東京の町医者から見えるコロナ感染蔓延の現実
持続可能な感染制御には細やかさが必要だ
会食した同僚がコロナ陽性だった患者を診療
私が所長を務める蔵前協立診療所(東京都台東区)には、保健所からの紹介が絶えない。
本稿を執筆中の7月3日にも保健所から紹介があった。訪れた患者さんが1週間前に焼き鳥店で同僚と会食。その同僚が、7月2日にコロナ陽性と診断されたそうだ。患者さん本人は会食の翌々日から下痢が続き、来院時にはほぼ改善していたが、「自分ももしや?」と心配になって当院を受診した。
問診と雰囲気で当院ナースから「多分違うと思います」と申し送られた。私が防護衣に身を包み、診察し、話を聞く。
「鳥の刺し身とか食ったでしょ?」
「はい、食べました」
「カンピロバクターかもね」
念のためにPCR検査を行ったが、やはり陰性だった。当院はコロナの流行が拡大し始めた3月後半から、ゾーニング下で、コロナ感染が疑われる患者さんをのべ70人以上診療してきているため、スタッフ全員の「暗黙知」が蓄積してきている。暗黙知とは、マイケル・ポランニーが著書『暗黙知の次元』で命名した「経験的に使っている知識ながら簡単に言葉で説明できない知識」のことである。
当院のスタッフ全員に対して、5月にPCR検査、6月に抗体検査を行ったが、全員が無事に陰性だった。検査がすべてではないものの、これまでの感染対策に過不足がなかったと自負している。