他県への外出、いいの?都民困惑 政府、都と食い違いを「調整」へ

2020年7月9日 06時00分
 新型コロナウイルスの新規感染者数が東京都内で高止まりしている状況を踏まえた都外への外出自粛を巡り、西村康稔経済再生担当相は8日の衆院内閣委員会で、政府と小池百合子都知事との認識の溝を埋める考えを示した。小池氏が都民に「他県への不要不急の外出遠慮」を求めた一方、政府は自粛要請は不要との立場。西村氏は「政府と自治体の発信が曖昧ではいけない」と釈明した。 (妹尾聡太、松尾博史)
 政府側の姿勢に対し小池氏も8日、都庁で記者団に「(双方の認識は)合っている。特に問題ない」と歩み寄った。菅義偉すがよしひで官房長官も記者会見で、政府と都の認識に「ずれはない」と同調した。
 だが、その直前まで政府側と小池氏との対立は明らかだった。小池氏が4日に都民の他県への移動自粛を呼び掛けると、菅氏は6日の記者会見で「移動の自粛を一律に要請する必要があるとは考えていない」と即座に反論。西村氏も電話で小池氏に発言修正を促した。
 小池氏の言動は、政府が新型コロナ特措法に基づく基本的対処方針に沿い、6月に移動自粛を全面解除したこととは相いれず、今月10日のイベント制限緩和や8月に開始する「Go To キャンペーン」にも影響しかねない。経済を優先する政権内には「小池氏はけしからん」(政府高官)と不満が充満した。
 ただし、緊急事態宣言が解除された現状では、政府にも知事にも住民の移動を制限する法的根拠はない。
 元鳥取県知事で早稲田大大学院教授の片山善博氏は「双方とも空虚な議論だ。国民の移動を良い悪いなどと言える権限は政府にも都にもない。国民が迷うことになり無責任だ」と批判した。
 小池氏に対しては「外出自粛を求めるのなら、知事は緊急事態宣言の発令を政府に求めるか、独自の条例を作ればいい」と指摘。政府側には「国民が感染者数だけに一喜一憂しないための根拠を示さないといけない」と求めた。

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