変化に脆弱な日本社会

私はそれは、高学歴を獲得できる偏った層が、充実した教育を受け社会を維持・発展させることよりも、その地位の保持に興味が偏っているからだと考える。医学部不正入試問題などは、上述した3要素の欠如と性差別が相まった、この保守思想の極みと言えないだろうか。

だがこの保守思想は、変化しない社会を前提に成り立つものであり、社会の変化に対して極めて脆弱だと私は考えている。そもそも、社会とは望む望まないにかかわらず、内的・外的要因で時代と共に変化するものである。教育に無関心で社会への視野を持たない日本のリーダー達が、国際社会の中で起こる激しい変化に的確に対応し、日本社会を維持・発展させていけるとは私にはとても思えない。

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実際に、今回のCOVID-19の感染拡大という未知の変化を前に日本の政治家や官僚達が打ち出す対策はことごとく後手に回っている。また現在、多様性や環境保全などSDGsの要素を政治やビジネスが前向きに考慮する方向に世界が急速にシフトしているが、それに対して日本の政治や企業、またメディアが見せる対応は驚くほど遅い。

時代の変化に対して個人としても国としても柔軟に対応し、日本社会を自立した社会として維持・発展させていくためには、学歴社会が抱える問題に向き合い、教育を根本から見直す必要があるのではないだろうか。