6・25戦争当時、北朝鮮に連行され、強制労働に服した元韓国軍捕虜のノ・サホンさん(91)とハン・ジェボクさん(86)に対する北朝鮮と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の民事的(賠償)責任を裁判所が初めて認めた。これは今後相当の波及効果をもたらすとの見方も出ている。韓国軍捕虜だけでなく、哨戒艦「天安」爆沈など、北朝鮮による違法行為で被害を受けた韓国国民が北朝鮮を相手取り、損害賠償請求などの訴えを起こすことが今後相次ぐと予想されるからだ。
■北朝鮮を民事訴訟が可能な団体と判断
裁判所がこの日、北朝鮮に対して韓国軍捕虜だったノさんとハンさんへの賠償を命じた額は1人当たり2100万ウォン(約190万円)と決して多くはない。注目すべき点は、北朝鮮を民事訴訟の一方の当事者(原告・被告)になる団体と判断した部分だ。北朝鮮は「国家ではなく事実上の地方政府と類似した政治的団体」であり、宋中(先祖を同じくする一族)や同窓会と同じく、民事責任を負う「非法人社団」とみるべきと主張する原告側弁護人団の主張が受け入れられたのだ。もし裁判所が北朝鮮を事実上の国家と認めた場合、今回の損害賠償請求は受け入れられなかった可能性が高い。国際法上の主権免除理論に基づき、他国を相手取った損害賠償請求はほぼ受け入れられないからだ。
法曹界では今回の判決について、北朝鮮の違法行為によって人命や財産上の被害を受けた韓国国民が、北朝鮮と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長を相手取って訴訟を起こし、慰謝料などを受け取る道が開かれたとの評価が出ている。ある部長判事出身の弁護士は「訴訟の時効問題などはあるが、判決の趣旨通りであれば、他の韓国軍捕虜や拉致被害者、哨戒艦「天安」爆沈事件(2010年)、パク・ワンジャさん銃殺事件(2008年)の当事者や遺族も、北朝鮮を相手取った損害賠償請求ができるようになった」との見方を示した。韓国政府によると、韓国軍捕虜は8万人、拉致被害者はおよそ10万人いると推定されている。