び掛けている。
 昨年の台風19号災害では長野市の千曲川など全国八河川で大雨特別警報が解除された後に氾濫発生情報が出た。国土交通省は「(大雨特別警報の)“解除”が、“安心情報”と誤解された可能性がある」として、「解除」を「切り替え」という言い回しに変更した。
 大同大の鷲見哲也教授(流域水文学)は「一段上の特別警報を新設すれば、それまで一番上だった警報は、住民に注意報のように思われてしまうかもしれない」と指摘する。
 国は昨年、水害時に住民が取るべき行動を直感的に理解できるように、五段階の「警戒レベル」の運用を始めた。「大雨特別警報」は最も高い「5相当」。しかし、高潮特別警報は「4相当」で、台風などによる大雨特別警報(土砂災害)は「3相当」になっているなど、同じ「特別警報」ながらレベルが異なる点も分かりにくさが指摘される。
 市町村が出す避難勧告や避難指示は「レベル4」で、大雨特別警報より一段階低い。
 鷲見教授は「大雨特別警報は、降水量などの『ステータス(状態)』を示す指標で、避難の『基準』ではない」と話す。
 災害時に最優先されるのは、迅速な避難である。しかし一般市民に「(避難指示の上にある)特別警報が出ていなければ大丈夫」と誤解される恐れがある面は否定できない。何より大事なのは、分かりやすさであろう。

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