ソウル中央地裁は7日、北朝鮮と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に対し、6・25戦争当時の元韓国軍捕虜二人の強制労役について、それぞれ2100万ウォン(約190万円)の賠償を命じる判決を下した。韓国の裁判所が北朝鮮と金正恩氏に対する裁判権を認め、損害賠償を命じた初めての判決だ。二人の元捕虜は50年にわたり北朝鮮に抑留され、強制労役に苦しみ、2000年に脱北した。16年に北朝鮮で受け取れなかった賃金と精神的苦痛に対する慰謝料として1億6800万ウォン(約1500万円)の支払いを求める訴訟を起こした。その後、金正日(キム・ジョンイル)総書記の時代に脱北した点などを考慮し、請求額を金正恩氏の相続分に相当する2100万ウォンに変更したが、裁判所はその全額を認めたのだ。
元捕虜らの弁護人団は「北朝鮮と金氏一家の違法行為に対し、韓国の法廷で民事責任を追及できる道が開かれた里程標的判決」と評した。北朝鮮を「外国」と見なせば、韓国の裁判所の管轄権が及ばないとの主張もあった。弁護人団は「北朝鮮を外国と認めていない韓国憲法の趣旨に基づいて下された判決」ともコメントした。
原告の元捕虜側は、韓国国内の「南北経済協力財団」が北朝鮮に支払う著作権料として韓国の裁判所に供託した20億ウォン(約1億8000万円)を差し押さえる計画だという。イム・ジョンソク元大統領秘書室長が理事長を務めるこの財団は、韓国メディアなどが使用した北朝鮮のテレビ、写真などの著作権料を徴収し、北朝鮮に送金してきたが、2008年の金剛山観光客狙撃事件によって送金がストップし、その後著作権料は韓国の裁判所に預けられている。北朝鮮に抑留され、死亡したオットー・ワームビアさんの両親は、米国での裁判で勝ち取った5億ドル(約540億円)の賠償判決に基づき、米国内にある北朝鮮の資産に対する追跡を続け、現時点で2379万ドル(25億5900万円)を回収したという。今回の判決は始まりにすぎない。北朝鮮と金氏一家による反人道的違法行為に対して最後まで責任を追及しなければ、彼らの蛮行が止まることはない。