水害、地震、台風…専門家が指摘「コロナ禍の非常袋に入れておきたいもの」とは?
停滞を続ける梅雨前線の影響で九州地方を中心に猛烈な雨に見舞われた日本列島。今年はそこに、厄介な新型コロナウイルスが加わった。「3密」の典型ともいえる避難所での生活は変わるのか。AERA 2020年7月13日号では「水害」と「地震」を徹底調査。その中から、ここではコロナ禍の避難所について解説する。
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線状降水帯、ゲリラ豪雨、観測史上最大──。
こんなフレーズがおなじみになりつつある水害列島に、今年は新型コロナウイルスという目に見えない敵が加わった。地震や水害などの災害時には避けられない避難所での集団生活の中で、感染拡大を防ぐためにはどうしたらいいのか。災害列島日本に早くも突きつけられた、二律背反の命題の解決策を探る。
梅雨前線に南から暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、九州北部一帯は6月25日、記録的大雨に見舞われた。なかでも3時間雨量181.5ミリメートルと観測史上最大の雨が降った長崎県佐世保市は、9万4千世帯21万9千人に避難指示を出し、午前7時には避難所も開設した。開設したのは市内144カ所の避難所のうち35カ所。だが、実際に避難した住民は延べ61世帯の100人と、「密」な空間を作らずに済んだ。
なぜか。理由は、事前に多様な避難行動を呼びかけていた成果とみられる。
■分散避難の周知を徹底
「高層マンションの2階以上などの垂直避難や、安全な地域に居住する親戚宅に身を寄せるなどの分散避難の周知に努めていたこともあり、昨年の水害シーズンのピーク時に比べると避難所に来られた方はだいぶ少なかった印象があります」(佐世保市防災危機管理局)
また、避難所開設前に公民館長らを集め、消毒作業の手順や非接触型体温計を使った体温チェック、アルコールを使った手指消毒などコロナ対策の準備も済ませていたことで、混乱もなく避難者は安心して一夜を過ごせたようだ。雨による被害も床下浸水や小規模な土砂崩れにとどまり、人的被害の発生もなく、開設から25時間後の26日午前8時には全避難所を閉鎖することができた。